最終章 7-1
-7-
王国の建国百周年を記念する式典を後にした私は、ホーリーデイ家の嫡子とともに霊峰タカチホへの
最初の娘から数えて五代目、今回もまた
お姉ちゃんの水の
ひょっとすると、両者の力が打ち消し合って、マイナとの親和性が著しく損なわれているのかも知れない。それに生まれてくるのが女児ばかりなのも腑に落ちない。果たして、いつになったら私の仇は現れるというのだろうか。
思わず顔を
私の身体は相変わらずで、これが不老ではなく不死であることに気付いてからもう随分と経つ。或いは長寿なのかも知れないが、
しかし、いま彼女に苦悶の表情をさせている私は、外見上は同じくらいの歳の
この魔法は対象の外装を形成し、周囲の魔力を吸収しながら成長する生きた幻……謂わば、共生型魔法生物と呼ぶべき代物であった。
私はこれを自らに行使することで、彼女と親愛を育む幼馴染を演じてきた。いや、実際に掛けてみて分かったのだが、この魔法は外見だけでなく内面にまで作用し、術者を含む周囲の記憶や認識すらも改変させてしまう効果を持っていた。
故に、私にとって彼女と過ごした日々もまた真実なのだ。決してお姉ちゃんとの思い出や復讐の炎が消えた訳ではない。しかし、それだけで百年間を維持するには、肉体よりも精神の方が先に限界を迎えていた。
この魔法によって、私はお姉ちゃんの妹である自分と、彼女たちの幼馴染である自分を使い分けてきた。また、成長途上では過去の記憶が混濁することがあるため、一部を継承していると誤魔化してきた。
そして、封禅の儀の度に新たに魔法を掛け直し、彼女たちが子を産み、育てるのを影で見守りながら、機を見て出会いと再会を繰り返してきた。
やはり彼女とはキノ領都ヘグリを出た後、シュンプ平野の手前で別れることとなった。
彼女は
それでも、淋しくないと言ったら嘘になる。もはや恒例ともなった瞬間だが、決して慣れるものではない。きっとこれからもそうであろう。
その後、失意の彼女をキノ家の公子が王都まで送り届けた。それを切っ掛けとして二人の間には愛が芽生え、やがて可愛らしい女児が生まれた。そして、封禅の儀を済ませた私は、またその娘と新しい時を過ごすのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます