この日々にいつか名前をつけよう、それに意味があるか知らないけれど

香坂 壱霧

第1話

 それは、払い落としてきたはずだった。ずっと昔……いや、そんなに昔じゃなかったかもしれない。

 それに気付いていないと刷り込み続け、スルースキルを手に入れた──と思い込んでいただけだった。

 残念なことに、僕はまだ弱いらしい。

 はは……。力なく僕は失笑する。

 強くなった──と思っていた僕は、どこにもいなかった。

 最初から居なかった。勘違いだった。

 僕はまた、諦めなきゃいけないのか。胃酸が食道や喉をいためつけて、身体の痛みで夜を過ごして、薬で誤魔化された残り滓の痛みが僕の心身を麻痺させて?

 そうして僕は、一般的な社会生活に終止符を打つのだろうか。


 いろんなことがやり過ごせなくなって、考えすぎだと宥めすかしても、もうなかったことにはできないんだろう。


 そうだよ、認めよう。認めて受け容れて、少しラクになったんじゃないか。でも、そのやり方を忘れてしまったようだ。置き忘れたんだろう。

 どこだろうかと振り返る気力もない。そうだ。だからこうなったんだ。

 理解していても、どうにもならない。


 息苦しさ、吐き気、悪寒。身体的にあらわれるのは、まだマシなのだろう。二度とこうならないように気を張り詰めたのだとしても。

 どうしたら良いのかわからず、僕は深い夜をまた迎える。

 でも一つだけ、昔と違うことはある。朝は必ずくることを、僕は知っているということ。


〈了〉



エッセイ風掌編

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この日々にいつか名前をつけよう、それに意味があるか知らないけれど 香坂 壱霧 @kohsaka_ichimu

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