第19話 破壊者に滅ぼされるバンディット。
ジョンダリは真っ青な顔でチームバンディットのハウスに戻ってきた。
逃げ出したい気持ちで吐きそうになっていた。
横のクオーは「平気だよ。私が来たからね」と言って微笑んでくる。
ジョンダリは「違うよ。ゲーン探索団に行こうよ。今ならまだ…」と言って居るが気にする事なくチームハウスの戸を叩くと「この子の件で来た」と言って中に入ってしまう。
中にはバンディットのリーダーをしているバビンカがニヤニヤとソファに腰掛けながらクオーを見て「良く来たなAランク」と言った。
クオーはバビンカを見て「ひとつ…話がある」と言うと、バビンカは「なんだい?命乞いか?それとも俺達バンディットに来たいとでも言うか?」と言いながら指を鳴らす。
バビンカの指の音に合わせて隣の部屋から少年少女達が武装した状態で現れてニヤニヤと笑って居る。
先程すれ違った少年は玄関で立ち尽くしているジョンダリに「良くやったな」と話しかけていてジョンダリは「やめてよ」と言っている。
少年少女に囲まれても表情一つ変えないクオーは「話の前にひとつ…話と合わせたらふたつ…いいかな?」と再度バビンカに言うと、呆れ顔のバビンカは「だからなんだい?言ってみなよ」と返した。
「武装しているね。最後の希望でも争い事は御法度ではないのかい?」
「命乞いの部類、大人の小狡い命乞いだな?言いかえればこの家の中はお前達の言う治外法権、俺がルールだよ」
「…成る程。それでは皆覚悟はあると言う事だな?」
この瞬間にクオーは殺意を隠す事をやめた。
近くの少女はそれだけなのにあまりの恐怖にへたり込んで失禁してしまう。
「お…お前、この状況で何とかなるつもりかよ!?」
バビンカが慌ててクオーに去勢を張るがクオーには関係ない。
「…この下らない策をろうじたのはお前か?」
クオーはそう言いながら一歩踏み出すと周りの少年少女は一歩後ずさる。
バビンカは「お前達!何下がってんだ!」と怒鳴りながらクオーに「策?」と聞き返すと、クオーはジョンダリを見ずに指をさして「この少女を仕向けた事だ」と言った。
「じ…ジョンダリはお前が溺愛したガキと同じ女から生まれてきたからな!こうすれば着いてくると思ったんだ!思った通りだ!」
バビンカの言葉を聞いたクオーは「…やはりコイヌの姉か…」と呟いた後でジョンダリを一目見て肩を落とすと、射抜くようにバビンカを睨み「1番やってはいけない事をした。誰も生きてここからは出られない」と言うとクオーの横で剣を持って怯えている少年を殴り殺した。
一瞬一撃。
一瞬で少年は物言わぬ肉になる。
壁にぶつかり飛び散った肉片の生暖かさにへたり込んだ少女の脚を掴むと武器のように振り回して周りの少年少女を蹴散らしてしまう。
武器になった少女も少女が直撃した少年も生きていなかった。
フーフーと言いながら口から蒸気を出して「許さない。我が娘を冒涜する者を皆等しく許さない」と怒るクオーを恐れたジョンダリも玄関ドアに寄りかかりながら涙を流して失禁していた。
バビンカはこの数秒で事態の深刻さを理解した。
元々はバンディットの親をやっているリーピの指示で断れなかった事もあったが、理想はジョンダリが不発に終わり、リーピに一発殴られて腫れた顔のままでコレでもかとジョンダリをボコボコに殴って心ゆくまで陵辱してしまえば済む話だった。
今日はその事だけを考えていた。
殴られて怒鳴られて、それを見せつけながらジョンダリを殴る事、殴りながら凌辱する事を妄想していた。
最後の方では楽しみになりつつあった。
だがクオーはバカ丸出しで着いてきてブチギレると一瞬で男も女も構わずに7人を殺した。
バビンカはダムレイ達に比べればバカで愚かだがバンディットのリーダーを任せられるだけの器はあるし場数は踏んでいる。
だからこそ尻込みする事なく「そこまでだ!」とクオーに言い「お前の実力はわかった。だがそこまでだ、死にたくないだろ?」と続けた。
「何を言っている?お前の死は必至だ」
破壊者になったクオーの顔に恐怖すら感じたバビンカだったが「お前にはジョンダリの毒が入ってるんだ!今命乞いしたら助けてやる!拒めば死ぬぞ!」と言って何とかイニシアチブを取ろうとした。
ジョンダリは最も恐れていた事を暴露された。
バビンカからは毒殺を命じられていた。
即効性ではなく遅効性の毒でチームハウスの中で死ぬように調整されていた。
