第107話 節分のお供え物
週末はカオリさんと映画を見に行くことになりましたので、ダンジョンに行くことができません。
「ミズモチさん。今週は忙しいので、ご近所ダンジョンさんにしか行けません。よろしいですか?」
【進化ミズモチさん】『イイヨ〜』
ミズモチさんに、週末はカオリさんとのお出かけをお伝えして、本日はご近所ダンジョンさんへ向かいます。
雪道をスーパーカブさんでゆっくりと走行して、ご近所ダンジョンさんへやってきました。
この間は、白鬼乙女さんが突然登場して驚きました。
私の推測になりますが、白鬼乙女さんはご近所ダンジョンさんのボスさんなのではないかと思います。
この間は、着替えを覗いてしまい失礼をしました。
前回は何か、白鬼乙女さんにとって大切な物を私がドロップしてしまったので、交換に来てくれたのでしょうか?律儀な方です。
ミズモチさんと二人で毎回お世話になっているので、本日は白金さんを頂いたお礼の品々をお持ちしました。
「ミズモチさん。本日は灰色魔物さんが登場するかもしれません。ですが、お供え物をしたいので、ボス部屋の前までは行っていただけますか?」
【進化ミズモチさん】『イイヨ〜』
警戒をしながらも、私は袋に入れた品々をボス部屋の扉前に並べていきます。
「本日は節分です。鬼さんは豆で追い払うという厄除け?の習わしです。ですが、実際に鬼さんがいるのであれば厄除けをするよりも、仲良くできる方がいいですよね?白鬼乙女さんはお綺麗な方でした。争わない方向でどうにかお願いします」
一升瓶に入った大吟醸の日本酒。
恵方巻き×10本
福豆
を差し入れです。
本来は、けんちん汁か、くじらの汁物も一緒にお供えしたかったのですが……汁物は冷めると美味しくないかと思いました。
私の地元である大阪では魔除けとしてイワシを食べます。鬼が冬鰯の匂いを嫌うので家に入って来ないと言うからです。
家に帰っては鰯を食べようと思います。
白鬼乙女さんがイワシの匂いが嫌いだったら申し訳ないので本日は持参しませんでした。
恵方巻きは灰色ゴブリンさんたちが食べるかと思って多めに持ってきました。
魔物も時間が経てば、再度生まれてくるというので、私たちが倒しても復活しているのかな?と思います。
「この間は白金さんを頂きありがとうございます。凄く強い武器なので、スノーベアーさんを一撃で倒すことができました。まだまだ私の魔力では使い切ることはできません。今後の課題として私自身が強くなれた気がするので本当にありがとうございます。いつもお世話になっているお礼です。節分ですが、白鬼乙女さんにも福が訪れますように」
さて、お供え物もしました。
あとは無事に帰れれば問題ありませんが、どうやら本日は危機察知さんの反応もありませんね。
「ふぅ〜無事に外へ出られました。最近は来るたびに灰色ゴブリンさんが出現していたので結構警戒していたのです。どうやら本日の白鬼乙女さんは機嫌が良いようです」
【進化ミズモチさん】『ヒデ〜オナカいっぱ〜い』
ミズモチさんも魔力が満タンになった様子で満足そうです。
「よかったですね。それでは帰るとしましょう」
私たちが帰ろうとすると、ふと月明かりに影が差し込みました。
「えっ?」
私が見上げると白鬼乙女さんが巫女さん衣装で高い位置から、私たちを見下ろして居ました。
「白鬼乙女さん?」
私が呼びかけると、白鬼乙女さんは恵方巻きを囓っておられます。
「食べてくださったんですね」
一本を食べ終えたところで姿を消してしまった白鬼乙女さん。わざわざ食べる姿を見せに来てくれたのでしょうか?
私はもう一度ダンジョンへ一礼して、ご近所ダンジョンさん後にしました。
【進化ミズモチさん】『ゴハン~ゴハン~』
魔力とご飯は別腹なんですね。
「そうですね。私たちも帰って恵方巻きを食べましょう。ミズモチさんは肉と魚はどちらが好きですか?」
【進化ミズモチさん】『どっちも~いっぱい食べる~』
「ふふ、恵方巻きを食べるときは無言で食べるんですよ。恵方、つまりは神様がいる方向だけを見て食べるんです。今年は『南南東』に神様がおられるそうです」
【進化ミズモチさん】『カ~ミ~サ~マ~』
「魔物さんたちが現実におりますので、神様もいるかもしれませんね」
スーパーカブさんに乗って自宅に帰りました。
私とミズモチさんは、スマホで調べた南南東を向いて神様に今後の恵方を願って恵方巻きを食べました。
食べるルール
1、恵方を向いて食べる。
2、黙って願いながら食べる。
3、一気に食べる
「ふぅ~大きいので食べるのも大変ですね。ミズモチさん!?一気に食べ過ぎです!!!買ってきた恵方巻き全て消化してますよ!!!」
さすがはミズモチさんです。
大きくなって、恵方巻きを全て食べてしまいました。
今頃、白鬼乙女さんも灰色ゴブリンさんたちと宴会をしてくれていたら嬉しいですね。
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