第32話 嫌われる主人公
オルビス魔法学園にある裏山
「燕返し!」
「ぐえええ!!」
オルビス魔法学園の制服を着た黒髪ポニーテールの美少女剣士が大量のゴブリンを相手している。
彼女の名はナオミ・ドルー。
マッキナ帝国で剣の腕が非常に優れていることで有名なドルー侯爵家の長女だ。
引き締まった筋肉とメリハリのある体はエリカを彷彿させるが、白い皮膚のエリカと比べて若干皮膚の色が褐色を帯びている。
彼女の属性は力。
主に短距離での一撃が強いキャラで、マジック★トラップではボスを狩る時に重宝されるキャラである。
剣士であるがゆえにクールなところがあり、すごく真面目な性格のヒロインである。
決闘ランキングは5位。
レベルは14。
「ぐうう!!」
「がああ!!」
そんな彼女の得意技である「燕返し」を食らったゴブリンが倒れ、仲間ゴブリンたちが威嚇している。
ざっくり見積もって30人くらいいるゴブリンは数に物を言わせるように上から目線である。
だが、ナオミは残りのゴブリンたちに視線を向けることなく、後ろを振り向いた。
すると、そこには長い金髪を靡かせながら大きな魔導書を持っているメガネをかけた美少女がいる。
赤い色の瞳に整った目鼻立ち。
体長は低いが、大きい二つのマシュマロは、魔導書が発する光と風によって揺れ動いている。
細い美脚はちゃんと地面を踏み締めており、踏み込めないオーラを漂わせている。
右の手のひらには巨大な魔導書が置かれていて、右手でゴブリンたちを指している。
この金髪美少女は口を開く。
「ナオミ、そこからどいて」
「うむ。わかった。その通りにしよう」
女剣士ナオミは金髪短身メガネ美少女の言葉に頷いてから下がる。
「……」
汚れた制服をきている主人公ベルと同じパーティーのモブ男は全身が魔導書の光に包まれた金髪美少女を見て固唾を飲んだ。
すると、金髪美少女は合金でできたメガネのフレームを光らせて口を開く。
「壁よきたれ」
と、唱えると、魔導書が特定のページで止まり、紫色の光を発しながらゴブリンたちの周で止まり、そのまま壁となってゴブリンたちを囲む。
「ぐううう!」
「がああ!」
「ぎえええ!」
多くのゴブリンたちが紫色の壁を壊そうとするが、壁はびくともしない。
金髪美少女はまた唱える。
「爆裂。かのものたちに破滅を」
すると、大きな魔導書はまた特定のページで止まり、赤色の光を放つ。
そして、赤い光はゴブリンたちのところへ移動し、いくつかの球体となり爆発した。
「「ぎゅえええええええ!!!」」
奇声を上げつつ消えてゆくゴブリンたち。
30人余りのゴブリンは全滅した。
だが、彼女は監視に目を緩めてない。
この短身金髪メガネの美少女の名はカトリナ・デ・オルレアン。
ナオミと同じくマッキナ帝国出身で、カリンの友達である金髪ドリル(カサンドラ)の姉である。
彼女の父はマッキナ帝国のみならずあらゆる国々に魔道具や機械などを研究して販売し莫大な影響を及ぼすオルレアン商会の会長である。
それだけでなく、オルレアン商会はオルビス魔法学園に莫大な資金を出しており、ここイラス王国とマッキナ帝国をつなぐパイプ役を担っている。
カトリナの属性は無である。
平民のように属性がないわけではなく、「無」という属性の持ち主である。
この世にはまだ解明されてない属性が存在するため、属性に目覚めても、その属性の特徴がわからない場合がある。
一つ確かなのは、彼女は魔道具を作るのに天才的な才能があるということだ。
そして、発明や理系といった分野においても他の追随を許さない。
彼女は首席でオルビス魔法学園に入学し、戦闘ランキングは一位。レベルは19。
「カトリナの魔法を見るのは初めてだ。噂通りだな」
黒髪ポニーテールのナオミがカトリナの戦闘能力を褒めると、カトリナは魔導書を消して、メガネを掛け直してからいう。
「まだまだよ。魔導書はまだ改良が必要なの。それはそうとして、あなたの燕返しもなかなかのものだったわ」
二人の美少女が話していると、ベルが驚いたように割って入ってきた。
「改良って、さっきの魔導書はカトリナが作ったのか?」
「ええ。そうよ」
主人公ベルの問いかけにカトリナは顔を顰めて目を細めながら返した。
まるで汚れた制服姿のベルのことが気に入らないとでも言わんばかりの表情である。
「ベル君」
「ん?」
「あなたは主人公でもなんでもない。だから出しゃばらないで」
「っ!悪い」
低いトーンで発せられたカトリナの声音にベルは頭を俯かせて握り拳を作りながら悔しそうな表情をする。
女剣士であるナオミとメガネ美少女のカトリナが30人余りのゴブリンと戦った理由。
その原因が全てベルにあるからである。
カールに決闘で負けて思わせぶりなことをいわれて悔しくなり、なんとか巻き返そうと自分のパーティーメンバーをほったらかしにして「俺は強くなって見せる!」と言って主人公オーラを漂わせながら突っ込んだ挙句、ゴブリンを引き連れてきてしまった。
本来であれば、ちゃんと二人に協力しながらも、未熟なところがバレて二人に間違いを正される過程で仲良くなっていくのだが、
今や、ベルは二人に大迷惑をかけてしまったわけである。
一緒にいる友人役のモブ男もベルを見て、視線を外している。
完全に厄介者扱いされているベル。
「日も暮れていることだし、水辺の近くにテントを張ろう」
ナオミが剣を鞘に納めながらいうと、モブ男君は無言で頷き、カトリナも小さく息を吐いて頷き返した。
主人公ベルは歩き始める3人の後ろ姿を見ながら悔しそうに唇を噛み締めて重い足を動かす。
追記
次回はカトリナとナオミを掘り下げていきます。
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