02 ML教団
ある団体の幹部を名乗る二人が、面会に来た。
ML教団という名の、月光を信仰する新興宗教団体だ。
この日記には書いていないかも知れないが、以前にも訪れて月光の魅力をとうとうと語って帰っていった男たちだ。
月には魔力が溢れており、祝福されることにより人類の魂は一段の昇華をし、より神へと近付いて、しいては宇宙に存在する魂みなが幸せになれるのだとか。
数十年前に発見された未知の物質、人類はその効果に便宜上「魔法」「魔力」「精霊」などの名前を付け、未知のまま効果だけを応用し、利用している。
古来より、その魔力を肌に感じるばかりか効果を引き出してしまえる特異能力者は存在していたと思われ、それが「魔法使い」「魔女」などと呼ばれていたのではないか。と、そのような説もある。魔女が実在するとして、それも科学ということだ。まあ、当然だろう。
魔法を行使するには魔力が必要だ。魔力は地球上にも存在し、発見され応用されているわけだが、月面には穢れていない上質の魔力がなおかつ無尽蔵に存在しているらしい。
今回、二人が語るのは月の魅力ではなく、そうした魔力の実質的な話だった。
以前の来訪理由は、さっぱり分からなかったが、ここからが本番ということか。どちらであれ、私には正気の沙汰とは思えないのだが。
本番とはいえ、ただし魔力の実質などは教団にはどうでもいいことなのではないだろうか。
発見された未知の物質がなまじ「魔力」などと名付けられたものだから、かこつけて宗教活動に利用したいだけではないのか。
当たらずともそのようなところであろう。
何故、機械工学の専門へと話を持ってくるのか。こちらにとっては不本意だが、神秘を増すための裏付け証明でも欲しいのではないか。
私は応接室で二人と向き合いながら、そんなことを考えていた。
しかし事実は別であった。
彼らは本当に、未知なるエネルギーの科学解明と応用を私に求めてきていたのである。
名ではなく実を要望してきたのである。
機械の専門家である、私に。
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