第14話  ~ハイスペの友~

 早朝登校の目的……それは彼女だ。


『アケビ・モンドリリー (18)』


 身分 侯爵令嬢

 容姿 端麗(切れ長の目、知的な印象)

 頭脳 学年トップ

 性格 思いやりがあり物腰も柔らかいが、責任感や正義感も強く、頼りになる存在

 

 私の学校生活を支えるのに相応しい、ハイレベルな親友。

 彼女とは前に、コミニュケーションを図る必要があった。

 


「何通も手紙を書いてくれてありがとう、アケビ。とても励みになっ……りましたわ」


 (しまった! 言葉遣いに気を配るのをすっかり忘れていた! えっと、確かには……)


「どうしたの? 『らしくない物言い』だし、もしかして体調がまだ……」


 不安を覗かせるアケビ。

 動揺を見せない様に視線を床へ落とし、私は記憶を呼び起こした。


 (……そう、思い出した! 2人の間に遠慮はだったわ!)


 基本的に学院内では、身分の差はないとされている。

 しかし皆育ちが良いので、生徒同士でもお嬢様言葉? や敬語での会話が普通だ。


 そんな環境の中、はどうやら『遠慮や敬語は一切ナシ』でも理解し合える関係らしく『絆=友情』は誰よりも強固だった。


「ううん、ちょっと感動しちゃって……アケビには1番最初に会いたかったの。心配ばかりかけて、ごめんなさい」


「親友相手に、(心配は)当然でしょ? それにしても感動って……大げさねっ!」


 アケビがクスリと笑う。



 私の秘密『正体や条件』は、ヤプと専属使用人(ユーセ、クガイ、ネム)以外に知る者はいない。


 誰に教えてもいいらしいが、妖精の存在すら知らない、見えない(何故かユーセ達は見えている)他の人間に伝えたところで、おそらく簡単には信じてもらえないだろう。

 あげくだのだのと噂を立てられては、弊害発生の危険まである。そんな理由から、私達は秘密裏に条件達成を目指す事を決めていた。


 勿論、アケビ(親友)にも内緒で――。



「……コート、脱がないの?」


「そっ、そうね! 忘れていたわ……」


 アケビは自身のコート片手に、丈の短い上着とネイビーのリボンを軽く整えた。


「早くしないとよ!」


 教室の奥にズラリと並ぶ、鍵も名札も無い個人用ロッカーの前で、彼女が私を急かす。


「……」

 

『自分の場所ロッカーがわからない=ピンチ』……からの、即脱出。


「一緒に掛けようか?」と、腕を伸ばして私を気遣う親友の何気ない一言(優しさ)に、早速さっそく助けられた――。



 2人分のコートと鞄を各々のロッカーへ納めた後、アケビが私の隣で腰を下ろす。


「ありがとう」


「どういたしまして。人が増えてきたわね……コレ、休んでいた講義の! 今のうちに、少し説明をしましょうか?」


「うっ、うん。お願い」


 びっしりと文字が書かれた用紙の束を受け取り、お礼を伝えた後、一瞬だけ外へ目をやる。


 (もう、そんな時間か……)


 窓の外では、登校時間のピークを迎えていた――。




「ライリー様ってば!」


「ライリーさんの……」


「ライリー嬢が――」


 教室に到着をした生徒達から、名が連呼される。


 久々に登場のレアキャラ(私)――。

『復学』や『舞踏会』の話題で、教室が朝から沸いていた。

 

 (どうしたものか……)


 教養の遅れを取り戻すどころか、クラスメイトの質問責めにストレスが溜まる――。 

 そんな困った状況から『病み上がり令嬢』を救ったのは、長いベルの音と共に現れた、担任の女性教師だった。


「皆さん、予鈴が鳴りましたよ? 着席してください」


 そこから昼を挟んだ午後の2時過ぎ迄、難易度さえも不明な講義や実習が続いた――。

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