そうだ!海に行こう!

 テケテケに足をあげてから1週間が経った。あれから帰り道に踏切に行くとテケテケが楽しそうに歩いているのを何度か目撃した。とても楽しそうだったのであえて声はかけなかったが、いい事をした気分だった。

 

 そして、日曜日。

 

 まだまだ暑い中、俺はアイスコーヒーを飲みながら扇風機を全開にして官能小説を読んでいる。汗で小説がベタベタになった時、俺は暑さでおかしくなったのか、急に立ち上がって大声で叫んだ。

 

「そうだ!海に行こう!」

 

 なにもこんな暑い中部屋に閉じこもってる必要はない。暑ければ海に行けばいいじゃないか。

 

 そう決めた俺は海パンを持たずに、浮き輪を持って電車に飛び乗り海を目指した。電車から降りて駅から歩くと○○海岸という看板が見えて来た。セミがミンミンと鳴り響く中歩き続け、○○海岸に辿り着いた。

 

「あれ?人居なくね?もう海開きしてるよね?」

 

 辺りを見渡すと、海岸には人気は無くあろうことか海の家すらない全くの無人の海岸だった。

 

「おっかしぃな〜。もしかして遊泳禁止だったかなぁ?」

 

 砂浜を歩いていると、コツンと何かが当たった。俺はそれを掘り起こして見ると、【遊泳禁止】と記された看板だった。

 

「やっぱりここ遊泳禁止だ!あっぶねぇ…………通報されちまう。早いとこ別の所に行こう」

 

 駅に戻ろうとしたその時。

 

 きゃはははっ!

 ちょっとやめてよ〜!

 それそれー!

 

 どこからともなく聞こえる艶々と潤いのある声。俺は後ろを振り向くと、色とりどりの水着を身につけた女の子達が遊んでいた。

 

 なにあれ、天使?  イカンイカン。ここは遊泳禁止だという事を知らせなきゃ!!。

 

 俺は不審者と思われないように堂々としながら女の子達に声をかけた。

 

「こんにちは〜!そこのお嬢さん達、ここは遊泳禁止ですよ〜?」

 

 もちもちとハリのある肌に艶々な髪を靡かせる7人の女の子達は一斉に俺の方に振り向いた。

 

「お兄さん誰〜?」

「どこから来た人〜?」

「てか、何そのカッコウケる」

「暑そう」

「イケメンでもないし」

「お兄さんジュース買って来てくれる〜?」

「お腹すいた〜」

 

 7人いっぺんに話されると何言ってるか分からないんですが。

 

「まってまって、1人ずつ話してくれますか!?」

 

 俺が女の子達に言うと、赤いビキニの女の子が手を挙げた。

 

「はいはーい!あたしが話すよ!」

「あっ、君ね?。あのね?ここは遊泳禁止みたいなんだよ、だからこの辺の人に通報される前に移動した方がいいよ?」

「えー、別に悪い事してないもん。いいじゃん」

 

 赤いビキニの女の子に言っているのに青い髪の女の子が話し出す。

 

 何故君が喋る。

 

「そうなんだけど、遊泳禁止になったという事は理由があるんだし」

「なんでお兄さんに言われなきゃないわけ?」

 

 青い髪の子に言ったのに、スクール水着の子が言い返して来た。

 

 だから何故君が喋る!。

 

「そうなんだけど、おまわりさん来たらめんどくさいでしょ?」

「そんなのいいからお兄さんも遊ぼうよ〜!」

 

 スクール水着の子に言い返ししてると、金髪の子が話し出す。

 

 君に至っては話聞いてた!?。

 

 金髪の子が言い出した途端、他の6人も釣られるように。

 

「それもそうだね!お兄さんも遊ぼうよ!」

「そうだよそうだよ!海に入らなければ通報されないよ!」

「遊ぼうよ!」

「通報されてもお兄さんが助けてくれるでしょ?」

「ほらほらー変な浮き輪置いてさー!」

「盛り上がって来たねー!何して遊ぶ〜?」

「シーグラスでも探す?映えるんじゃなーい?」

 

 美女7人に囲まれてガヤガヤと言われながら腕やシャツを引っ張られ、思わず顔がにやける。

 

 ハーレムだ、これは間違いなくハーレムだ!!

 

 そう確信した俺は、

 

「通報がなんぼのもんじゃい!さぁ、遊ぶぞぉー!」

 

 浮き輪を投げ捨て、女の子達と遊び始めた。

 

「そーれっ!」

「あははっ!そーれっ!」

 

 ビーチボールで8人仲良くして遊んでいるといつの間にか俺達は打ち解け始め、触れ合う仲になっていた。

 

「あーん、お兄さんつよーい」

「ほんとほんとー」

「ぎゅうってしちゃおうっと!」

 

 銀色の髪の女の子が密着する。すると、負けじとサングラスを掛けた女の子と赤い髪に褐色肌の女の子が割り込んで来た。

 

「ちょっと抜け駆けしないでよぉ!」

「あたしらも混ぜてよ〜!!」

「「あたし達もー!!」」

 

 ぎゅうぎゅう詰めの満員電車の様に女の子達に押さえ込まれる。その時俺はどさくさに紛れて女の子達のあんなとこやこんな所を触ってみた。

 

「ちょっと押さないでよ〜!!」

 

 なんっだと!?

 

 俺があんなとこやこんな所を触っているのに気付いていないのか、まったく気付かなかった。生唾を飲む俺は覚悟を決め、更に触ってみる。

 

「ちょっと!」

 

 しまった!バレた!!

 

 思わずビクッと動きを止めると、

 

「お尻触ってるの誰〜?」

「ごめん、あたし、あたし〜!」

 

 なんっだと!?ほんとに気付いてないの?我慢してるんじゃないの?もう、捕まっていいや。

 

 変な気分になってきた俺は開き直って更にあんなとこやこんな所を触る。

 

「来た、俺のモテ期が来たぞぉぉぉっ!!」

 

 熱く、熱く叫んでいると、ある異変に気付いた。

 

「…………あれ?いつの間にか、海に入ってね?」

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