第22話 啄ばむ破壊者。

誰一人帰ろうとしない。皆の意思を感じて「感謝する」と言ったクオーはだらしなく肥えたリーピの腹の肉を摘むと一気に引きちぎった。


あまりの痛みに覚醒したリーピの口に千切ったばかりの腹の肉を押し込んだクオーは「はじめまして、私の名はクオー・ジン。…まあ名乗る必要は無いな。お前が我が娘の姉にあたる人物に暗殺を命じたのだからな」と言うと今度は逆の手で太ももの贅肉を引きちぎってリーピの口に詰め込んだ。


必死にもがくリーピだがクオーの怪力を前に何も出来るわけがなくクオーは常にリーピの口を手で塞ぎ「お前の言葉はいらない。この手が口から離れるのはお前の肉を口に放り込む時だけだ」と言うと今度は二の腕の肉を服ごと引きちぎってリーピの口に押し込んだ。


その後も続くクオーの手による攻撃。

問うことのない拷問は最早ただの攻撃だった。


「お前のせいで最愛の娘に似た少女を知る羽目になった。それで楽しいか?」

「その少女を殺した。殺させて満足か?」

「手に感触が残っている。悲痛な声が耳に残っている。満足か?」

「あの少女はまだ幼いのに男共に陵辱されていた。それを聞かせて嬉しいか?」

「陵辱と言えばバビンカがどうやって死んだか聞くか?男の象徴を握りつぶして引きちぎって殺した。お前も最後はそうしようか?」


言葉を放ちながら烏たちが肉を啄むように引きちぎっては無理矢理口に詰め込んでいく。

吐こうがお構いなしで口に放り込み続け、逆流も許さずに力技で押し込んでいくクオーは最後に失血死寸前のリーピの股間を握りつぶして引きちぎるとそれを口に詰め込んだ。



リーピ・プラサンは弁明の一つも許されずにクオー・ジンにちぎり殺されていた。


クオーは清々しい表情で「待たせてしまったね」と言うとダムレイが「…良いんだけど、よくやるな」と言い、サンバは「きっと、ハイクイ、見たがるな」と言った。

気がつくとマリクシとウーコンは外を見張ると言って居なくなっていた。


「コイツはこの後どうするんだい?」

「後はズエイの旦那が上手くやってくれる。俺達は帰ろうぜ」


ダムレイの言葉に青くなった顔を悟らせないようにズエイは「任せろ」「今日も良くやった、飯は期待しておけ」と言って去っていった。



そんな夕飯は鋼鉄大亀を狩ったご褒美で亀のスープだった。

下ネタを連想する気はないがダムレイ達はクオーが握りつぶしていた象徴を思い出し、目の前の亀の肉を見てかなり食欲を失っていた。


握りつぶした本人は風呂に入り綺麗な姿になっていて美味しいと喜ぶキロギー達に「良かったよ。ジン家でも亀は慈養強壮にいいからよく食べるんだ。味付けはこれも美味しいがジン家のものも悪くない。是非皆にも食べてもらいたいよ」と言いながらモリモリと食べている。

ダムレイ達は「アイツ」「マジかよ」「やべえな」と言いながらクオーを見て青くなっていた。



ズエイ・ゲーンを良く思わない者がまた1人減った。

古参のプラサンを倒してしまった事で敵は増えたが、破竹の勢いは誰にも止められない。


リーピ・プラサンの店で起きたクーデターが嘘なのは誰の目にも明らかだった。

散々最後の希望を練り歩いたジョンダリとクオーがバンディットのハウスに消えた。

そして絶叫と共に全滅したバンディットのメンバー。ジョンダリがクオーの娘とされるコイヌの姉であること。


コイヌに似たジョンダリを仕向けたバンディットとリーピ・プラサンがどうしてこうなったか、それは幼子でもわかる話だった。


ズエイは兵士達やカイとシーカン達に金を積み口封じを行った。


兵士が騒がなければ最後の希望はうるさいことは言わない。

そして監視者のカイとシーカンも何も見ていないと言えばどうとでもなる。



ズエイはわざとバンディットのハウスをそのままにした。全身の贅肉をむしり取られ口に放り込まれていたリーピ・プラサンの死体は翌朝すぐに発見されてあまりの手口に大騒ぎになる。


だが兵士も監視者達も知らぬ存ぜぬで話にはならない。


リーピ・プラサンとバンディットのメンバーの血や汚物で悪臭を放つバンディットのハウスは近所迷惑を理由に元プラサン家No.2の指示で焼き落とす事になる。


そして焼け跡の地面の下から大量の死体が出て来てしまい少し騒ぎになったのだが、これは兵士と共謀してかつての行方不明者にしてしまう事にした。


「いやはや、もう十分元は取ったのだがどうしたものかな?」

ズエイは集めたカケラを持ってショークの元へと向かう。


ショークはカケラの山を見て驚いたが出自を聞きクオーの名前に顔をしかめる。


「ショーク様、お気持ちはお察し致しますが低品質なカケラとは言え中にはBランクも御座いますので今はお喜びください」


「Bランクまであるのか?」

「はい」


「何故それを私に?」

「持つべきお方にお渡ししたくなりました。低品質で御座いますのでお値引きをさせていただきますので是非ともお受け取りください」


「低品質でもカケラはカケラ。感謝しているぞズエイ・ゲーン」

「ありがとうございます」


「ひとついいか?」

「はい?何で御座いましょう?」


「永遠にとはいかない事は私にもわかる。だが1日でも多くジン家のクオーを欲望の島に繋ぎ止めたら報酬が出るとなったら出来るか?」

「…クオー・ジンは変革に邪魔だと」


「そうだ。ズエイの持ち込むカケラを使い兵達の練度を上げて心を変える時に奴は邪魔でしかない」

「…一度の凱旋と数度の帰省が許されれば…可能性はございます」


「それは構わない。可能な限りやってくれ」

「かしこまりました。それではクオー・ジンのAランクが育ちきった日からひと月延びるごとに報酬を頂ければと思います」


こうしてズエイは帰島した。

「可哀想なクオー・ジン。悪いが付き合ってもらいましょう」

ズエイ・ゲーンは見えて来た欲望の島に向かってそう言った。

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