人の姿をした獣(六)
ヤサクの横暴、アルバール小隊の蛮行、それを黙認する中隊長の怠慢。カーマイン砦で行われていた数々の違法行為をこの目で確認した私は、それを報告すべく一度王都に戻った。
それに先立ち『雑用係のアイシャ』は二十日と経たず職を辞することになったのだが、その別れ際には皆が私の幸福を祈ってくれたものだ。
「そうだよあんた、それがいいよ」
「二度とこんな所に来るんじゃないよ」
「まったくさ。遠いところで幸せになるんだよ」
一番仲良くしてくれたエルフリーデは不自由な目に涙を
「私にも優しくしてくれてありがとう。元気でね、またどこかで会いたいな」
彼女達は自分の意思であの砦で働いている。それぞれ事情を抱えているのだろうし、エルフリーデのように他の仕事に
でも、それでも。
そして今。私はエルトリア王国の士官服に身を包み、カーマイン男爵領に戻って来た。
与えられた兵力は、
いきなりエルトリア王国の正規軍に踏み込まれたカーマイン男爵は目を白黒させ、しどろもどろに弁解を始めた。彼の前には
「いや、その、これはだな。そう、
「
エルトリア国王に直属する
ただし爵位というものもやはり
これをまた王都に持ち帰り、後日改めて
「私は
「ふむ、そうか。では私から強く言っておこう」
「いいえ。亜人種は王国法により、国民であると明確に定められています。これは大量殺人であり、
一度言葉を切ったのは、男爵に冷静でいてもらうためだ。今この人を追い詰めるべきではない、むしろ味方につけておくべきだ。
「男爵閣下には、私達がアルバール小隊を捕縛する許可を頂きたい。彼らは王都にて法の裁きを受けることになるでしょう」
これは取引だ。数々の物証を
「……わかった。認めよう」
男爵が了承したことで、アルバール隊の命運は決まった。彼らは切り捨てられたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます