早速ディア君に相談



「というわけで、ディア君にも大会に出てもらおうかなって」


 宿――からの拠点で合流した私は、早速ディア君に相談した。


「……でも僕に戦闘力はありませんが?」

「パーティー戦なら私がディア君のサポートできるし、こんな大会もあったんだよ」


 と、ギルドの掲示板に張られていたチラシの複製を見せる。


「テイマー大会……ですか?」

「そう! ディア君とアーサーにペアで出てもらえば、ディア君はアーサーに『いけっ! アーサー!』って言うだけの簡単なお仕事で荒稼ぎできるって寸法よ!」

『え、自分っすか?』


 名前を呼ばれたのを聞き付けて、アーサーがぴょこっとやってきた。


「確かにアーサーなら、そこらの従魔には負けないでしょうね」

『勿論っすよ! 自分、サンダードラゴンなんで!!』


 単語帳で会話しながら得意げに胸を張るアーサー。


「ついでに万一に備えて五大老工房で作ってもらったあのゴスロリドレスを着てもらえば完璧ってなもんよ」

「アレは表に出したら不味い装備だと思いますが」

「でもディア君の安全には代えられないからね。仕方ないね?……大丈夫大丈夫、いざとなったら私が止めるから!」


 五大老工房製、ゴスロリドレス。

 魔法は大体受け流し、物理面もハンマーの全力フルスイングが猫じゃらしで撫でられる程度の威力にまで軽減。ついでにディア君からの攻撃はデコピンで岩に指が突き刺さる程度に強化される。


 ただし! これを着て暴れると、翌日にとてつもない筋肉痛に襲われるのだ!


「……デメリットそれだけで強化され過ぎなんですよ。どうなってるんですかアレ」

「呪いをうまく組み合わせて中和させてるらしいよ」


 例えば、デメリットの『すごく狂暴になる』と『暴力性が極端に抑えられる』をバランスとって同時に発現させ±0にしている。そういうのを大量に詰め込んだ結果の超装備だ。


「ただ、そのせいで絶妙なバランスに仕上がってて……フリル1枚でも外れると崩壊して大爆発するとかなんとか」

「やっぱり表に出せない装備じゃないですかっ!」

「大丈夫! 装備者は爆発してもノーダメージらしいから! いわば装備の最後っ屁? むしろ安全装置だよ」


 半径1キロの敵を爆発で排除して安全を確保する装置。略して安全装置!

 そしてバランス欠けて何かしらのデメリットが発生する前に装備解除するちゃんとした意味の方でも安全装置だ。


「……聞けば聞くほど、とんでもない装備ですね」

「こんなの作れるの、五大老工房だけだってみんな自慢してたもんね。あれ着て戦うディア君がみたいなぁ……なんて、ダメ?」

「凄い筋肉痛になるんですけど」

「それもルーちゃんのポーションで治るじゃん。だからこそ最後に残されたデメリット効果なわけだし」


 それすらも、万一装備が奪われて悪用された場合に備え、あえて残されているもの。

 1回暴れたのちに、筋肉痛で動けなくなるわけだね。


 暴れたら所在がはっきりして、そこに行けば動けなくなった敵が転がってるって寸法だ。

 本当に無駄がない、芸術品のような装備である。


 ……と、思わせておいて実はディア君だけにチューニングされているため、ディア君以外が着たらバランスが崩れてデメリットが出てしまう。

 最初からディア君専用装備なのだ。それも、今のディア君専用であり、成長したらディア君ですらデメリットが増えていく。

 (曰く、「エルフだから十分長く使えるよね? 思い切って作っちゃった!」とのこと)


 だから最初から盗まれてもどうにもできないんだよね。無駄に筋肉痛が残された。

 ……筋肉痛に悶えるディア君もかわいいだろうから、無駄ってわけでもないか!!


「で、今じゃなきゃ着られないんだから着るべきなんだよ!!……可愛い恰好するのも、ディア君の家賃なわけだし!」

「……もー、仕方ないですね。優秀な装備であることには変わりないですし、今回だけですよ?」

「やったぁ!」


 公式の場でドレスアップするディア君が見れる!

 ぐへへ、こりゃ美少女エルフテイマー最強物語始まっちゃうぜ……!


「でも僕だけそういう格好というのもなんなので、お姉さんも着飾ってください」

「え?」

「五大老の皆さんにとびっきり可愛らしい衣装を作ってもらいましょうね。大丈夫、カリーナお姉さんの装備といえば一晩で作りますよあの人達」


 というわけで、私達はお互い着飾ってコロシアムの大会に出ることになったのである。



―――――――――――――――――

(「あとごじ」1巻、いよいよ明日発売ですよ! 本屋によってはもう並んでるかな?)

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