第85話 エピローグA・③ 三葉虫が見ていた夢

 ……最後まで読んでくれた?

 さすがに疲れたわね、でも、わかったでしょ?

 答えている方は楽だろうけど、『問いかけ』をするのって疲れるのよ?

 結局、答えは用意せずに問いかけるのはズルかもしれないけど、きっと貴方が今までやってたことダンスはこういうことなのよね?

 違う? あぁ、もういいかしら?

 ペンなんか握ってたら、うずうずしてきちゃうんだからね?

 女の子がむらむら、むずむずしたときの辛さ、わかんないでしょ?

『あぁ、貴方のアレが欲しいわ。アレがないと、もう生きていけない』なんっつてね?

 嘘よね、そんなの?

 飢え死にしそうだったら、腐った肉だって食べるでしょ?

 あれも夢、これも夢ってね?

 今までのことが、栄枯盛衰すべてが、三葉虫が見ていた泡沫のような夢だったらいいわよね?


 あー、忘れてたわ……あんた『真理』のこたえが聞きたいって言ってたわね?

 そうね……じゃあ、ヒントあげるわね?

 想像して?

 すっごくべらぼうに頭のいい博士ってのがいて、そいつがまぁ余計なことに、人間そっくりの思考が出来る人工知能ってのが発明したとするじゃない? 

 博士は得意気に「今どんな気分だい?」なんて得意気に尋ねるんだけど、人工知能は困っているのよ? 

 なんでかわかる?

 それはね、博士ってば、鼻毛が出てるからなのよ?

 人工知能だって鼻毛が出ているのは言いづらいわよね?

 そんな感じじゃない?

 いかにあたしたちが肉体に縛られているか、よくわかるわよね?

 ……なーんか、もう疲れちゃったからこのへんでね?

 じゃあね、バイバイ』


 この女があの映画の『人妻』であることは、私に虚無感を与えた。

 まただ。

 とりあえず、『問いかけ』に答えなくてはいけない。まったく、妙な友人ができてしまったものだ。

 まぁ、暇つぶしにはちょうどいいけれど。

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