ロード・オブ・ザ・ウルフ―狼の帰還―【後編】


「わおぉぉぉおん!」



 ママァァァン!!

 いまボクが行くよ!


 ボクの鼻が中庭の方へ向かっているママンの真新しい匂いをキャッチする――が、何だ?ママンの匂いに別の何か変な臭いが混ざって……



 ボクは駆ける! 駆ける! 駆ける!

 ただ必死に駆ける! ママンの為に!



 そして中庭についたボクは中庭にある四阿で安楽椅子に腰かけくつろいでいたママンを見つけた。


 ママンもボクに気がつき、その美しい面貌かんばせをボクに向けてにっこりほほ笑んだ。


 あゝ、ママンだ~!


「あら? フェンリルちゃんじゃない」

「わんわん♪」


 あゝ、ママン~会いたかったよぉ。

 ママンのチチぃ! ママンのフトモモぉぉぉ!


「ごめんなさいね。今フェンリルちゃんに構ってあげられないのよ」

 なぬッ!


「今ね大事な時期なのよ」

 だ、大事な時期!


 安楽椅子に座るママンの顔から視線を下げていくと……


 まず、その大きく膨れ上がった……おっぱい――グレィィィットォ!

 感動さえ覚える神秘の霊峰! サイコーだよママン!


 更に視線を下げていくと綺麗なラインのアンダーバストが――ブラヴォォォ!!

 もう、胸が震えて涙が止まりません! 素晴らしいよママン!!


 そして、ボクの視線は更に下がりお腹が――


「パープルちゃんがおめでたなのよ」


 ――膨らんだ犬がママンの膝の上にッ!!!


 な、な、な、な……


「もうすぐ産まれるのよ♪」

「ふっふっふっ……今のママはパープルちゃんに夢中なのだ」

「私達が王都に居る間にママが寂しくないようにと飼い始めたんだって――」


 な、な、な、な……


「――これ全部」

「わんわん!」

「きゃんきゃん」

「くぅ~ん…くぅ~ん…」

「ばぅばぅ!」

「わおぉぉぉん!」



 なんじゃぁ~こりゃぁぁぁあ!!!



 よく見れば中庭には小型から大型まで大きさ取り取り、色取り取りの数えきれないほどの犬畜生どもが占拠していた。


「仲間が増えて良かったなフェンリル」


 啞然としていたボクにパパンがニヤニヤしながら近づいてきた。


「ママや家人達が寂しがっていてね……」


 な・ん・だ・とぉぉぉ!!!


 ばッ!と周りを見れば、Eカップ茶髪美侍女のミレリーちゃんが子犬を頬擦りし、Gカップシルバーブロンドメイドのケイトちゃんが大型犬に抱き着いて……


「1人に1匹可愛いワンちゃんさ……可愛いは数だよフェンリル」

 なんだとぉぉぉ!!!


 辺り一面、ボクの美侍女と可愛いメイドちゃん達がそれぞれ犬の世話をしている。


「貴様1匹では全員の相手は無理だったが、このように数を集めれば皆の満足度が高まるのだ!」

 くッ! 確かに……しかも様々な犬種を揃えることで、それぞれの好みに合わせられる。これはボクも脱帽の見事な戦略!


「今の時代は一匹狼ソロアイドルよりも46匹わんちゃんグループアイドルなんだよ。この屋敷に、もう貴様の居場所はないッ!!!」

 パパン! 謀ったなパパンッ!!


 だ、だけど、どうせ軟弱なこいつらはご主人様の圧力プレッシャーに負けて逃げ去るに決まっている!

「バカめッ! 猫とは違うのだよ猫とは!!」


 なッ! ボクの声が聞こえるてるのか!?

「貴様の考える事などお見通しだ! 犬は群れる習性のある動物、猫のようにカレリンを見ても逃げず、寧ろカレリンの大きな力を認めて安心して服従するのだ」


 ぐぞぉぉぉぉぉお!!!

