第30話 鎚玲有の完堕ち1

「ちーくん。二度とこのお部屋から出られない覚悟はできてる?」



 ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな。

 ちーくんは私のだ。他の女? 幼馴染? 2人? 私が3人目? 意味わからないこと言わないで。


「んー、それは困るかなぁ」


「余裕そうにするな。私は本気だよ。私以外の女なんてちーくんにはいらない。幼馴染か何か知らないけど、これからは私だけがちーくんのそばにいれば十分。ちーくんが目移りしそうになったら、その子たちを消してあげる。ま、ちーくんはこれから私とずっと2人でこの部屋でいちゃいちゃするんだから、目移りのしようもないんだけどね? これからちーくんには私しかいない。私以外に頼れる人はいない。私以外に好きな人はいないんだよ。わかった?」



 なにニコニコしてるの? 素敵すぎるんだけど?

 こっちは本気で脅してるんだけど? あ、私とずっと一緒だってわかって嬉しいのかな? そりゃそうだよね。こんな美人のお姉さんとずーっと一緒にいられるんだから、嬉しいに決まってるよね。


「あは。玲有さんが自分の価値をわかってくれたみたいで嬉しいです。あと気になってたんですけど、そのちーくんって呼び方いいですね。お姉さん感あって萌えます」



 私の頭の中は怒りでいっぱいのはずなのに、ちーくんに喜んでもらえて嬉しくなっちゃう自分がいる。

 ダメだよ私。今はダメ。まずはちーくんをワカらせて私だけに目を向けられるようにしてあげなくっちゃいけないんだから。喜ぶのは後。


 おらっ!


「おっっと!」



 ......よし、不意打ちタックル成功だよ。

 あとは倒れてるちーくんに馬乗りになって......これでいっか。


「何ヘラヘラしてるの? 私は今、怒ってるんだよ。ちーくんが私以外に浮気してることを問い詰めてるの。反省しろ。私だけ好きになれ。私だけを愛してるって言え。そうじゃなきゃこれで殴ってぶち犯すぞ」



 ちーくんが強いのはこの1年半でよく知ってるけど、女の子には基本怪我をさせたりしないようにしてることだって知ってる。

 だから、私がこうやって馬乗りになって机の上に置いてた空のワインボトルを振りかぶって脅してあげたら、抵抗できないでしょ?


「あははは、何言ってるの玲有さん、今日犯されるのは玲有さんだよ」


「は? ............そっか、まだわからないんだ。ちーくんは私のことナメてるんだね? 大丈夫、すぐにわからせてあげる。..................ってちょっと待って。まさかとは思うけど、その幼馴染ちゃんたちとえっちなことしてたりしないよね?」



 ちーくんってばさっき彼女がいるとか意味不明なことほざいてたけど、まさかまさかもう貞操を失ってたりしないよね?

 それは私のものだよね? いつもあんなに屈託のない笑顔を私に向けてくれてるちーくんのそれが使用済みだなんてこと、ない、よね?


「ナメてないよ。玲有さんが可愛いこと言うから嬉しくなっちゃってさ。俺のこと、そんなに好きでいてくれて、嬉しいよ。それと............まぁ、そういう話はまた後でね」



 馬乗りになられて脅されてるっていうのにこの余裕......。あまつさえ私の頭をよしよしするなんて、どれだけ私をバカにしてるの?


 気持ちいいけど......。あ、いっつも私の目から視線を逸らさないちーくんが、ふいっと目をそらした。

 これは............そっか。そうなんだ............。


「可哀想なちーくん。私が出会うのが遅くなっちゃったから、幼馴染とか言う子たちに襲われちゃったんだね? そうじゃなきゃ説明つかないもんね? そうだよね? そうだって言え!」


「おっと危ない。ダメだよ、ワインボトルなんて振り回しちゃ。もしも割れて玲有さんが怪我しちゃったらどうすんの」



 ............ちーくんうるさいよ。

 自分がボコられそうになってるんだから私の心配してる場合じゃないでしょ。そういうところも愛してるけど。今はそうじゃないでしょ。恐れおののいて私に服従しろ!


 浮気しちゃったのだって大丈夫。ちょっとはお仕置きしなきゃだけど、私は許してあげる。

 これからは私が護ってあげるからね......。






 ピンポーン。


 は? 誰よこんな大事なときに。


「お、来たかな。ごめん玲有さん。もっといちゃいちゃしたいところだけど、一回出なきゃだから一旦おりてもらえる?」


「は? 出させると思ってるの? ちーくんは一生私とこの部屋に閉じこもって、毎日ぐっちょんぐっちょんになるまで求め合って、他の誰にも会わずにその生涯を終えるんだよ?」


「うんうん、それも良いね。でも一旦おりてね〜」



 なんでこんなにのほほんとしてるの?

 さっき思いっきり殴られそうになった女にここまで穏やかに接するとかできるものなの?


 ......って、うわっ!


「玲有さんがどいてくれないから、お姫様抱っこで玄関出るね?」


「わっ! わわわっ!!!!」



 馬乗り状態の私を持ち上げて立ち上がった!?

 ちーくん、ここまで強かったの!?


 チュッ。


 あっ......。今、おでこに......。


「暴れると危ないから、おとなしくしててね」


「う......うん......」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る