第40話 桃郷凛夏の後悔と画策
ウチがみんなに
6人で話し合いながら計画の詳細を詰めていく。
多分知火牙くんもハジメテさんだろうから、最初をもらう特別な役割についても話し合った。
バージンを捧げるだけじゃなく、その後どうするのか、とかも。
『好きな人が処女は嫌だって言うから』っていう理由だと、非処女になってしまえば依頼達成になってしまうから。
だから、その後は『好きな人がえっちの上手い子が好きだっていうから』っていう理由をつけようって話とかをした。
結果、みんな、知火牙くんの初体験のお相手の権利は、今回の案の発案者であるウチに譲ってくれるって言ってくれた。
彼女たちの優しさと友情の美しさに自然と涙が溢れて、改めて仲良しのみんなで知火牙くんをシェアして幸せになりたいって想いが強くなった。
そして運命の日。
作戦が上手くいくかどうか、まずは知火牙くんが依頼を受けてくれるかどうかにすべてがかかってる。
もしも断られたら、この1ヶ月で練った作戦は当然、すべて無駄になる。
代表して伝えたウチの声は震えていたと思う。
そんなウチらの恐怖心が伝わったのか、依頼内容のせいで羞恥に震えているとでも思ってくれたのか、知火牙くんは優しく微笑んで......。
「いいですよ。冗談とか覚悟がないようなら受けられない依頼でしたけど、みなさん本気で悩んでいらっしゃるようですから。そのご依頼、この俺、
キリっとした表情でウチらの無茶めな依頼を受領してくれた。
あまりにもホッとしすぎて、ウチも含めてみんな涙を流しながら『ありがとう』って言ってた。
そんな6人みんなの頭を優しく撫でながら、少し困ったように眉を八の字に曲げる知火牙くんが可愛くて、さらに好きになった。
それからすぐ一番近くのホテルに7人で入って............。
入室から8時間。
「ふうぅぅぅ。俺、初めてだったんですけど、みなさん身体は大丈夫そうでしょうか?」
「「「「「「は、はひ......。気持ちよかったです............」」」」」」
知火牙くんは最初、おっかなびっくりって感じで慎重に侵入して来たかと思うと、真ん中くらいまでのときに一発目を発射しながらあっさりウチのバージンを貫いた。
なんでもできる彼が避妊のひの字も知らないままウチと交わりながら気持ちよさそうな顔してて可愛かった。
だけどそのあとはほんの数分で信じられないスピードでこなれていき、初めてとは思えない優しい手つき腰つきでウチをイカせたあと、他の5人みんなの初体験を奪い去った。
5人目に至っては上達しすぎてて、破られた痛みで達してしまってた。その子はそれをきっかけに痛みに悦ぶようになってしまってて、何度も「叩いて」っておねだりしてた。
仲良しのみんなで一緒にバージンを捨てて、幸せな気分でベッドに並ぶウチら。
一糸まとわぬ姿で下の方は痛々しく赤く滲んでるのに、みんなが隣を見合って、目があったらなんだか面白くって『ふふふ』って微笑み合って。
これが幸せなんだ、って。こうやってみんなで素敵な人をシェアして、気持ちいいのをシェアしてってするのが、幸せなんだって。
ウチらは充足感で心を満たしながら、眠りに落ちた。
*****
それから半年間、ウチらが卒業するまでの間、知火牙くんのスケジュールが空いてる日があれば、同好会の部室とか知火牙くんのお家とかホテルとかいろんなところで抱かれた。
回数を重ねるごとに上手くなっていく知火牙くんに、ウチらは益々沈められていった。
いつもの6人以外にも幸せをおすそ分けしたら、もっと幸せなんじゃないかって思って、以前に知火牙くんに告白したっていう他の同級生の子達にも教えてあげて、大人数で交わったこともある。
そうして卒業を迎えたウチら。
高校に行ってももうしばらく抱いてもらって、それから知火牙くんに責任を取らせてみんなで幸せになろう。
そうみんなで約束して。
そんな中学3年生の半年間が全部。全部全部全部全部、間違ってた。
今ならそれがわかる。
あのあと、高校に進学してすぐ、ウチは両親の都合でこの街を離れた。
遠く遠く、戻ってくるもの大変な場所だった。
当時の知火牙くんはスマホも何も連絡手段を持ってなかった。用がある場合は彼に直接会いに行くしかない。
そんな状況で離れ離れになって、連絡を取ることさえもできなくなった。
ウチ、だけが。
他の子たちは進学しても半年くらい定期的に彼に抱いてもらってたらしく、
最初の頃は、寂しさもあったけど、みんなが幸せそうでウチも幸せだった。
だけど、そんな気持ちも何ヶ月も保たず、徐々に変化していった。
そりゃそうじゃないかい?
だって、みんなは知火牙くんの体温を感じて幸せそうなのに、ウチだけは独りで惨めに慰めるだけ。
かつて撮った知火牙くんとのハメ撮りと、お友達から送られてくる交尾の映像だけをオカズに虚しく気を遣る日々。
動画の中の知火牙くんは、中学3年生になって益々たくましくかっこよくなっていくのに、ウチだけはその身体に触れられない。
しかも、日を経るごとにウチに連絡してくる子が減っていき............半年経つ頃には誰も連絡してこなくなった。
ウチの方からメッセージを送っても返事はない。既読もつかない。
残された動画を繰り返し再生して、自慰に耽ける日々。
鬱屈とした気持ちが澱となって溜まっていく。
動画の中の幸せは、ウチが提案してみんなにおすそ分けしてあげたもののはずなのに、その輪の中にウチだけいない。
おかしいじゃないか。
みんなの幸せを願ったウチが、独り孤独に絶望を感じてるなんて。
そうしてウチはようやく気づいたんだ。
「今までの間違いに気づいたんだ。他の女とダーリンをわけわけするなんて、そんなのじゃ満足できるわけなかったんだよ。愛は独占してこそ、だよねっ」
包丁に塗った毒がようやく完全に効いてきたらしく目の前で意識を失っていく知火牙くんを見下ろしながら、かつての失敗を反省する。
ウチは二度と同じ過ちは繰り返さない。
他の誰にも渡さない。
幸せはシェアする必要なんてない。
独り占めしないと、失ってしまうんだから。
漢らしさだっていらない。
それは他の女をたぶらかす原因になるから。
「ふふふ、自分だけじゃ生きていけない、なーんにもできない身体になっても。知火牙ちゃんのことは、赤ちゃんみたいにちゃーんとお世話してあげるからね〜?♡」
あぁ、ウチを睨む目ももう虚ろで光がなくなってるね。
安心して眠ってね。
「ダーリンは他の誰にも渡さない。もう二度と離れない。二度と他の便女どもとは交尾させない。他の女にお世話させたりしない。他の女を視界に入れさせない。他の女の匂いも嗅がせない。他の女に優しくさせない。他の女のことを考えさせたりしない。これからはずっとずっと、2人っきり、だよ。これからはダーリンの優しさは全部ぜ〜んぶ、お嫁さんだけに注いでね? 浮気しちゃ、ヤだよ? 愛してるよ、旦那様♡」
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