第60話 出会ウ

「あの……ツナカユリコさんですか?」


 待ち合わせ場所に指定されていた人気のない夜の公園で、ポツンと佇んでいる女性に声を掛ける。


「……はい」


「あ、ああ、良かった。えっと……初めまして。マッカリーです」


「こちらこそ、初めまして」


「えっと……」


「……何か?」


「え?あ、いや、その……僕、ネットで知り合った人とリアルで会うの、初めてで……。ちょっと、緊張してるんです、ハハ……」


「私もです。でも、マッカリーさんが想像通りの素敵な方で良かったです」


「え?い、いやあ、そんなことありませんよ。ほんと、どうしようもないオタクなんで……。つ、ツナカユリコさんだって、想像通りというか、素敵ですね」


「そうですか?」


「ええ。ゲーム中の戦闘時の立ち振る舞いとか、チャットの受け答えとか、なんだかミステリアスな人だなあって思ってたんですけど、リアルでもそれっぽいというか……」


「それっぽい、というと?」


「え、えっと……それって、喪服ですよね?あと、その顔に掛けてるのって……」


「これは、モーニングベールです。すいません。こういうのを身に着けるのが趣味でして」


「あ、ああ……」


「顔を、ご覧になりたいのですか?」


「え?いや、そんなことは……」


「よろしいですよ。お取りになってください」


「あ、あの――」


「ご不安でしょう?せっかく対面しているのに、どういう顔をしているのか分からないというのは。さあ、どうぞ。お取りになってください」


「は……はい」


 恐る恐る、顔に掛かっている漆黒のベールを取った。

 そこには―――。


「う、うわああっ!」


 一昔前のゲームグラフィックのような、画素の荒い不気味な顔があった。所々に、ガリガリとノイズが走っている。


「マッカリーさんも、こういう風になりませんか?」


 ノイズ混じりの顔がグニャッと歪んだ瞬間、僕の意識は誤ってモニターの電源を落としてしまった時のように、ブツンと途切れた。

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