やれって言われました。私は悪くないよねぇ?

(本日2話目の更新です)

――――――――――――――――――



 いやぁ、強盗しちゃった! カリーナちゃんってば悪い子!


 でも証拠は一切残ってないんだよ、ゴメス達の証言くらいで。

 それにあっちが強盗だって言ったんだから強盗で良いよねぇ……!


 喜べゴメス! お前の希望通りの強盗カリーナちゃんだぞ! 強盗の私も可愛いぜ!


「ない、ない、どこにも! どうなってるんだ!」


 倉庫内を探すゴメスだが、あるはずもない。この倉庫にあった荷物はすべて私の収納空間の中にある。一瞬で全部仕舞ってやったのだ、私も含めて。


 とはいえ、この強盗ってばあちらが反省しているなら返してあげてもいいかなーってくらいのイタズラだ。

 心優しいカリーナちゃんだからね。反省のハードルは高めだけど。

 なので反省してるかどうかを確認するため、こっそり収納空間から隠れて話を聞いています。いえーい張り込みー。ちなみに収納空間の座標はゴメスを後ろから見下ろす位置。ゲームで言うとこのサードパーソンな座標とした。


 やや後方数メートル上の光学迷彩もしてる覗き穴にゴメス達は気付くかな? 私は無理だと思う。


「くそっ! とんでもない損害だ!」

「これは諸々の支払いに支障がでそうですな、ゴメス殿?」

「まて、待ってくれ。これは夢か何かだ……」

「こちらも今まさに夢を見てるとでも? 確かに荷が消えているように見えますが?」


 取引相手と揉めているようだ。いやぁいい気味。


「だ、だが、なんとかする! なんとかするから!」

「……いえ、結構。正直、あれは人ではないと思います。こちらは関与したくない」

「は? 人ではない? 何を言ってるんだ」

「先日、ソラシドーレの奴隷商が捕縛されました。そして、その罪を証言をした者は誰一人として『神に誓ったから言えない』と頑なに自首した要因を口にしなかったとか」


 あー。あいつらそういう感じになったんだ?

 中々やるじゃん、よほど脅しが効いたみたいだね。OK、私は満足じゃ。


 ゴメス君達海賊もこの後同じ目に合わせてやるってのもいいなー、あ、でもワンパターンだと神様も飽きちゃうか。

 っていうか、そもそも領主とつながってるっぽいし白状させたところで大した罪にはできないか。別のを考えよう。


「そしてこれは別の方面の情報ですが、先日錬金王国が壊滅しました」

「……壊滅!? 錬金王国が!? いや、しかし、そ、それが今何の関係が?」

「混沌神が、神の怒りに触れたそうです。これがどういうことかお分りか?」

「は? 神の怒り? どういうことだって?」

「錬金王国を壊滅させた神が、今この世界に居るという可能性があるんですよ。……もしあの女性が神であるなら、あなたはまさに神に喧嘩を売ってしまったんだ」

「な……な……、そんな証拠は」


 愕然とするゴメス。

 あー、うん。なるほど。言われてみればこっちの商人の言うことは当たっているかもしれない。というかかなり現状に近い。

 中々優秀な商人じゃないか。悪事に加担してるっぽい雰囲気あるし、目を付けとこう。

 空間魔法の座標としてマーキングだ。


「この状況、ゴーレムが数時間かけて運ぶ荷物を一瞬で消して見せた。これこそ証拠では?」

「ぐっ……!」

「もうウチに話を持ってこないでくれますか。進行中の事業についての違約金はこちらから払います、それで縁切りだ」

「ちょ、ま、待ってくれハンス!」

「悪いなゴメス殿、金は払ってやる。が、こちらは巻き込まれたくないのでね!」


 そう言って商人はゴメスを置いて倉庫から逃げるように出て行った。

 取り残されたゴメスとその手下たち。


「お……親分……」

「俺ら、どうしたら……!」

「う、うるせぇ! 何が神だ! 神ならこっちにだってついてる!」


 ほう? 神様がついているとな? コレは興味深いことを言い出したぞゴメス君。



「神器『ポセイドン』がな!! これがあれば海の上なら絶対安全だ、『仕入れ』を行うぞ!!」



 まじかよ、ラッキー! 見つけちゃったぜ神器!!


 あー、でもあれだな。

 もしこれが平和利用で、この町の維持にどうしても必要っていうなら見逃してやらないでも……いや、別にゴメス君が持ってる必要はないな。強盗しちゃお。必要なら他の奴にくれてやればいいんだよな。



 なにせ今の私は強盗様だからねぇ! いえーい! 完璧なアリバイと共に好き勝手しちゃうぞー!



 ゴメス達はどこかへ移動しはじめた。現在の収納空間の座標はゴメスにくっ付いているので、自動的に尾行する形になる。空間魔法は万能ですよ?

 海の上とか言ってたから最終的には船に向かうんだろうけど、その前に陸地にある拠点に向かう模様。そっちも強盗してやろうか、いや一旦泳がせておくかな? ククク。


「あ、そういや回収した倉庫の中身って何だったんだろ。木箱の中に入ってるからまだ確認してないんだよねぇ」


 収納空間の中にごっそりそのまま移動させた木箱、ゴメスの荷達。

 ゴメスのものは私のモノ、私のものも私のモノ。さーて、箱の中身はなんじゃろなっ?

 私は適当に近くにあった箱山の、一番下の箱をするっと(さりげなく空間魔法を使って)抜き出して、中身を確認してみることにした。


 さぁ、海賊のお宝とご対面! 木箱パカーッ……


「……うわぁ」


 中身と目が合ってしまった。

 そこに居たのは、耳のとんがったかわいらしい子供――うん、まさか、エルフの子供とはね?



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