第60話

~アルマ・セルティ公爵令嬢視点~


認めない!絶対に認めないわ!


あの誰にも触れることを許さなかったルフラン殿下が自分から女性と手を繋ぐなんて。


それにウォルシュ嬢を見る優しい目。

あんなのルフラン殿下らしくございませんわ。

ウォルシュ嬢に騙されていますのよ。


確かに綺麗な令嬢でしたが、冷たそうな顔をしていましたわ。

きっと性格が顔に現れていますのよ。

そんな方がルフラン殿下の隣にいるだなんて、思い出すのも腹立たしいですわ。



わたくしですら、ルフラン殿下の隣の席に座ることを許されませんでしたのに、何故ウォルシュ嬢が当たり前のように座っていますの?おかしいですわ。


昨日も今日もランチまでご一緒するだなんて!

ルフラン殿下に無理矢理何か食べさせていましたわ。

なんて下品な方なのかしら。


ウォルシュ嬢の何もかもが許せません。


昨日の一件から、わたくしの取り巻き達も居なくなってしまいましたし、お父様にも怒られましたのよ。

そのお父様がわたくしが一番王妃に相応しいと仰っていましたのに。

こんなのおかしいですわ。

何故みんながわたくしの邪魔をしますの?


ルフラン殿下の妻になるのは、わたくし以外有り得ないことですのに。


そう、この優秀で美しいわたくしこそが次期王妃に相応しいの。


その邪魔をするのならば、ウォルシュ嬢など消えてしまえばよろしいのよ。





~ガルザーク視点~



ルフラン殿下はウォルシュ嬢にメロメロだな。


片時もウォルシュ嬢から離れようとしない。


一応俺も隣りにいるのだが、ウォルシュ嬢も気づいていないようだ。

俺はルフラン殿下よりも背も高いし、体格もいいはずなんだがな。

そんなに俺は存在感がないのか?


あの人を寄せつけない鋭い目も、ウォルシュ嬢限定で優しくなる。

ああ、アラン殿やビジョップ嬢にも鋭い目は向けないな。


ルフラン殿下の留学先は隣国のアトラニア王国だったと父上から聞いた。

そこで知り合って仲良くなったんだな。



運のいい事に、今日はウォルシュ嬢の手料理まで食べることが出来た。

進められた時のウォルシュ嬢の笑顔に俺もゾルティー殿下の側近候補の2人も頷くことしか出来なかった。

ウォルシュ嬢はやはり女神だったんだな。


令嬢の手料理なんて初めてだったが、本当に美味かったな。


ウォルシュ嬢に甘えて食べさせてもらっているルフラン殿下。

ここまで気の抜けたルフラン殿下も初めてだな。

今までなら、誰も話しかけるなオーラが凄かったのにな。

余程ウォルシュ嬢が好きなんだな。


気を許せる人がルフラン殿下にいることが知れて安心した。


ゾルティー殿下の側近候補の2人が次の休日にウォルシュ家に行くことを許されたのを見て俺も便乗した。

これだけ美味い手料理なんだ。

バーベキューなるものも食べてみたい。


ルフラン殿下とウォルシュ嬢を見ていると、俺がウォルシュ嬢に抱いていた恋心など、子供の憧れのようなものだったと今なら分かる。

あの時の俺は本当に調子に乗ったバカだったな。

セルティ嬢に近い物があったかもしれない。


あのままだと、最悪犯罪者になっていたかもしれない。

気づけてよかった。

もう、これ以上両親に迷惑はかけたくない。


それにしても、ルフラン殿下の独占欲・・・

隠そうともしないんだな。

それとも無意識なのか?

側近候補の2人も呆れているようだしな。


ゾルティー殿下の言っていた『ラン』も気になるな。

どんな人物なんだろうか?

わざわざゾルティー殿下が会いに行く人なんて・・・恋人か?それとも片思いの相手か?

それも次の休日には分かるか。


それにしてもウォルシュ嬢もビジョップ嬢も高位の貴族なのに傲慢なところがないんだな。

俺の知っている令嬢たちと全然違う。


2人とも上品で礼儀作法も完璧なのに、こんなに気さくなんだ。

ほかの生徒たちが知ったら一躍人気者になって、殿下が独り占め出来なくなるもんな。

ルフラン殿下が隠したがるわけだ。


いつか俺も気の許せる友人と認めてもらえればいいな。

あの中で俺も同じ会話に加わりたい。


きっと楽しい学園生活になる。




~マイ・ツルギ視点~





クラスの女たちが騒いでいるのを聞いた。


本当だったんだ。

アランに婚約者がいるって。



ふふふ、それならエリザベートを悪役令嬢にしなくても、レイチェルを悪役令嬢に仕立てて婚約破棄させればいいわ。


そして私がアランを手に入れるの。


アランも攻略対象者だもの、私を好きになるわ。


最後にはエリザベートも断罪するのは決定だけど、まずはレイチェルからね。


でも今は、騒ぎを起こした後だからもう少し大人しくしているわ。

せっかく一年間静かにしていたのに、アルマのせいで失敗したもの。


その間にレイチェルの情報を集めて弱みを握ってやるわ。

今だけはアランの隣にいることを許してあげる。



それにしても本当にアランは素敵だったわ。

ルフランよりも王子様らしくて、アランこそ私に相応しいわよね。


アランの行動パターンも調べなくちゃ!

偶然を装う手もあるわ。


同じ学園にいるんだもの、これからはいつでもアランに会えるわ。


ここからが、ヒロインの私が主役になるゲームが始まるのね。

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