それぞれの決着(二)
垂れこめた雲が地表にまで覆いかぶさるような重苦しい空。
歴史が変わろうとしている帝都ミューズ、その裏町。湿気といくつもの視線をまとわりつかせたまま狭い街路を歩く。
フレッソ・カーシュナー、あの男が皇帝に
魔術師の立場が比較的低い帝国とはいえ、処世術に
事態の
「……いる」
北北西に三百歩余り、【
これは魔術を施された何者かが移動していることを意味する。
「フレッソ・カーシュナー!」
入り組んだ街路の向こう、遠ざかる一団に向けて声を放った。
見覚えのある人影が足を止めて振り返る。多数の
「……こんな所まで何をしに来た、ユイ・レックハルト」
「
フレッソの言葉がやや遅れたのは、遠い異国まで自分を追ってきた私に驚いたためだろう。半分は誤解だけれど、わざわざ訂正する必要を感じない。
それよりも嫌悪感が先に立つ、なぜなら全ての
彼女らが背負う大きな袋の中には財産や食料でも入っているのだろうか。
「ふん、しつこい女だ」
水色のワンピースを着た
「……っ!どこから!?」
思わぬ方向から飛来した【
敵の位置を探ろうとするが、
これはフレッソの戦い方が巧みというよりも、私が不利な戦場に飛び込んでしまったのだろう。四方を囲む多数の気配が
「二十年以上も前の話だ。男女二人の魔術師が【
フレッソの声。だがどの方向から聞こえてくるのかわからない、おそらくは【
「事情は知らんが、現世で結ばれないならばと可能性は低くとも来世に賭けようとしたらしい。だがその術は失敗した」
「二人の意識は別の世界に飛び、それと等価の意識がこちらの世界に移された。等しく絶望に
この男は何を言っているのだろう、どうして今頃こんな事を明かすのだろう。等価の意識とは何の事だろうか。
「俺達の事だ。俺とお前の意思はこちらに移され、新たな生を受けた。迷惑な話だ、ようやく終わったと思った苦痛がまた繰り返されたのだからな」
彼もまた辛い幼少期を送ってきたことは知っている。違うのはその後だ、私はこの生を恨まず諦めず、後悔を残さず
「私は迷惑だなんて思ってない。
いくら話しても無駄だ、どこまで行ってもこの男とは分かり合えない。これ以上フレッソの言葉に惑わされまいと地を蹴った、だがその足が地面を離れない。
「しまった!【
今さら無意味な言葉に惑わされまいとした、それ自体が心の乱れだったのだろうか。いつの間にか足首に絡み付いていた闇色の触手を斬り払う私の視界に、四方から殺到する
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