第58話 墜ちた五車聖【閑話パート】
ゴルゴ
(ゴルゴ十三を知ってるかッ♪)
背後に立つカス駆除する♪
(背後に立つカス駆除する♪)
イカした凄腕スイーパー♩
(イカした凄腕スイーパー♩)
汚物は消毒だッ!(汚物は消毒だッ!)
汚物は消毒だッ!(汚物は消毒だッ!)
ゴルゴ
(ゴルゴ十三を知ってるかッ♪)
社会のゴミ屑駆除する♪
(社会のゴミ屑駆除する♪)
汚れを許さぬ掃除屋さ♩
(汚れを許さぬ掃除屋さ♩)
ゴミ屑は排除ッ!(ゴミ屑は排除ッ!)
ゴミ屑は排除ッ!(ゴミ屑は排除ッ!)
俺たち無敵の清掃隊♪
(俺たち無敵の清掃隊)
落とせぬ汚れなど何も無い♪
(落とせぬ汚れなど何も無い)
拭け! 拭け!(拭け!拭け!)
磨け! 磨け!(磨け!磨け!)
汚物は全部消毒だッ♪
(汚物は全部消毒だッ)
ゴミ屑どもは排除する♪
(ゴミ屑どもは排除する)
俺たち最強の清掃隊♩
(俺たち最強の清掃隊)
ヤレ! ヤレ!(ヤレ!ヤレ!)
殺せ! 殺せ!(殺せ!殺せ!)
『この歌に馴染み始めた自分が恐い……』
ミリタリーケイデンスって妙に耳に残るわよね。
『あれから1週間ですか……あの3人はまだ頑張れていますか?』
うーん、それなんだけど……
『――ッ! まさか死んじゃったんですか!?』
人聞きの悪い事を言わないで!
死んでないわよ。
そう、死んではいないのよ、死んではね。
だけどねぇ……
『歯切れが悪いですね』
あッ! ほら、あそこにヴォルフがいるわ。
「おら~筋トレじゃぁ!
「サーイエッサー!」
『きちんと訓練に参加しているようですね』
でしょ!
ただ――
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……僕は男の娘じゃない、僕は男の娘じゃない、僕は男の娘じゃない、僕は男の娘じゃない、僕は男の娘じゃない……」
――壊れちゃった……
『……汎用人型決戦兵器にでも乗せますか?』
ほら、あっちにはマーリスがいるわよ。
『マーリスも壊れましたか?』
ん~壊れてはいないんだけど……
『なんかモヒカンになってませんか?』
肩パッドも完備よ。
『清掃隊員に染まりましたか』
「頑張れマーリス頑張れ! 俺は今までよくやってきた!! 俺はできる奴だ!!! そして今日も! これからも!! 折れていても!! 俺が挫けることは絶対に無い!!!」
『あいつ挫けまくっていたでしょう……』
なんなら頑張ってさえいなかったわ……
「そうだ! 走れ微笑みマッチョ!」
「サーイエッサーッ!」
「頑張れ! 人は筋肉が原動力だから筋肉はどこまでも強くなれる!!」
「サーイエッサーッ!」
「筋肉を鍛えれば様々なことができるようになる、何でもできるわけではないが、昨日の自分より確実に強い自分になれる」
「サーイエッサーッ!」
「脂肪を燃やせ! 限界を越えろッ!!」
「サーイエッサーッ!」
最近ではマリクがああやってマンツーマンで鍛えているわ。
『おお! 少しは期待できそうではないですか』
そうでもないの――
「ぜぇ…ぜぇ、はぁ……はぁ……」
「なんだッ! もう走れんのかッ!!」
――訓練は真面目に受けるようになったんだけどね。
『全く変わってないじゃないですか!』
『あら? あそこにいる巨漢は確か……』
ゴマー・パイエル二等兵ね。
『彼も随分と変わりましたよね』
最初は脂肪を持て余してたから。
まあ、強制で脂肪を燃やし、限界を越えさせたけど。
「おらぁジョークッ! いつまでサボってやがる!!」
『ジョーク?』
セルゲイのことよ。
ゴマーがあいつの教育係なの。
「い……いやだ、たすけてくれえ!!
な……なぜおれがこんな目に!!
