第146話 作戦会議と言うなの飲み会

 私が報告した新ダンジョンについて、作戦会議が行われると言うので高ランク冒険者ばかりを集めて、宴会場が貸し切られました。


 上座には、ギルドマスター、長さん、元さんの年長組で、A級冒険者の実力を持つお三方が座っておられます。

 司会進行は、ユイさん。アカバ君チームとモモさんチームも席についています。

 ハルカさんは私の対面に座っています。私の横にはシズカさんが席につきました。


「まずは、皆様お集まり頂きありがとございます。ギルドが誇る高ランク冒険者、及び他のギルドから助っ人として、アカバチーム。モモチームにも参加して頂きありがとうございます。詳細については、各ギルドへ報告もよろしくお願いします」


 他の冒険者ギルドにはメッセージとして伝達がされたようです。

 ただ、詳しい話を聞くために近くのギルドに属している高ランクの二チームに声が掛かったようです。


 ユイさんのハキハキした声で進められるいく会議に、皆さんが真剣な顔で取り組んでいます。私が報告した内容を話し終えると配置などの話になり、警戒を促しました。


「それでは、決起集会も兼ねて宴会をしていこうと思います。皆さんグラスをお持ちください。長さんお願いします」

「はいはい。最年長の長です。長い話は嫌われるので手短に。命は大切です。皆さん、無理をすることなく危険だと思ったら避難するようにお願いしますね。今回は高ランクダンジョンの調査です。何が起きるのかわかりません。自己防衛の精神が一番大切です。それでは乾杯」

「「「「「乾杯!!!」」」」」


 やっぱり長さんの言葉は重みがありますね。

 乾杯の挨拶がギルドマスターではないのが不思議ですが、ギルドマスターは話すのが苦手ですからね。仕方ありません。


「ヒデオさんはビールですね」

「あっ、はい。ありがとうございます」


 横に座るシズカさんがお酌してくれます。

 ハルカさんの横には、ユイさんが説明が終わって戻ってこられました。

 さすがは会社員のユイさんです。

 長さんと元さんにお酌をしてから席に着かれました。私の正面にハルカさんとユイさんが座っておられるので、目の保養になりますね。


「ヒデオさん」

「あっ、はい!」


 シズカさんの声に、私はなぜか身の危険を感じて視線をシズカさんの方へ向けました。なぜでしょうか? 白鬼乙女さんが後ろに立った時と同じ気配をシズカさんから感じます。

 シズカさんはヒーラーですが、ここまでの実力を付けられていたのですね。


「今日の私はどうですか?」


 今日のシズカさんと言われて、服装からお顔をマジマジと拝見すれば、二つの点が気になりました。

 暖かくなってきたためか、室内だからなのか服装が春らしい明るい色合いの服装になられました。

 それにお顔は元々お綺麗でしたが、本日はいつも以上に輝いて見えます。


「えっと、服装が春らしくなられました」

「ふふ、気づいてくれましたか? 新作で可愛いなって思って買ったんです。ですが服だけですか?」

「いつもお綺麗ですが、いつも以上にお綺麗に見えます。なぜでしょうか?キラキラしています」


 私が思ったことを口にすると、シズカさんから感じていたプレッシャーがなくなりました。


「そうですか。そうですか。いつも綺麗ですか。今日はいつも以上に綺麗ですか。ふふ、ありがとうござます。今日は大人コーデにしてみたので、いつもと違うなって自分でも思っていたんです。不安だったんですけど。褒めてもらえたので嬉しいです」


 シズカさんはいつも直球で、私の心はフワフワしてしまいます。


「やぁやぁ、阿部君。また君は大変なことをしたね」


 シズカさんにフワフワしていると、今度は反対隣に長さんが座る。


「長さん。今回もお世話になります!」

「ああ。全く年寄りを働かせるんじゃないよ」

「はは、長さんが年寄りなら、私もですよ。最近、またレベルが上がって若返ったのでは?」

「わかるかい? レベルが20に達してね。全盛期よりも体が軽いんだよ」

「レベル20!凄いですね」

「ガハハハ、君と違って私は専業でやっているからね。週の半分はダンジョンの中だよ。経験値だけでなく魔力も体に溜まるのだろう」


 半分以上はダンジョンの中で過ごす長さんは確かに私よりもレベルが上がりやすいですね。


「まぁ、君のようにダンジョンに入るたびに何かしでかすやつも珍しいがね。私も何度かスリープシープのダンジョンには入ったことがあるが、新ダンジョンがあるなど気づきもしなかったよ」

「案外、皆さん囲まれた場所にしか行かないのかもしれませんね」

「くくく、ソロで無事に帰ってくる君も異常だと思うがね。スリープシープの群れに連れ去られたと言う報告には笑ったよ。それで無事なのだからね」


 長さんと酌み交わすお酒はとても楽しい。

 コップが空になるとシズカさんが二人のコップにお酒を注いでくれて、なんだか楽しい飲み会です。

 アカバ君たち三人が踊って歌い。モモさんたちが特技を披露する。皆さん芸が多彩ですね。


 ハルカさんの忍術を使った芸は、とても綺麗で幻想的でした。

 元さんとギルドマスターは、飲み比べと食べ比べをされておりました。


 作戦会議の様相は、どこへやら。

 皆さんで宴会するのは楽しいですね。


 ユウ君とコウガミさんは今回の作戦に参加しないのが、残念なほどです。


「楽しいですね」

「はい。皆さんお元気です」


 シズカさんも楽しんでいるようでよかったです。

 私、結構宴会が好きなのかもしれません。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る