最終章 9-3
トウタクの
しかし、それは二重に仕掛けられた罠であった。私は迂闊にも彼女の前で幻術を披露し、
裏で糸を引いていたのはサナリエルだろう。私の脳裏にはあの女の
でも、結果的にはこれで良かったのかも知れない。あの女の庇護を受けることは
せめて彼女だけでも無事でいてほしいと願う。
それが気休めに過ぎない
しかし、私の思惑は全て外れ、彼女は導かれるように来てしまった。アグニが空の力に目覚めた彼女を見す見す手放した理由、それは私に最後の仕上げをしろということだろう。
私は彼女にプラナの概念を指南した。元々はアーカーシャに対抗するために会得した知識が、自身の手で完成させることになるとは皮肉でしかなかったが、私はまだ微かな希望を抱いていた。
ひょっとしたら、空の天人になっても人格は残るのかも知れない。あの泣き虫で、間が抜けていて、でも底抜けに明るくて、お人好しの彼女であれば、私たちは争うことなく、互いを許し合うことが出来るのではないだろうか。
しかし、その想いは呆気なく打ち砕かれてしまう。ラーマとシータ、そして
沸き上がる衝動に身を委ね、命の奪い合いの最中で狂乱的に
もう、あの優しかった彼女は……いつも私を温かくさせてくれた、私のことを愛してくれた彼女は、もうすぐいなくなってしまうのだと、そのとき悟った。
なぜ、あなたは生まれたのか。なぜ、あなたは来てしまったのか。なぜ、あなたは目覚めてしまったのか。
あなたと出会わなければ、こんなに苦しむことはなかった。あなたが幸せでいてくれたら、独りきりでも平気だった。あなたがあなたのままでいてくれたら、もう他に何も要らなかったのに!
アーカーシャよ、お姉ちゃんを、お父様を、私から何もかもを消しただけでは飽き足らず、今度は彼女まで奪おうというのか。絶対に許さない。絶対に許せない。絶対に許したくない!
どんな相手だろうと構わない。どんなに強大だろうとも構わない。万難を排し、不可能を奇跡で塗り替え、私の全存在を賭して討ち滅ぼすのだ。
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