第8話 初心者講習
ゴブリンと遭遇して一ヶ月が過ぎようとしていた頃……またもダンジョンで人影を見つけました。私も一度目の失敗を学ばない男ではありません。
冒険者さんが誰も来ないダンジョンなのは、この二ヶ月で理解しました。
あれはゴブリンに間違いありません。
「ミズモチさん。戦闘をしたいですか?」
まだ、相手には気づかれていないので逃げることは出来ます。
ですが、ミズモチさんから戦いたいという闘争心が伝わってくるのです。
どうやらミズモチさんは戦闘する気満々なようです。
私も覚悟を決める必要がありそうですね。
「ふぅ~前にも言いましたが、私はケンカをしたことがありません。戦っても足手まといになるでしょう」
プルプルとミズモチさんが「まかせろ」と言っているような気がします。
「わかりました。私も覚悟を決めます。ふぅ~」
大きく息を吐いて戦う気持ちを作ります。
「ミズモチさんが強くなればダンジョンに行かなくても魔力が増えるのでしょうね。そしたら、旅行とかも一緒に行きたいですね。
私はミズモチさんと幸せなスローライフが送れると嬉しいです。そのためにこの戦いが必要だというなら、一緒に強くなりましょう」
私も覚悟を決めてバッドを握り締めました。
「ミズモチさん行きますよ」
金属バットがどれほど役に立つのかわかりませんが、私が今持っている武器はこれしかありません。
足音を出さないようにゆっくりとゴブリンへ近づいて行きます。
近づけば小さな体躯をしたゴブリンの姿がハッキリと見えて、私も決心が付きました。
バットを思いっきり振り抜きました。
ゴブリンの脇腹に私のバットが直撃して「ギャッ!」と悲鳴が上がります。
あまり気持ちの良い感触ではありませんが、やらなければなりません。
「ミズモチさん」
私の先制攻撃が成功したので、ミズモチさんがゴブリンを窒息させます。
「ふぅ~どうやら上手くいったようですね」
二度目なので、気持ち的にはそこまでネガティブになることもありませんでした。
地面には魔石が転がっていて、私はたたき割って魔力を吸収します。
これからもミズモチさんと共に魔物との戦闘を行うことを考えるなら、冒険者ギルドで戦い方やダンジョンについて調べた方がいいかもしれません。
「今回はレベルアップはなかったですね。まぁゴブリン一匹倒しただけですからね」
やってきました二度目の冒険者ギルドです。
日曜日はやっぱり人が多いですね。
「あの、すみません」
「ひっ!あっ、すいません。どうされました?」
スキンヘッドですか?この頭がインフォメーションのお姉さんを怖がらせてしまったのですか?私……人生で始めて「ひっ!」なんて言われましたよ。
……泣いても良いですか?
「あの、新人冒険者なのですが、講習などはされていませんか?」
「新人さんですか?凄くベテランの雰囲気のある方なので驚いてしまいました」
そうですか、やっぱり怖いですか……ハァ~
「新人の講習会は、朝11時と昼の14時に開催しております。予約制なのですが、予約を取られますか?」
「はい。お願いします」
「それでは現在10時30分ですので、11時の部をお取りしておきますね」
「よろしくお願いします」
本日は色々調べ物をするために、ミズモチさんにはお留守番をしてもらっています。
今頃、家で寝ているのでしょうね。ミズモチさんは寝るのも大好きなので……私、講習場を下見する派なので会場の場所もバッチリ覚えました。
ですから、少し時間が出来たのを活かして少しだけ冒険者ギルドを見学することにしました。冒険者ギルドの中には、様々な施設や交流の場が用意されているのですね。
訓練場
ベテラン冒険者による武術講習会
冒険者のギルド勧誘
ギルド用会議室
冒険者銀行
買取所や販売所などのショップ
歩き回っているだけで楽しいです。
「おい、そろそろ時間だぞ」
「待ってよ。ユウ君」
「シズカはトロいのよね」
「ごめんね。サエちゃん」
高校生ぐらいの若者三人が時計を見て走っていきます。
青春ですね。私もそろそろ行かなければいけないようです。
若者達が入っていったのが、私と同じ新人講習会場でした。
どうやら彼らと共に講習を受けるのは、私と数名ですね。
「これで全員だな。ようこそ冒険者ギルドへ」
講師をしてくだされるのは、30代半ばの年下イケメンさんです。
鍛えられた身体をしているようなので、彼も冒険者なのでしょうか?
「今日は初心者のための講習会を行わせてもらう。お前たちは登録して一日か二日だろう」
もう二ヶ月経っています。遅くてすいません。
「冒険者としてのイロハを知らないお前達に先輩冒険者である山田太郎様が教えてやるからありがたく思え!」
うむ、凄く覚えやすい名前で助かりました。
私、人の名前を覚えるのが苦手なのです。
「まずは、冒険者と言えばダンジョンだ。
冒険者になることで一攫千金を狙っている者も多いと思う。だが、ダンジョンはそんな甘いところじゃない。
ダンジョンには魔力が充満していて、魔物たちの住処だ。いつどこから魔物が襲いかかってくるのかわからないぞ」
恐怖を煽る口調は、新人の覚悟を問うために行うのでしょう。
散々、煽って新人さんたちをビビらせた講師の山田さんは、以外にも丁寧に冒険者について講習をしてくれました。
・冒険者とは?
ダンジョンが誕生したことで、魔物が生まれ、魔物を倒すとレベルアップが誰でも出来るようになり、冒険者職業が得られるようになった。
冒険者の職業や能力はステータスで見れるようになる。
ダンジョンが生まれた経緯は不明。
・冒険者の主な仕事は?
ダンジョンに現われる魔物を狩ること。(魔物がダンジョンから出て街に被害を出さないために)
ダンジョンで得られるアイテムの収集をすること。(ダンジョンから得られるアイテムは現代に存在しないレアな物が多く存在するという。ポーションなどは骨折を一瞬で治してしまい。上級ポーションは不治の病を治した実例も存在する)販売すれば1億はするそうです。夢がありますね。
魔物の魔石は、冒険者ギルドで買取りしてくれます。
新人は弱い魔物を狩ってレベルを上げながら、魔石を販売して収入を得ることから始めると良いようです。
・初心者が最初にすることは?
先ほどの魔石を買取り所に持って行き、装備を揃えることが最初に行うことだそうです。
装備……バットだけですね。スーパーカブさんのヘルメットも付けておいた方がいいでしょうか?
同時進行でレベルを上げる。
レベルを上げると冒険者職業に応じた能力が手に入るそうです。
戦士なら、魔力の強い所で身体能力向上できたり、魔法使いなら、魔力のある場所で魔法が使えるそうです。
たまに魔力がなくても使える能力が得られるそうですが、基本的には魔力がないと冒険者能力は意味がないそうです。
まぁ、力をつけて悪い事をする人が出ても困りますからね。その点は安心なのでしょうか?逆にミズモチさんも魔力が必要なので大変です。
・その他
初心者として冒険者の心構え。
危険なお仕事なので、命のやり取りをする覚悟がいると言う事でした。
ダンジョン内での冒険者ルールなど。
他の冒険者の魔物を横取りしてはいけない。
スイッチと呼ばれる魔物を押し付ける行為。
ダンジョン内での、盗難、強盗などの被害報告がでているそうです。
どれも怖いですね。
山田講師には、初心者が知らないことをたくさん教えてもらいました。
冒険者として、当たり前のことですが、知らないと色々問題がありそうな内容だったのでためになりました。
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