保育士狩りを行う破壊者。
第23話 12人の子供達。
順調だったゲーン探索団に変化が訪れる。
それはズエイ・ゲーンの立場からすれば致し方なく、そしてショーク・モーの要望を加味すると必然的な事だった。
ゲーン探索団のハウスが大きくなり、新たに12人の子供達が入団する事となった。
これにはダムレイが頭を抱えながら「旦那…、一気に12人は…」とズエイに意見をしたがズエイは「お前ら全員が一気に人になったから一気に辞められるようにだよ」と言う。
ハイクイ達はこんなズエイを見たことがなかったので訝しむがクオーだけは「ズエイ・ゲーン、もしや先日のリーピ・プラサンの件でご迷惑を?」と聞いてしまい、ズエイも「まあな、どうしても目ぼしい子供を見つけても大手が先に手に入れやがる。一度に抑えないといけなくてな」と先程と違う事を答えるがクオーは「申し訳ありません」と謝り、「私も詳しくはありませんが何とかお役に立ちます」と言ってしまう。
どこをどうしたらこうなるのか…。
諦めながらもダムレイは12人の躾を始めることになる。
「お前達はまだ人間じゃねえ。それは理解しているな?」
この言葉に子供達は「はい」と素直に返事をする。
ここでクオーが前に出そうになり慌ててハイクイがそれを制止して「ダメだよクオー。ここの流儀があるんだ。まずはリーダーのダムレイには逆らわない。それを徹底して子供達にも見せつけるんだ。そうしないと従わなくなるから」と言う。
この言葉でクオーは大人しくなったがどうしても人間とそうでないものの扱いの違いにクオーは度々前に出そうになる。
一番は食事の問題で、子供達からすれば良くて残飯暮らしから一気に味のある温かい食事というご馳走になっただけでもありがたいが、これでもかとズエイが差を見せつけるように豪華な食事をクオー達には用意する。
先ほどまで温かい食事に目を輝かせていた子供達すら羨望の眼差しで美味いと喜ぶキロギーを見て涙目になってしまう。
食後、子供達は明日から本格的に使い物になるかの確認と仕事の割り振りを行わせる為に用意された大部屋で眠りにつく。
子供達が寝たことを確認したところでクオーが「ダムレイ」と声をかけた。
「言うなクオー、言いたい事はわかる。流儀は流儀だ。俺達も先に卒団した兄貴達からああして教わって今がある」
困り顔と呆れ顔を混ぜた顔のダムレイに言われても引き下がりたくないクオーの肩を叩いてキロギーが「いいんだよクオー、今日の飯だって今までのアイツらからしたらご馳走なんだよ。今までは飯抜きの日だってあったんだって。俺達も来た日に兄貴達の飯が特別で驚いたんだ。同じだよ」と説明をする。
「確かに私はこの街の事を知らない。だがあの眼差しを見てしまうと何かできないかと思ってしまうんだ」
本当に辛そうなクオーの顔にハイクイが「…んー…ダメだダムレイ。ここにクオーがいると皆がダメになる。クオーと俺は別の仕事をするからチビ達の世話を皆でやってよ」と言う。
クオーは言葉の意味を探ろうと「ハイクイ?」と聞き返すがハイクイは首を横に振って「クオーのそういうところは好きだけどダメだよ」と言う。
「俺達は魔神の身体と風神の乱気流が育ったら最後の希望を出て行く。クオーはコイヌの髪を家に持ち帰るんだよね?俺達もズエイの旦那の所で仕事をするんだ。その時になんの助けもなくて苦しむのはアイツらだよ。バンディットみたいな奴らに攻め込まれて殺されたい?嫌だよね?」
ハイクイの真っ直ぐな眼差しにクオーは「だが」と言ったがハイクイは目を逸らさない。
返答に困ったクオーは最終的に「だが…私は何かをしてあげたいんだ」と言って俯いた。
「うん。それは考えた。だから明日から別の仕事をしようよクオー」
「別の仕事?」
