第9話 呼バレル

「サトウさぁん、サトウタカユキさぁん」


「サトウさぁん、サトウタカユキさぁん」


「サトウさぁん、サトウタカユキさぁん」


 待合室のアナウンスのような声が響く中、部屋の真ん中で独り毛布を被り、ガタガタと膝を抱える。

 俺は一体、あの廃病院から何を連れて来てしまったんだ……。


「サトウさぁん、サトウタカユキさぁん」


「サトウさぁん、サトウタカユキさぁん」


 絶えず、声は部屋の中で響き続ける。


「サトウさぁん、サトウタカユキさぁん」


「サトウさぁん、サトウタカユキさぁん」


「何なんだっ……何だっていうんだよっ……!」


「サトウさぁん、サトウタカユキさぁん」


「俺は、サトウタカユキじゃないのにっ……!」


「……分かってますよぉ、スズキカズヤさぁん」


「え……?」


 俺の本名——と、その時、毛布を被っていたはずなのに、後ろから首を抱きすくめられた。

 プンと、屍臭が鼻を刺す。

 

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