うん、ディア様にお似合いです!(アイシア視点)
「じゃぁ、私ダンジョン攻略の続き行ってくるよー。多分夜には帰るけど、帰ってこなかったら晩御飯とか食べちゃってていいからねー」
「はい、行ってらっしゃいお姉さん」
「行ってらっしゃいませあるじ様!」
一人ダンジョンに向かうあるじ様を見送る私達。手を振って空間の穴に入っていったところで、ディア様が私に向かって声をかけてきました。
「アイシアさん。そういえばお姉さん、アイシアさんの部屋で寝てましたよね? その前も、妹さんと一緒に寝てたり」
「はい。一緒に寝かせていただきましたね」
「……その、お姉さんとは、ど、どのくらいの仲なのでしょうか? 妹さんは恋人とか言っていましたが」
「どのくらいのこと、と言いますと?」
「その。えーっと……」
何やら耳の先を赤くし、目を合わせずにもじもじと質問してくるディア様に、私はピンと来ました。これはご寵愛のことを聞かれてるな、と。
おやおや、ディア様ってばそういうの気になるようですね。うふふふ、分かりますよ? あるじ様への恋心、ディア様は隠そうとしていますが、全く隠れてませんからね!
「ディア様。……あるじ様は男嫌いです」
「……やっぱり、そうですか?」
「ですが、ディア様は脈があると思います。男嫌いのあるじ様がそばに置いている時点でそれは明確ですよ?」
「そうでしょうか? あ、でもその、お姉さんは妹さんと付き合ってると」
「大丈夫です。女同士なのでノーカンですし、サティも冗談半分で言ってます。あるじ様は実質フリーです」
まぁ半分は本気っぽいけれど、それはそれです。
「ディア様。あるじ様のご寵愛を賜るには、もっと可愛くなるべきかと……!」
「ご、ご寵愛って、その」
「女の子の格好してる時の方が、明確に甘やかされてますよね!? つまりそういう事です! もっと女の子になれば、あるじ様も手を出してくださいますよ!」
「な、なるほど? あ、いや、そういうのを望んでいるわけではないんです、けどね?」
ああもうじれったいなぁ!
「エルフの奥手っぷりに付き合ってたら、他の種族は寿命で死んじゃいますよ! それでもいいんですかディア様!?」
「よ、よくないですっ」
「じゃああるじ様のために、女の子のおしゃれをしましょう! このカルカッサにもアクセサリーを売ってるところとかはありますからね!」
「……ボク、あまりそういうの詳しくないんですが。手伝ってくれますか?」
「はい、喜んで!!」
かくして私たちは『あるじ様がダンジョンに行っている間に可愛らしく着飾り誘惑し、手を出してもらおう』作戦を開始したのです。
まぁ私は先日お手付きしていただいたので優雅な気分でディア様にお付き合いするわけですが。えへへ。
ちなみに、カルカッサにあるアクセサリーは、娼婦への贈り物となる華美なモノか、女性冒険者のためのあまり派手ではなく可愛いものの二極です。今回はディア様のために後者の方のお店へと向かいました。
「うーん。どれがお姉さんの好みかな……アイシアさん、これなんてどうでしょうか?」「お、可愛いですね! やはりディア様はセンスがあると思いますよ。あるじ様、そういうシンプルなのとか好きですし。それを体に巻いて『ボクがプレゼントです』って言うのもアリでしょうか」
「なるほど。身体にリボンを巻くというオシャレもあるんですね」
あ、これ裸にリボンって分かってないな。まぁいいです。
「(そういった無知で無垢なとこもまた)うん、ディア様にお似合いです!」
「そうですか? んー、なら、その、買ってみますかね。巻き方に作法や意味があるなら教えてください」
「もちろんです。あるじ様にバレないよう帰り道で概要は教えておきますね。そして今回は私に買わせてください!」
と、私はディア様のリボンを購入します。
え? なんで私がお金払ってるかって? フフフ。ディア様に文句を言わせないためですよ! 自分のお金で買ってたら後で文句言われるかもしれないですからね!
そして、万一うまく行った場合は『ディア様が私からあるじ様へのプレゼント』という事実が生まれますし! えっとお値段は……うん? 1メートル当たり……?
わかった。これは難しいやつです。
「あ、計り売りなんですね。……ちゃんと買えます?」
「み、みくびらないでください!」
と、いつも通りお財布を店員さんに見せて料金分取ってもらおうとして、そういえば『さんすう』の勉強をしていたことを思い出しました。
今こそあるじ様に教わった『さんすう』の出番! えーっと、えーっと。
「はい、銀貨1枚と大銅貨4枚頂きました」
買えた! ちゃんとお買い物できましたよあるじ様ー!!
「どうですかディア様。私だってお買い物できるんですよ」
「そうですね、よくできましたね」
「えへへ……って子ども扱いしないでくださいよっ! 私はオトナのレディですよ!?」
「すみませんつい。あ、他にも買ってみましょうか」
まったく。おっと、帰り道にでもリボンの使い方を説明しないとですね。
…………
……
「――という感じで、一糸まとわぬ姿をあえてリボンで飾り付けるようにするのが正しい作法でして」
「ッ!? そ、それじゃあ下着じゃないですかっ」
「あれ。恥ずかしがるところそこなんですか?」
「返してくださいっ、ボクが自分で持ちますからっ」
「えー、でも奴隷の私がディア様に荷物持ちさせたなんてそんなそんな。ね、ディア様、荷物は私が持ちますよっ」
「大丈夫です、これくらいボクが持ちます。アイシアさんに持たせるわけにもいきません、下着ですしっ」
やーん、可愛い。なるほどこれはあるじ様がそばに置くわけですよ。
でもあるじ様に女の子の下着履かされてますし今更感ありますよね。
そして、買い物を終えて帰ってくると、リビングエリアであるじ様が倒れていました。
正確には長椅子に横たわりぐったりしている状態です。
「あるじ様!?」
「お姉さん! 大丈夫ですか!?」
「うう……ああ、おかえり二人とも。うん、だ、大丈夫だよ……少し休んだらまたダンジョンいってくるし……うぅ」
と、明らかに大丈夫ではなさそうなあるじ様。
私たちが同行した先、ダンジョンの奥には、あんなに強いあるじ様がこんなになるほどの何かがある、という事……! 恐るべし、ダンジョン!
「僭越ながら、あるじ様。今日はもうお休みなられた方が……」
「いや、その、ちょっと脳をやられただけだから平気……」
「大変じゃないですか! 頭の中身は、こぼれたら死ぬんですからね!? しっかり休んでください! ディア様、あるじ様をお部屋まで運びます、手伝ってください!」
「あ、うん。はい。……お姉さん、立てますか?」
「うー……」
そしてあるじ様は私とディア様に両肩を支えられ、あるじ様のお部屋のお布団へ。
くんくん……あるじ様のニオイが濃厚ですねこの部屋。滾る。
って、ちがうちがう。あるじ様、早く良くなってくださいね……!
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(3月毎日更新達成!
とりあえず4月からは2日に1更新ペースとします。なろうと交互に投下してく感じで。こっちの方が1日半早い感じになるかな…?)
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