第4話
リオン様のお部屋は私の部屋のゆうにその三倍くらいの広さがあり、五人くらい寝れそうなベッドに、ふかふかのソファ。そしてリオン様がお仕事をなさっている机。
物は決して多くなく、薄いブルーで統一されたお部屋には至る所に金の糸で細やかな刺繍が施されている。
王妃様がちょうど今、国王様とお会いになられているということだったので、私たちは先にリオン様のお部屋でお茶菓子を頂きつつ、待つことに。
二人きりの部屋はなんとも落ち着かない。こういう時、感情を表情に出さないことだけに私は必死になっている。
だって顔に出してしまえば、すぐにいろいろバレてしまうもの。リオン様が好きなこととか、リオン様が好きなこととか。
「今日はディアナの好きな、ナッツのたくさん入ったクッキーがあると言っていたよ」
「どうしたんだい? なんか変な顔して。可愛い顔が台無しだよ」
「い、いえなにもですわ」
不意打ちで可愛いとかさらっと言ってしまうあたりが、なんともね。嬉しいけど、ダメ。リオン様って、私の気持ちも全部知っていそうで嫌だわ。
そう話しているうちに、侍女がお茶とお菓子を運んで来た。
侍女はそれぞれお付きの方が決められていて、それに合わせて衣装の色などが違います。リオン付きのメイドはこの部屋に合わせた薄いブルーの衣装。
王宮では誰が誰の侍女なのかということが分かるようになっている。
ああ、私の大好きなクッキーと紅茶。
「美味しそうだね、ディアナ」
「はい、リオン様」
確かにリオン様が言うように、目の前に並べられていくお菓子やお茶菓子はとても美味しそう。何度か食べたことがあるので、よく知っていた。そして必ず私が来た時に出してくれる紅茶も、いつも同じ物。
二人だけの静かなお茶会。ああ、この時間は確かに手放したくないほど好き。同じ時間を何も考えずに過ごすことが出来るのなら……。
ただ私たちの身分がそれを許しはしない。リオン様が次期国王ではなかったらだなんて、あり得もしないことを考えても意味がないことは私が一番よく知っているから。
だからこそ胸が苦しくなる。ああ、嫌だわ、本当に。でも今はそれよりも気になることが一つ。
「……」
「ディアナ、考えごとかい?」
んー、なんですかねぇ。所作がとても美しいのに、私はこの侍女さんから目が離せません。真新しい制服の匂いに、それ以上に気になるのは、今出されたものたち。
侍女は給仕を終えると、部屋の隅に下がりました。私はその姿を最後まで確認してから、お茶菓子に手を伸ばす。
手に取ったクッキーを二つに割ると、サクッという音と共にナッツが一つ零れ落ちた。
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