02 新しい自分に会うために
ここは札幌の空港だ。
隣の座席には、お母さんの姿。
二人はこれから、東京へと向かうのだ。
旅行ではない。
これから、お父さんと一緒に暮らすのだ。
初めて母にそういわれた時は、まるで実感がわかなかったけど、現在も実感がわかないくせに不安ばかりがどんどん胸に大きくなる。
あんなにお父さんに会ってみたいと、ずっと思っていたというのに。
母と二人きりにも満足していたけどそれはそれ、ずっと会ってみたかった。
記憶おぼろげだからこそ、自分はお父さんが好きなんだと思い込んで、それを母に常々いっていたくせに、いざ会えるとなると不安しかなかった。
ということは、自分はお父さんのこと嫌いなんじゃないか。
そう単純に結び付けて考えてしまうのも、自分が嫌になるけれど。
不安になってしまうのだから仕方がない。
要因はどこにある?
お父さんがどうこうというよりも、お父さんを愛せるかという自分の気持ち一つにすべてはあるのだろう。
だって考えてみればお母さんの顔、これまで二人で一緒に暮らしていて、ずっと悲しそうな我慢しているような感じだった。
そうかどうかは分からないけれど、もしそうならそのような目に遭わせたのはお父さんでもあるからだ。
つまりは、愛せるかというよりも、許せるか。
でも……
だからこそ、会いに行くんだ。
自分が変わることで、お母さんが変われるのなら。
過去の記憶が、楽しい記憶になるのなら。
そうだ。
変わるんだ。
お母さんのため。それはつまり自分のため。
過去の自分を脱ぎ捨てて、変わるんだ。
飛んで、未来の自分へと会いに行くんだ!
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