だからこそ間に合うウチにゲーン探索団に連れ帰って解毒処置をしたかった。
「毒…」と呟いたクオーはジョンダリを見る。
ジョンダリは手を繋いだ時に指の間に仕込んでいた小さな棘をクオーに打ち込んでいた事がバレた事に涙を流しながら首を横に振り続けていた。
そして振り返った時に死角側に居た少年の1人はその隙を見逃さずにクオーの脇腹にダガーナイフを突き立てた。
人殺しに躊躇のない最後の希望の子供の一撃は確実に太い血管や臓器を捉えていてクオーの命を捕らえていた。
これまでの…欲望の島に来る前のクオーであればいくら怪力を持っていても死んで居ただろう。
「はっ!毒より先に刺されて終わったな!」
バビンカの喜ぶ声は聞こえたが、次の瞬間には刺した筈の少年は真上から振り下ろされたクオーの拳で胴体に頭をめり込ませて死んでいた。
「な…?刺し…刺さっ…ていない?」
バビンカはクオーの脇腹を見ると服は裂けて居たが身体は皮一枚傷ついただけで血も何も出ていなかった。
「…魔神の身体はね」
クオーはゆっくりとバビンカを見て「私の身体を覆うんだ。使う気が無くても身体を覆うから監視者達に怒られないように力を使って見えなくしていてね」と言いながらクオーの身体は薄らと赤く光った。
「お前…おま…、その身体」
「そう、皮の下で魔神の身体が私を守ってくれている。光らないように身体を使っていてね。それが毒も刃も通さなかったよ」
クオーはため息混じりに言うと「だから脅迫に意味はない」と続けると、今殺した少年を武器のように構えるとまた近くに居る者達を一撃の元に葬り去った。
「な…、お前!罠とわかって!?」
「わかるさ。お前達は大人をバカにし過ぎている」
クオーは呆れながら逃げ出そうとする少女の背中に武器にしていた少年を投げつけて殺してしまう。
「逃がさない。この場から生きて誰も出られない」
この言葉に必死になって逃げ出そうとする少年少女だったが誰1人として叶わなかった。
扉に手を伸ばす。扉を引く。
ふた動作の間にクオーは一撃で殺しにくる。
窓を蹴破るにも「蹴る」という動作が邪魔をしてクオーに殺される。
玄関に居るジョンダリが邪魔で、玄関に向かう、ジョンダリを退かす、扉に手を伸ばす動作も最早無意味だった。
逃げられないと剣を向けた少年はその剣を握ったまま腕を取られて頭に突き立てられた。
ものの数分でバンディットは全滅していて、ソファから立ち上がることも出来なかったバビンカと血まみれのクオー、そしてドアに寄りかかり床に座り込んで失禁しながら首を左右に振り続けているジョンダリだけになっていた。
「お…お前、いくらなんでもやり過ぎ!これ以上やってみろ!リーピさんが黙ってないぞ!」
「…リーピというのがお前の頭だね。ズエイ・ゲーンにいくら払えば目の前に連れてきてくれるのかな?」
クオーの迷いのない顔に青くなったバビンカが「お…お前…嘘だろ…リーピさんまで…」と聞き返すとクオーは「殺すさ、我が娘を冒涜した罪は償って貰う。ジン家は受けた恩も恨みも決して忘れない」と言った。
クオーは前に出るとバビンカの頭を右手で持って持ち上げる。
これだけで痛み苦しみなんとかクオーの手を振りほどこうともがくバビンカだったがクオーは「許さない」と言ってバビンカの両肩を左手で殴りつけて破壊する。
激痛に叫ぶバビンカを無視してクオーはジョンダリにむかい「君に上手だと言ったのはこの男だね?」と聞いた。
バビンカの絶叫が聞こえる中でも聞こえてくる血まみれのクオーの言葉。
真っ赤な悪魔に見えるクオーの言葉に「そ…そそそ…そうです。わ…わわわ…私の口とか手とか全部褒めました」と震えながら話すジョンダリを見て深くため息をついたクオーは「よくも年端も行かぬ娘を汚したものだ」と言うと左手をバビンカの股間に持っていき握りつぶす。
滴り落ちる様々な液体、新たな絶叫のなかそれで満足しないクオーはそのまま引きちぎると「自業自得だ」と言い、両脚も折って「そのまま朽ちろ」と投げ捨てる。
股間を潰された上に引きちぎられたバビンカは足も折られ何も出来ずにヒーヒーと苦しみの声を上げのたうち回りながら徐々に動きが緩慢になって死んでいった。
クオーはそれを見てようやくほっと一息ついてからバビンカが座っていたソファでバビンカの頭を潰して「その顔は二度と見たくない」と呟いた。
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