04 元原悦子ひさしぶりの登場だ

 遠くぐるりを新都心のビル群に囲まれた郊外に、広い敷地の施設がある。

 四方から伸びる道の中心点に六階建てのビルがあり、これがこの施設のメインといえる建物である。

 西にしおおみや公害研究センター。

 広大な土地の、のどかな雰囲気の研究所である。

 一つ訂正挿入しよう。広大な土地の、のどかな雰囲気の研究所である。

 要するに、現在はのどかでないのだ。


 敷地内、建物の周囲にはたくさんの警察機動隊員やパトカー、特殊戦闘車、そして報道陣。彼らの存在により、なんとも物々しい雰囲気が作り出され、普段ののどかな雰囲気などすべて掻き消されてしまっていた。


 報道陣の一人、さいきようテレビの女性レポーターもとはらえつがマイクを持って立っている。

 トレードマークたる古風な巨大マイクを口元に近付けると、深刻そうな顔をカメラへと寄せた。


「現場から繰り返しお伝えします。

 ここ、埼玉県にある西大宮公害研究センターで、組織的大規模な立てこもり事件が発生しています。

 過激派が乗り込んで、ビルを占拠しているのです。

 要求はシンプルかつ理不尽。

 『公害は世界的なものであり、日本だけが莫大な税金を投入して研究をするのはおかしい。不要な施設だから解体しろ。

 でも、この施設そのものは儲けているのだから、ならば儲けた分の金をよこせ。我々が平和利用のために使ってやる。』

 要約すると、このような主張をしているのです。

 本心とは信じられないなんという自分勝手……」

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