第129話 カオリさんのお部屋
カオリさんに作って頂いたお弁当を食べ終えました。
いつも美味しく頂いているんですが、青空の下で頂くって一段と美味しく感じますね。
化粧の特訓をすると言われて、どこにいくのかと思ったら、私は意外な場所へと案内されました。人生で初めて、女性のお家にお邪魔しております。
「どうぞ、あまり綺麗ではありませんが」
促されて家の中に入っていくと、とてもいい匂いがします!!!
これが女性のお部屋なのですね!
白を基調とした部屋の中は、とても清潔で綺麗に片付けがされています。
いつも、カオリさんは家庭的だと思っていましたが、家の中までとても綺麗で、でも台所には調味料などがたくさん置かれていてカオリさんらしいです。
「そんなにキョロキョロしないでください。恥ずかしいです」
「あっ!すみません!」
「いえ」
少し恥ずかしそうにしているカオリさんに促されて、リビングの座布団に腰を下ろした。
「それでは化粧をしていきますね」
可愛いテーブルの上には、大きな鏡が置かれて顔全体が見えています。
「はい。よろしくお願いします!カオリ先生!」
「ふふ。厳しくいきますよ!」
私は、カオリさんに手解きを受けて付け睫、眉描きを伝授されます。
さらに、洗顔から化粧水、乳液、最後に保湿クリームまでの流れを終えるまでに二時間ほどの時間がかかりました。
「ふぅ〜ちょっと疲れてきましたね。休憩にしましょう。お茶を淹れてきますね」
いつの間にすぎていた時間に、化粧の奥深さを知りました。
ちゃんと覚えようと思って頑張っているので書き留めてもいます。
全部を一回で覚えるのは難しいですが、毎日続けていれば理解できるようになりますよね?
「どうぞ」
「ありがとうございます」
鏡の中には、少し前の私がいます。
眉が描かれ、睫毛が普通に存在しています。
「大変だと思いますが、頑張りましょうね」
「色々とありがとうございました!カオリさんのおかげで、普通の生活が送れます」
「どういたしまして、でもそこまで重く受け止めないでください。私が勝手にしてあげたくてしているので」
カオリさんは本当にいい人ですね。
私は最高の同僚を得たことに感謝したいです。
髪は失いましたが、神はいました。
「せっかくお化粧したので、休憩したらご飯でも食べにいきましょう」
「良いのですか?」
「せっかくお化粧したなら出かけないとダメです」
「はい!」
私はカオリさんの配慮に感謝して立ち上がろうとしましたが、二時間もの間、お化粧をするために正座をしていたので、足が痺れて……
「あっ!」
「えっ?」
私は足をもつれさせてカオリさんに覆い被さるように倒れ込んでしまいました。
「すっすみません!!!すぐに」
私はすぐに立ちあがろうとするのですが、足が痺れて上手く力が入りません。
そんな私を見かねて、カオリさんが背中に腕を回してくれます。
「ヒデオさん。大丈夫ですから落ち着いてください」
「でも!」
「いいですから」
そう言って、優しく私はカオリさんに抱きしめられました?痺れが治るまで、私はカオリさんの上に抱きしめられて過ごしました。
カオリさんはすごく良い匂いがして、私は女性にここまで長く密着されたことがなくて、ドキドキが止まりません。
「ヒデオさん」
「ヒャい!」
私は何をしているのでしょうか?つい、カオリさんの良い香りに包まれてクンカクンカとしてしまいました。
「ふふ、そんなに慌てないでください。大丈夫ですから」
「あっはい」
「私は別にいいですよ」
「えっ?」
「今、私たちは二人きりで、男女が二人きりですることをしても」
カオリさんの顔は見えません。
男女が二人きりですること???なんでしょうか???
「ヒデオさんが奥手なのは知っています。だから、今日は私が」
えっ?そう言って、カオリさんが私の首筋にキスをしました。
「ふぇ!」
「ふふ、くすぐたかったですか?」
なぜ、キスをするのですか?私とカオリさんは会社の同僚で、その前に男女で、大人で、今二人きりで!!!!私は一つの答えを出したような気がします。
「カオリさん!」
「はい」
私は大きな声にならないように配慮して、痺れが取れた足を何とか踏ん張りカオリさんから距離をとりました。
私も大人です。意味はわかりました。ですが、こういうことはやっぱり……
「カオリさんはとても美しい女性です」
「ありがとうございます」
「こういうことをされてしまうと、男はすぐにその気になってしまいます」
「はい。私はヒデオさんを受け入れました」
「それは……ありがとうございます」
自分でも、顔が赤くなっている気がします。
シズカさんの時にも同じようになってしまったので、私は改めて考えなければいけません。
「わっ、私はちゃんと付き合いしてからでなければ、こういう行為はしてはいけないと思っています」
「ヒデオさんは、私では嫌ですか?」
「それは絶対にありません!!!」
あっ!声が大きくなってしまいました。
「ふふ、ありがとうございます。そうですね。少し私も急ぎすぎたのかもしれません。ヒデオさんの周りには綺麗な女性が多いようなので」
ユイさんのことを言っているのでしょうか?飲み屋さんでお会いしましたので……
「ユイさんは、仕事の取引先のようなもので」
「言い訳はダメです。二人でご飯に行っていましたからね」
「えっ?」
「う〜ん。私は少しだけヒデオさんに対して誤解をしていました」
「誤解?」
「ええ、大人の男性だと思っていましたが、あまりこちらの方は経験がないのかなって?」
「はっ恥ずかしながら、今まで女性とお付き合いしたことがありません」
童貞であることを、女性に告白するのは2度目です。
「大人のお店も行ったことは?」
「ありません」
「そうですか、ふふ。じゃあ今日はここまでにしておきましょう」
妖艶な笑みを浮かべたカオリさんが私の唇に優しく唇を重ねました。
「!!!」
「お付き合いは、ヒデオさんの言葉でお願いします。良いですね?」
上目使いで念押しされて、私は首を縦に何度も振りました。
これは!私がお願いすれば、カオリさんは付き合ってくれるということでしょうか???
そのあとは、なんだか呆然として覚えていません。
家に帰り着いた私は、ミズモチさんを抱きしめて眠りに着くまで夢現でした。
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