天才のこのおれがなぜぇ~!!」
ああやって自分を天才だって主張するし、訓練はわーわー騒いでまともにしないしで、マリクが切れて「冗談は顔だけにしろッ! 貴様は今日から
『あいつは子供ですか』
「あわ…うわっ……
うわああ~
うわらば!」
ああ、もうッ! 走りながら叫ぶから
『盛大にこけましたね』
「くそッ! くそッ! くそッ!」
ガンガン地面を叩いてもしょうがないでしょう。
『あ~ゴマーに蹴飛ばされました』
「さっさと起きて走らんかウジ虫が!」
「人は何故か体を鍛えようと努力する。しかし覚えておけ、人が人を鍛え抜くことは決してできぬ人とはそういう悲しい生き物だ」
「さぼる言い訳するんじゃない!」
「さぼっているのではない! 人の真理を説いているのだ」
「筋肉の足りない貧弱は人ではない! 肥溜めに涌くウジ虫だ! この学園で最下層の存在だ!」
ゴマーのヤツはなんて口が汚いのかしら。
本当に私と同じ貴族子女なの?
どんな教育を受けてきたか親の顔が見たいわ。
『あれ貴女の教育の成果ですよね!?』
「筋肉! 筋肉! 筋肉! どいつもこいつも筋肉!
なぜだ! なぜ筋肉ばかり見てこの私を認めねえんだ!!」
あ、セルゲイが切れた。
『承認欲求が恐ろしく強いですね』
あら?
『誰かセルゲイに近づいていますね』
あれはトウ・トラップね。
『影の薄そうで特徴のなさそうな人物ですが、よく知っていましたね』
あいつの名前が定期考査の順位表で私の真下にあったから覚えたの。
『つまり学年2位の俊才ですか』
セルゲイが誰に知恵を授けてもらったか分かったわ。
『セルゲイに何か紙を渡しているようですが……』
「でかしたトラップ君! こいつさえあれば……」
「それでは報酬は私のイスイ銀行の口座に振り込んでおいてください」
『なんか商売してませんか?』
ああ、そう言えばトラップ伯爵家は貧乏で、次男の彼は自分で学費を稼いでいるんだったわ。
『苦学生なんですねぇ』
そっかー私が1位になっているから、彼は奨学金を受けられなかったんだ。
『恨まれているんじゃありませんか?』
大丈夫じゃない?
彼って淡泊っぽいから。
『そうですね。寧ろセルゲイの方が問題ですか』
今度はいったい何を企んでいるのか……
「ふははははッ!」
何か急に高笑いし始めたけど?
『セルゲイを小突いていたゴマーが例の紙を見せられて憎々し気な表情になりましたよ』
「やはり私は天才だぁ~」
またセルゲイがほざいているわ。
『ですが、ゴマーの様子がおかしいですよ』
あ、マリクやジョーカーまでやって来て揉め始めた。
『どうにも良くない事が起きているみたいですね』
「ふはははは! やはり私は天才だッ! 貴様らもなかなかの強さだが無駄なあがきはせんことだ!!」
何あいつ? どうしてそんなに強気?
『ですが、隊員達がセルゲイに手出しを控えているように見えますが?』
「貴様ァァァ!!」
「卑怯者~!」
「私を認めなかったばかども全員おれの前で平伏させてやるわ~~~!!
そして私にばかどもが媚びるのだあ!!」
「自分の
「虎の威を借る狐の分際でッ!」
「ん~~? なぁんのことかな? フッフフフ……」
どうしたのかしら?
『セルゲイが例の紙をヒラヒラ見せびらかしているだけなのですが?』
「媚びろ~!! 媚びろ~!! おれは天才だファハハハ!!」
「ぐおぉぉぉ!」
「ムカつくムカつくムカつく!」
「た、大変です軍曹!」
『ゴマーが顔を青くしてこっちに走って来ますよ』
「どうしたゴマー・パイエル二等兵!」
「そ、それがジョークのヤツが学園長からの解散命令書をッ!」
解散命令書? 何それ?
『学園長と言えばズール・ド・ザービでしたね』
私の愛読書の著者よ。
『貴女まだあれ読んでいたんですか』
だけどゴマーの話は要領を得ないわね。
全くどいつもこいつも筋肉ばかりで使えないわね!