ここでダムレイが「まさかハク!?」と声をかけるとハイクイは「うん。今回は10日でいいかな?10日あればチビ達も使い物になるのは生き残るしルールもわかるよね?」と続けた。
「だがお前、アレは…」
「まあクオーが仕事をしてくれれば平気。2人ならカケラも効率的に育つよ」
困り顔のダムレイが頭を抱えて「くそ」と漏らすのを見てクオーは「ハイクイ?」と聞き返す。
「保育士狩り。報酬は良いから帰った日にアイツらの飯にお菓子付けてあげなよ」
ハイクイはそう言うと「早い方が良いから旦那に話してくる。…あー…俺出られないからイーウィニャ、出口まで一緒に行くから旦那呼んでくれない?」と言ってイーウィニャを連れて外に出ていってしまった。
保育士狩りと聞いてもピンと来ないクオーに向かってダムレイは「クオー、一言言っておく。情けは無用。ハクに何かあってみろ?許さないからな」と凄んだ。
あまりの気迫にクオーは驚きを隠せずに「わかった」と言った。
少しして戻ったハイクイは「旦那からOK貰ってきた。驚いたよ」とダムレイに言いながら「ね、イーウィニャ?」と聞く。
イーウィニャも頷きながら「本当、旦那ってば「助かる。どうしても実力を周りに見せつけたかったし、お前達もシータの名があるから意味もある。給金は期待しておけ。人間になった奴ら全員に分配してやる」だって」と何があったかを説明した。
ダムレイがここで「成程…それかよ」と悪態をつく。
まだわからないクオーに「クオーが我慢できなくなってハクが保育士狩りに行くって言うのを読んでのことだよ。だからあんな無理矢理12人も用意したんだ」と言う。
「済まない。そもそも保育士狩りとはなんだい?」
「人間狩り。クオーは帝国って知ってる?」
ハイクイの言葉にクオーが「オーイン帝国かい?知っているとも。王国兵達は陸続きの帝国と紛争をしているんだ」と言うがダムレイが「その感じじゃ知らねえな」と言った。
「ダムレイ?」
「オーインとエイダーの戦いで使われるカケラはどうしてる?」
クオーは自分のカケラを手にとって「我らが王国はこうして欲望の島から持ち帰ったカケラを兵達が持って前線で今も戦っている」と言う。
「ほぅ、じゃあオーインは?」
「…オーイン……気にしたこともなかったが…」
「この島の北側には帝国の港と街がある。あっちはあっちで保育士を用意していてカケラを育てちゃ本土に送り出してんだ」
ここでようやく保育士狩りの意味を理解するクオーは「まさか、保育士狩りとはオーインの保育士…。保育士を狩ってカケラの育成を妨げる…」と言った。
「そう言うこと。相手は魔物よりも厄介な保育士で、それも帝国兵の保育士だ。島の真ん中より北は奴らの領土。真ん中の側にキャンプがあって明日からハクとクオーはそこで10日程義勇兵として帝国の奴等を狩るんだ」
「やれるよね?期待してるよ。それに保育士と戦った方がカケラの育ちも良いんだよね」
ダムレイとハイクイの言葉にクオーは喜び震えながら「…是非もない!」と言う。
「クオー?」
「ジン家の人間として我らが王国に仇なす帝国兵を倒せるのはこれ以上ない誉れ!明日から10日…万の敵とは行かずとも必ず成果を出してみせる!」
「…張り切りすぎんなよ」
「本当、やり過ぎて目をつけられても島を出てからが面倒だから適度でいいからね?後はカケラを持ち帰れば旦那が換金してくれるって」
そうは言われてもクオーは意気揚々と「任せてくれ!」と言って燃えている。
「…ダメだありゃ。ハク、済まないな」
「まあやってみるよ」
ダムレイは面倒臭そうにクオーと別室で眠る子供達の方角を見ていた。
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