第46話 筋肉増強!目指せムキムキ高タンパク質弁当【裏話】


 うーん……

『どうしたのですか?』


 お弁当忘れちゃった。

生徒専用食堂カフェテリアがあるではないですか』


 私のは特製『筋肉増強!目指せムキムキ高タンパク質弁当』だから。

『……貴女まだ筋肉を諦めていなかったのですか?』


 私ってボンッキュッボンッ体型じゃない?

 やっぱりこの体型って格闘向きじゃないのよ。

『その身体は天才魔法師の悪役令嬢ですからねえ』


 リーチが長いのは確かに有利よ。でも、足が長すぎて胸が大きいから重心が高すぎて……

 ちっぱいで重心が低い寸胴体型が羨ましいわ。

『いま貴女は全世界の女性を敵に回していますよ』


 でもでも! 格闘戦に体型は重要なのよ!

 確かに令嬢流魔闘衣術があるけど、やっぱベースが低いとねぇ。

『令嬢にしては十分筋肉質だとは思いますが』


 令嬢って箸より重い物持ったことないってやつでしょ?

『まあ、この世界ならカトラリーよりでしょうか?』


 そんな貧弱と比較してもねぇ。

 素なら5、60kgを持ち上げるので精一杯。

『それでも通常の貴族令嬢の2〜30倍の性能でしょうに』


 慰問先の肝っ玉シスターは孤児2人をヒョイって軽々担いでたわよ?

『それって、比較対象が体重80kgオーバーの女性でしょう!?』


 私もせめて80kgは余裕で持ち上げたいわ。

『貴女の体重は50kg未満でしょ! 重量挙げ世界記録でも100kg前後なんですよ。魔闘衣術使えば余裕で4桁持ち上げられるんですから我慢なさい』


 まあ、令嬢流魔闘衣術ドレスを使えば今じゃ5桁も余裕なんだけどね。

『貴女いつの間に! また魔力が上がっているじゃないですか!?』


 筋トレと並行して魔トレもやってるから。

 この前6桁チャレンジも成功したし。

『6桁って!? シロナガスクジラでも持ち上げたんですか!?』


 まだまだ魔力が上がっているから、いつかは7桁にも挑戦ね。

 こっちの世界にも千トン岩ってあるかしら?

『魔力成長期も止まっているはずなのに!? 第2次魔力成長期でもあるんですか? 貴女の能力はおかしい!』


 いいじゃない減るより。

『それはそうですが……もう貴女は完全に人外ですね』


 だけど、いくら魔力が上がってもねぇ……

 やっぱり令嬢流魔闘衣術と言えどもベースの筋力は重要だから、筋肉増強は重要よね。

『いや、もう十分な力持っているじゃないですか』


 もうちょっと欲しいのよ。

 うーん……食堂のメニューに鶏むね肉ってあるかしら?

『貴族の食堂ですよ。肉ならローストビーフがせいぜいでは?』


 おッ! さすがオタク女神。詳しいわね。

『誰がオタクですか!』

 ローストビーフもまあまあの高タンパク質よね。


 他の高タンパク質食材だと大豆かしら?

 でもあれって畑のお肉って言われている割にタンパク質取れないわよねぇ。

『それは大豆食品を大量に食べる事がないからでしょう。グラムあたりのタンパク質量はお肉に劣りませんよ』


 やっぱりオタク女神じゃない。

 全知全能なんてホラ吹いてないで、これからはオタクを司りなさいよ。

『この娘は……』


 さーて、な~にか♪ 美味しいタンパクあっるかなぁ~♪

『あッ!(前から来るピンク頭はッ!)』


 どうかしたの?

『い、いえ…なんでも……(しまった! 食堂ってカレリンとヒロインのイベントがありました)』


 しまったって顔したわよ。

『き、気のせいですよ(確かここでヒロインがカレリンに足を掛けられて転倒するんでしたか?)』


 あんた何かやらかしたでしょう?

『べ、別にぃ〜(なんで私はカレリンを食堂に誘導してしまったのですか……世界の力が私にも影響を? 小癪な! 私が創造した世界の分際で!)』



「あッ!」



 私が駄女神を問い詰めようとしたら、近くで急に短い悲鳴が……だけど常在戦場の私はどんな場面でも即対応。


 転びそうになったピンク頭の令嬢をサッと掬い上げた。


 あら? この重さはちょうどいいダンベルね。40kg弱くらいかしら。これなら私の筋肉でもラクショーね。

『女の子をダンベル扱いしない!』


「大丈夫かしら? 可愛いお嬢さん」


 何かしら?

 顔真っ赤にして口をパクパクさせているわ。

 体の具合でも悪いのかしら?

『(やはりヒロインのラファリィ・マット!)』


「どうかしたの?」


 この子ちっとも返事をしないけど……



 キャーーーーーーッ!!!



『な、な、なんですか!? 急に周囲の令嬢達から黄色い悲鳴が?』


 んー? 目を潤ませてうっとりしている令嬢が1、2、3……たくさんいるわね。

『随分と落ち着いていますね』


 まあ慣れてるから。


「あゝ! カレリン様……今日もなんて凛々しいのかしら!」

つまずいた女性を咄嗟に抱き上げるなんて……」

「あーもうッ! 羨ましいですわ。私が代わりたい!」

「やっぱり頼りになる方って素敵ですわ」


『こ、これはッ!』

 私って前世から女の子にばかりモテるのよねぇ。


「時代は魔法より使える筋肉ですわ!」

「あら、でしたら騎士団長令息のマーリス様にアタックしてみては?」

「あれは使えない筋肉よ」

「その点カレリン様は最高よね」

「引き締まった体で逞しいのに女性らしくしなやかで……」

「もしかして貴女もファンクラブに?」

「当然よ! 全校の令嬢の殆どが加入しているカレリン様ファンクラブに入らないわけないじゃない」


『ファンクラブまであるんかい!?』

 みたいねぇ。


「もういいかしら?」

「え?……あ、はい」


 こうなったら騒ぎになる前に退散、退散っと。

『ちょっとカレリン! お昼はいいのですか?』


 考えてみたら私って秒で屋敷に帰れるから、今から帰宅してお弁当食べても余裕で学園に戻ってこられたわ。

『……そうでした』



 それにタンパク質は取るだけではエネルギーにしかならないもの。筋肉変換する為にちゃんと運動もしないとね。

『学園と屋敷を全力疾走で往復するだけでも常人ならかなりの運動ですが……』


 そんなんじゃ全然足りないわ。


 さあて、今日の放課後も清掃隊員達率いて学園のクズ共を狩り尽くすわよ!

『モヒカン率いて人狩りマンハントって……ここは世紀末ですか』

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