第4話 我が国存亡の危機(王弟オルフェウス視点

「は?」


 またバカが何か言っている……。それがこの場にいる多分3名以外の台詞かつ感想だったと思う。


「は!?」


 聡明かつ賢妃と名高い義姉上がそれをお受けになった!? それは叫びに近いだろう。


「はああああ!?」


 他国の王が義姉上を連れて行く!? ふざけるな、わが国を潰すつもりか!? あれよあれよという間に、わが国は滅亡の瀬戸際に立たされてしまった。私は何とかマルグ国王に手を取られ、歩み去ろうとするアイリーン義姉上を廊下で呼び止めることが出来た。


「お、お待ち、お待ちください義姉上!」


 私の叫びに、義姉上は足を止め、振り返って下さった。それでもその表情は私を見るなり暗く沈んでゆく……絶望が私の頭上から降り注ぎ、埋め立てられていくような心地になる。


「オルフェウス様。今回はどうしようもなさそうでございます。侍女達の身の振り方ですが手紙にしたためてありますので……」

「侍女よりこの国の身の振り方です! あなた無しでこの国は立ち行きません!」


 王弟である私はこの国の全国民の為にアイリーン様を止めなければならない、お願いです、どうかどうかこの国に残られますよう!!


「王弟オルフェウス様。陛下がそのように決められてしまい、こうして正式な書類ができておりますれば、わたくしにはどうすることも出来ません」

「し、しかし!」

「この決定を覆す力を持たぬ者が何をしても無駄なのです。どうぞ、エルファード陛下を盛り立てて行ってくださいませ」


 優雅にお辞儀をする義姉上はこんなときでも完璧だ。しかしその完璧な所作も彼女の努力の上に成り立っていることを私は知っている。

 アイリーン様は私の婚約者と共に学び、励まし合い……確かに元々の才能はある方であったけれど、その上に並々ならぬ努力をなさって得たものなのだ。


 あの馬鹿兄が遊び惚けている間に!


 賢い彼女をもうあの最低な馬鹿から解放してやった方が良いだろう、そう思う反面、わが国のこれからを考えると手放しでそれに賛成する訳にはいかない。


「……私は何故あの兄の弟なんだ……」


 つい私の口からこぼれた言葉を、義姉上は冷たく一瞥するだけだった。


 何故、と嘆く前に何とかしなかったのは貴方でしょう


 その目にはそう色濃く書かれていたが、それを怠ったのもまた事実。


「……今になって報いか……」


 私は元王妃アイリーン様を止める事は出来なかった。なんという、何という事。しかし王弟として、強く上奏しなかったのも私なのである。煙たがられ閑職においやられ……挙句の果てに首を切られたくなくて放置し、今のこの状況を作り出した。


「……」


 それ以上不満を口にすることは出来なかった。ただ、この先どうやって生きて行けばいいか……素早く決断を出す必要があるという事だけは身に染みて分かっていた。


 私も自らの身の振り方を考えねばならない。あの阿呆の尻拭いをし続ける一生など絶対に嫌だ!


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