05 娘のために

 微かに呼吸はしている。

 冷凍睡眠とはいうが、正確には超低体温睡眠と呼べるもの。機械の力でわずかな酸素を送っており、凍ってはいないのだから僅かながら自発呼吸もする。


 このまま温度を元に戻せば動き出すのではないか、利発そうな口をきくのではないか。

 カプセルの中で眠っている娘の寝顔を見ていると、そんな気がしてくる。

 それほどに、飛行機墜落事故に遭ったことが信じられないくらいに表面上の損傷がないのだ。


 だけど実際には臓器はまるで機能しておらず、そのためか意識も戻ることはない。


 頼みの綱であるめかまじょ化も、融合係数が低くて施すことが出来ず。


 わたしは研究を続ける。

 めかまじょの研究、開発を。

 娘のために。

 別に、私がせずとも良いのだ。

 科学、医学が進歩して、それで娘を救えるのならば誰でも構わない。

 医療技術の日進月歩にも淡い期待を抱きながら、とにかく私は私の出来ることを取り組んでいくしかなかった。

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