07 複製生体
美夜子のために。
我が娘、美夜子のために。
ただそれだけを思い、訪れる未来を信じ、私はめかまじょの研究開発に注力し続けた。
めかまじょ化手術をぶっつけ本番で試して成功させられる自信はある。現在、それくらいの状況は整っている。とはいえ、急いても仕方がない。融合係数の問題により、後遺症のリスクを承知で美夜子を超低体温睡眠に入らせたわけだが、それによって時間の猶予が生じているからだ。
あくまで私にとっての猶予であり、裏でうかがっている教団の連中は月の魔力解放までというタイムリミットに焦っているに違いない。
おそらく私の研究内容は、ML教団には筒抜けだ。
だから私は、ご機嫌伺い的に大容量純魔力を制御する魔道ジェネレーターの開発も行いながら、めかまじょ理論の改善改良に力を注いだ。
だがどうしても、融合係数の問題だけはままならなかった。
世間にAIロボが溢れているように、完全なメカ化をすれば美夜子は蘇るだろう。だけどそれはもう別物だ。美夜子に似たなにかだ。
生体との融合を捨てたら、それこそ我が娘が永遠の闇に落ちてしまう。
ここでわたしは、一つの方法を思い付く。
複製生体技術、つまりクローンだ。
融合の妨げになっている不要因子を取り除いた、めかまじょ化においての完全体たる美夜子を作る。
だがあくまでクローンであるため、美夜子ではない。同じ特性を備えただけの別人。そこから必要なパーツを取り出して、本物の美夜子へと移植するのだ。
現在、倫理的な観点により、クローン技術を扱うことは世界的に禁じられている。
だが私は財団に掛け合って、あくまで裏での実施に限るという条件で政府からの正式許可を得た。秘密裏の正式許可というのも矛盾しているが。
財団の影響力か、神の力か悪魔の力か、面白いようにトントン拍子にことは運び、こうして私は、まったくの畑違いであるクローン技術にも手を付けることになったのである。
財団が紹介してくれた、高名な科学者とともに。
百年前の羊と違い、作るだけなら簡単だった。
技術が格段に進歩しているからだ。
クローン体の容姿は、操作してあえてオリジナルと変えた。
こんなものが美夜子であってたまるか、と思いたかったから。
モノであると、思いたかったから。
偽物だ。
美夜子の偽物であり、生き物としても偽物だ。
どうでもいい。
計測数値が優秀であればいいのだ。
求めるに完璧であればいい。
いつか美夜子を復活させるための道具、素材であればいい。
それだけだ。
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