第47話 必殺!目からビーム【裏話】

 

 ――(1週間後)――



 うーん……

『どうしたんですか?』


 どうにも私のファンクラブと揉めている子がいるみたいなの。

『まさかピンク頭の……』


 よくわかったわね。

『まあ……(あの娘が転生ヒロインですから)』


 あの子、あれから私の前にちょくちょく姿をみせるんだけど……なんでか毎回私の目の前で転倒するのよね。

『あ、あははは、そ、そそっかしい娘ですねぇ(これも強制力のなせる業でしょうか?)』


 そんで支えてあげてたらファンクラブの子達に睨まれたみたいなの。

『まあファンクラブの子達からすれば業腹の行為でしょう(カレリンの取り巻き令嬢がいない代わりですか……恐るべし世界の強制力!)』


 この間なんて彼女の教科書がズタズタにされちゃって……

『それは酷いですね(完全にイベント通りです)』


 その場は私の教科書を彼女にあげて事なきを得たけど。

『貴女は教科書なしで大丈夫なんですか?』


 もう全部覚えてるからね。

 これでも成績は学年トップよ。

『さすが最強の悪役令嬢スペックですね。貴女の非常識な集中力との合わせ技で学力も敵なしですか……でも、この魔法学園は魔法の成績のウェイトが高いはずですが、魔法の科目はどうしたのです?』


 理論系などの筆記は丸暗記ね。

 実技は令嬢流魔闘衣術でなんとかしたわ。

『えッ!? どうやって?』


瞬間移動テレポート物体牽曳アポートは目にも止まらぬ高速移動でごまかし――

『フェンリル相手にやってましたね』


 火を灯せと言われたら、指と指を高速で擦って摩擦熱で火を起こし――

『人間チャッカマンですか!』


 風を起こせと言われたら、高速で周回して竜巻を発生させ――

『なんかそんな技がありましたね……』


 地震を発生させろと言われたら、大地にワンパンで地を揺らし――

『それ逆地上最強の生物じゃないですかッ!?』



 望遠は前にタクマがやった目への魔力集中すると対応できたし、味覚、聴覚、嗅覚、触覚なんかも増強できたから大抵の事はできるの。

『全部力技で対応ですか……』


 やっぱり物理は万能ねッ!

『本当に貴女はなんでもありですね』


 感心した?

『呆れているんです!』


 ん?

『どうしました?』


 いま、絹を切り裂くような悲鳴がッ!

『えッ? どこ……って一瞬で消えた!? 彼女の高速移動さらに速くなってません?

 まあ、私は全知全能の女神ですから、すぐに追いつけますが……』



「キャーーーッ!!!」


 私が現場に到着すると、ちょうどピンク頭が階段上方から落下しているところーーー間に合った。


 私は令嬢流魔闘衣術を発動し、とうッ!と跳躍すると彼女を空中で抱き止め、見事に着地!

『お〜(パチパチパチパチ)』


 あら? もう追いついたの。

『私は女神ですよ。物理力は無くとも神力があります』


 腐っても神ね。これからは腐女神ふじょしんと呼んであげましょう。

『私、BLは好みませんが……』


「またあなたなの? さすがに階段は気をつけなさい。下手したら死んじゃうわよ」


 この子が無事でよかったわ。

 だけど対応策を考えないと。

『また再犯がありそうですね』



 そこら辺は後日に考えるとして、いったん教室に戻りましょう――ッ!


 ぞくッ! ぞくぞくぞくッ!!


 ――なッ! これ程のプレッシャーを誰が?



 振り向けば黒髪黒目の綺麗で大人しそうな女の子から黒い殺気が!



 殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!殺ッ!



 凄いッ! 何と言う強大な威圧ップレッシャー

『威圧と言うより怨念では?』


 素晴らしいわ! これはもう目で人を殺せる領域レベルね。

『……あれは目で呪っているのでは?』


 だけど目なら私だって負けていないわ。


 いくら鍛えても筋肉がつかず二の腕は細く、何もしてないのに巨大になっていく胸、いくら食べても食べても太れないボディ、お尻なんて未だに成長期、なんて残念な身体だって落胆してたけど……

『貴女ホントに全世界の女性を敵に回しますよ』


 だけどこの残念な悪役令嬢の身体でも誇れるところが一つだけあったの!

『女性的には誇るところだらけですが……』


 この鋭い眼光!

 この目力だけは気に入っている!!

『普通は逆でしょう!』


 いつかきっと目力で人を殺せるようになってみせるわ!

『貴女は本当に目から殺人ビームを出しそうです』


 目からビーム……なんか強そうね。

『……本当に出すのは止めてくださいよ』


 令嬢流魔闘衣術は魔力をコントロールしているから――

『……』


 ――目に魔力を集中させれば、ビームを出せそうな気がしてきたわ。

『……本当に、お願いだから、絶対に、止めてくださいね(ホントにこの娘やりそうで恐い……)』

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