『貴女の教育の賜物ですよ?』
「何をやっているの?」
私の声に全員が私に注視する。
「そ、それがジョークがとんでもない物を持ち出しやがって」
「そいつ学園長からの解散命令書をちらつかせやがって……」
「軍曹! こいつを何とかしてください」
清掃隊員達がピーピー騒いでいる中で、セルゲイが高笑いしている。
「勝てばいいんだなに使おうが勝ち残りゃあ!!」
「てめぇ! いい加減しろよッ!」
「恥かしくねぇのか!」
「おれは筋肉がすべてだとは思っていねえんだ要は強ければいいんだ
どんな手を使おうが勝てばいい! それがすべてだ!!」
何だかセルゲイに変なのが乗り移ったのかしら?
『まるで弟に劣等感を抱いたヘルメット男みたいですね』
「まあ、私は何を使われてもいいんだけど」
「ほざくな!! 今の私は昔のおれではないぞ~~!」
セルゲイが紙切れを私の前に突き付けてきたんだけど……
『え~と、なになに……解散命令書、自称清掃隊員の公序良俗に反する言動の数々が学園の秩序を乱しつつある。多数の生徒達からの苦情を鑑み、貴殿らの活動を即刻中止する旨を勧告する。ダイクン魔法学園学園長ザービ・ド・ズール……ですか』
「カレリンッ! 私の名をいってみろ!!」
「急にどうしたのよ……セルゲイでしょ?」
「おれさまはだれだ! 名をいってみろ!!」
「だからセルゲイでしょ」
「おれは五車聖の海の理薄さまだ~!! カレリンッ! おのれの無力さを思いしらせてやるわ!」
「少なくともあんたよりは強いわよ」
「強がるのも今のうちだぁ! きさまが真っ青になるのをじっくりここで見物してやるわ!!」
「なによ! こんな紙切れ!!」
(ビリッ! ビリビリビリッ!!!)
「――――ッ!!!」
あ、セルゲイが固まった。
『自分の方が真っ青になってしまいましたね』
「貴様ぁぁぁ! 自分が何をしたのか分かっているのかぁ!!」
「紙を破いただけだけど?」
「さすが軍曹! おれたちにできない事を平然とやってのける」
「そこにシビれる! あこがれるゥ!」
「そんなもん軍曹の前じゃケツをふく紙にもなりゃしねってのによぉ!」
このモヒカンどもも後で再教育が必要そうね。
『完全に
「くッ! この理薄の目を持ってしてもカレリンという女を読めなかった……この女の狂気の心を…………」
「何をバカ言ってんの。だいたいこんな紙切れ全く意味がないでしょ」
「な、なんだとッ!」
「いいこと! 私達は自主的に運動をして美化活動に勤しんでいるだけよ。それをどうこうする権限は学園長にもないわ」
本気でどうこうできると思ってんのかしら?
「考えてもみなさい。誰かに迷惑をかけているならともかく校庭を走るのに学園長の許可がいる?」
『大声でミリタリーケイデンス歌うのはかなり迷惑だと思いますよ』
「自主的に清掃活動をしているのを
『モヒカンと世紀末スタイルは咎められないのが不思議ですが』
「そして学園に
『抹殺するのは完全にアウトでしょう』
「つまり、学園長の命令などお門違いなのよッ!」
「うおぉぉぉ! 何という完璧な理論武装!!」
『けっこう穴だらけじゃありません?』
いいのよ。どうせこいつには分からないから。
それよりも問題はこの3バカが使えないということ。
こいつらの教育を清掃隊員達には任せられないわね。
『では、貴女が自ら?』
ええ、だって私はガルム様の婚約者だから……
あいつらを少しでもマシにしてやらなきゃね。
「全員集合ッ!!!」
わらわら集まるこの清掃隊員と3バカ達を再教育しなきゃ。
だから――
「
「「「サーイエッサー!」」」
――私は私の責務を全うする!
―――≪次回予告≫―――
みなさんお待ちかねぇ!
新入生を迎えるべく入学式に参加したカレリンは、――――
《ぴろぴろり~ん》
『次回に投稿を予定しておりました令嬢類最強!?ー
――――にぃ、レディィィ、ゴォ!!
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