「うわぁはっはっはっ! 貴様の言葉は分からずとも悔しがっている事は分かるぞ!」


 ボクとパパンはお互い相手を射殺さんばかりの激しい視線をバチバチとぶつけ合った。


「もう! パパもフェンリルも下らないことで争わないの」

 下らないことだってぇ!

「何を言うんだカレリン!」

 オスにとってこれほど重要なことはないよ!


「男なら、危険をかえりみず……」

 死ぬと分かっていても行動しなくてはならない時がある!


「男には負けると分かっていても……」

 戦わなくてはならない時があるんだ!


「男は信念を持って戦い続けてきた!その信念…それは……」

 この世には命をかけて戦うに足る素晴らしいものがあるんです!


「何だかんだ言っても2人ともけっこう仲が良いわよね」


 ボクとパパンを見るご主人様の目は完全に呆れていた。


「ふん! 貴様がどんなに足掻あがいたところで全ては無駄無駄無駄ッ!」


 くッ! 悔しいけど確かにパパンの言う通り。

 この現状を打開する術をボクは持たない。


「うわぁはっはっはっ! 悔しいのぉ悔しいのぉ」

「もう! パパ虐めすぎ! ほらフェンリルいらっしゃい」


 うわぁぁぁぁぁん!


 ボクは手を広げて迎えてくれたご主人様の大きな胸パイオツに飛び込み、えっぐえっぐと泣きながらしがみついた。


「そんなにスンスン泣かないの。フェンリルには私がいるでしょ?」


 よしよしと柔らかくてボリューミーなボインがボクの悲しみに暮れた心に温もりをくれる。ここのところ、ご主人様はボクに優しく甘やかしてくれる。



 うっうっうっ……ご主人様……ええ乳や〜。



「クックック……この負け犬めがッ」


 ご主人様の乳を堪能していたら、パパンが勝利を確信した顔で笑い、見ればママンの膝の上でクソ雌犬ビッチもパパンのように勝ち誇った目をして嘲笑ってやがる。



ぬおぉぉぉお!



コイツら! コイツら!! コイツら!!!


ごおぉぉぉおッ!!!


ボクの怒りのオーラが紫の炎となって立ち昇る。


このままでは終わらんぞ!



 走り去るボクの後方で、ご主人様がパパンをたしなめていたが、それでは問題は何も解決しない。重要なのは今ボクが何をすべきか考えることだ!


 ママンのパイオツをッ! ママンのフトモモをッ! ボクの地上の楽園パラダイスを取り戻すために!


 ボクが取れる唯一の手段はやはり……更なる可愛い高みを目指す!

 そしてママンのチチとフトモモを憎っくきパパンとクソ犬から取り戻す!!


 ボクはもう最高の可愛いを体現している。

 これ以上に可愛いを追及するのは困難だ。

 自分を変えられないのなら手段は一つだ!



 それは――お洒落!



 よぉし、行きつけのペットショップで例の物の作製依頼をしなきゃ!


 パパンにクソ犬ども!

 首を洗って待っていろよ!


 あれを手にしてボクは貴様らに復讐してやる。

 貴様らぁぁぁ――



 ――楽には死ねんぞッ!



 ボクは最高の『1つの首輪』を手に入れるんだ!



 そして――



 ――可愛い王に!!ボクはなるッ!!!



 ――――アレクサンドール領の発展著しい領都で魔狼フェンリルは己の可愛いを凌駕できる首輪をひそかに作っていたのだった。首輪には、フェンリルのキュートさ、プリティーさ、他の可愛いを越えようとする意志が注ぎ込まれていた。それは、全ての可愛いを超越する首輪だった』





―――≪次回予告≫―――


みなさんお待ちかねぇ!

新入生を迎えるべく入学式に参加したカレリンは、ガルムの婚約破棄に絶体絶命!

さらに今ここに!五車聖の面々と転生ヒロインが大集結!彼らは力を合わせて、カレリンを迎え撃つではありませんかぁ!

令嬢類最強!?~悪役令嬢(わたし)より強い奴に会いに行く~「最終死合!悪役令嬢vs集結ガルム連合」にぃ、レディィィ、ゴォ!!

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