第24話 ゴブリンの住処 2

 湊さんと巨大ハンバーガーを食べ終え、口直しのコーヒーを楽しんでおります。

 目の前では、パンケーキに生クリームを付けている湊さんがおられ、先ほどあれほど大きなハンバーガーを食べたのに、甘い物は別腹と言うことでしょうか?凄い食欲ですね。


「ご馳走様でした」


 三枚のフワフワパンケーキを食べ終えた湊さんは満足そうな顔をしておられます。


「こんなに食べたの高校以来!明日は絶対ダイエットしなきゃ!」


 まぁあれだけ食べましたからね。女子は、その辺の節制をしっかりしていて凄いと思います。


「阿部さん」

「あっ、はい」

「お願いがあるんですが、いいですか?」


 えっ?まだ食べるんですか?ハンバーガーもパンケーキも安いので問題ありませんが、まだ食べれるんですか?フードファイターなのでしょうか?ソネさん?


「なんでしょうか?」

「臨時でいいので、うちのパーティーと行動を共にしてくれませんか?」

「えっ?臨時パーティー?」

「はい。うちって、ソードマンのユウ君とマジシャンのサエちゃん、プリーストの私で三人組なんですけど。前衛がユウ君しかいないんです。今は私もバットで戦っているんですが、三人ではなかなか厳しくて」


 事情はわかりますが、どうして私なのでしょうか?私強くありませんよ。


「確かに前衛は出来ると思いますが、私強くはありませんよ?」

「いえいえ、この間助けてもらったときに見させてもらった戦いは凄かったです。それに阿部さんは年上だし、見た目もワイルドだから……ユウ君も言うことを聞いてくれそうな気がするんです」


 あ~スキンヘッドですもんね。これ剃ってるんです。ハゲではないですよ!


「阿部さんがどのように冒険をするのか見せてもらうだけでもいいです。私を助けると思って!」


 人に頼まれると断るの苦手なのです。

 しかも、可愛い年下の女子にお願いされると……ハァ~断れませんよね。


「わかりました。何が出来るのかわかりませんが、ご協力させて頂きます。ただ、臨時パーティーという形ではなく、湊さんのパーティーへ同行するという形でお願いします」

「どうしてですか?」

「配分の加減です。もめ事ってだいたいが、アイテムやお金に関することになってしまうと思うんです。ですから、私は同行者として、アイテムのほとんどはパーティーの皆さんで分けてください」

「えっ、それは悪いですよ!」

「もちろん、皆さんがピンチのときは助けます。それに私とミズモチさんが倒して得たドロップに関しては頂きます」


 私の提案に湊さんは考える素振りをする。

 臨時パーティーにして均等に分けた方がいいと思うかも知れないが、どれだけの力量の相手なのかわからず、どちらかがお荷物になったときに、不協和音を生み出す恐れがあります。

 それならば、最初から別々にしておいた方が安心です。


「わかりました。それではそれでお願いします」

「はい。でしたら、来週末にでも」

「よろしくお願いします」


 湊さんのパーティーに参加する約束をして、私たちは別れました。


 誰かと約束するっていいものですね。


「ミズモチさん、来週の予行練習にゴブリンの住処に行きたいのですが、いいですか?」


《ミズモチさんはプルプルしながら、あなたへ話しかけています》


「ありがとうございます!!!ミズモチさんがいるだけで安心できます」


 ミズモチさんの許可を頂いたので、スーパーカブに乗り込んで、私はゴブリンの住処へやってきました。

 本日は購入したばかりの皮の胸当てと黒杖さんを装備しました。


「私も……ストレス発散と行きますか……最近、嬉しいこともありましたが、その分仕事量が地獄なのです。ゴブリンには悪いですが、今日は少し頑張りますかね」


 察知さんが、教えてくれます。右に2匹、左に1匹、中央に6匹。


「ミズモチさん、私たちが向かうのは決まっていますよね」


《ミズモチさんはプルプルしながら、あなたへ話しかけています》


「ええ。中央に行きましょう」


 ミズモチさんから戦いたいという思いが伝わってきます。今でも、戦いは手が震えます。

 ミズモチさんがいなければ絶対にこんなところにも来たくありません。


「強くなることで誰かに頼られることも、ミズモチさんとお話できることも楽しいです。ですから、レベルを上げましょうね」


 6匹のゴブリンにミズモチさんが突っ込んで行きました。レベル3になったミズモチさんは6匹のゴブリンを相手にしても、物怖じしておりません。


「むしろ、圧倒しておりますね。私も負けてはおられませんね。プッシュ!ダウン」


 ミズモチさんがこちらへ倒したゴブリンのトドメとしてダウンを使います。


 二人の連携も随分と安定してきました。

 ミズモチさんは体当たりしてゴブリンを転がせ、こちらへゴブリンを倒してくれるのでトドメをさします。

 その間にミズモチさんは次のゴブリンへ、縦横無尽の活躍をしておられます。


「6匹でも、二人なら対応出来るようになりましたね」


《ミズモチさんはプルプルしながら、あなたへ話しかけています》


「ふふ、そうですね。ミズモチさんに頼らせて頂きます」


 ゴブリンの住処になっている洞窟は頂上付近になるそうです。頂上付近に近づけば近づくほど、ゴブリンが増えて、強さも増していくそうですが、ミズモチさんと今日は行けるところまで行ってみましょう。


 察知さんに引っかかるゴブリンと遭遇しては倒しながら山登りをしていきます。


 レベルこそ上がりませんが、ハイキングをしているようで楽しめる余裕があるのは、精神耐性(小)を獲得したからですかね?恐怖耐性とかにもなってくれているのかな?リュックの中がミズモチさんが入れないほど魔石でいっぱいになってしまいました。


「もうすぐ頂上ですが、一通り山は歩き回れましたね。事前調査はこれぐらいで大丈夫でしょう」


《ミズモチさんはプルプルしながら、あなたへ話しかけています》


「ええ。荷物も重くなってきましたし、今日は美味しい物を買って帰りましょうね」


 少しだけ、ゴブリンの住処がある洞窟を見たくて、岩陰から覗き込むと、ゴブリンにしては大きな身体をした一体が洞窟の門番のようにして立っていました。


「うわ~私よりも大きいゴブリンがいますよ」


 ムキムキマッチョさんです。ボディービル大会に出れば優勝できそうです。


「あれはヤバいですね。あれには近づかないようにしましょう」


 私は確認を終えて、スーパーカブへと戻りました。


 冒険者ギルドで魔石を交換したら、1万円になったので、本日も美味しいお肉を買って帰ることにしました。

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