封印されし遺跡の異形!

「・・・こんにちわ?」

 千春は異形の者に声を掛ける。


「逃げて・・・。『マナを・・・。』」

「へ?2人声が聞こえる、逃げるの?」

「この体が暴れ出す前に逃げて・・・。」

 異形の者の声は女性の声に被るように低い声も聞こえる。


「ふむ、封印されておったようじゃな。」

「へ?ここめっちゃ古いんだよね?」

「古いのぅ、魔術か魔法か、肉体が朽ちておらんな。」

「そんな魔法あるの?」

「あるんじゃろ?目の前におるからのぅ。」

 ロイロは腰に手を当て異形に声を掛ける、異形は鹿の様な角、鳥の様な羽、そして腕には鱗が見えている。


「魔導合成生物・・・。」

 テールカがポツリと呟く。


「わっちにも前言っとったばいね。」

「えぇ、バレアタスの最低の技術よ。」

「人と動物を合成したって事?」

「話せると言う事はそうでしょうね。」

 テールカは眉間に皺を寄せながら話す。


「分離は無理だよねぇ。」

「無理よ、チハルちゃんは料理を作って材料に戻せる?」

「むりー。」

「混ぜるのは簡単なの、分離は・・・。」

 そう言うとテールカが黙る。


「こういう時は~♪アイトネー♪」

『は~い呼んだ~?』

「この子が封印されてた子?」

 アイトネと春恵が現れ異形を見る。


『あら、この子精神体ね。』

「へ?精神体の合成?」

『そ、本体と言うか、体は色々な生物、魂は二つ、その二つは精神体の魂よ。』

「滅茶苦茶してるね、バレバレ王国、アイトネ元に戻せない?」

『ん~、出来ない事はないけれど、魂にその力が残ってないわね、こういう時は専門家を呼びましょ♪』

「専門家?」

『えぇ、モート。』

「呼ばれて飛び出て・・・これ俺も言うのか?」

『ノリが悪いわね。』

 不満げに現れたモート、呼ばれる事が分かって裏合わせしていたのか困り顔だ。


「モートさんこの変な生き物どうにか出来ます?」

「あぁ、魂だけ抜き出すか?」

「そうなるとどうなるの?」

「まぁ普通に死ぬな。」

「ダメじゃーん!」

「依り代になる物が有れば魂を移せるが。」

 モートの説明を聞くJK達やエンハルト達は、依り代と聞き考える。


「依り代って?」

「魂を入れる器だ。」

「例えば?」

「そうだな、まだ魂が宿っていない者、生まれる前の体だな。」

「えぇ~・・・あ、ある!」

「「「「あんの!?」」」」

 千春の言葉に頼子達は驚き声を上げる。


「はい!コレ!」

 千春はアイテムボックスから卵を取り出す。


「1パック498円!有精卵10個!」

「鶏の卵かい!」

「ダメでしょ、流石に生まれ変わりが鶏とか。」

「美味しくいただかれる~!」

「他にないの!?」

「えぇ~、他って・・・あ・・・いや、流石にダメだなぁ。」

「何?」

「お母様のお腹の子。」

「それはまずい!ダメだね!」

 JK達は色々と考えるが思いつかず黙る。


「チハル様。」

 エーデルの後ろに居たドラゴニュートのレフトが声を掛ける。


「なに?レフト。」

「私の卵はどうでしょう。」

「へ!?レフト卵産んだの!?」

「はい、アルとの子で御座います。」

 レフトはニッコリ微笑みながら千春に言う。


「いやいやいやいや、それってどうなの?自分の子だよね?」

「えぇ、魂は巡り巡って宿ります、ココに私が居る事はそう言う事だと。」

「千春、どうする?」

「う~~~~ん、ロイロ的にどう?」

「儂か?儂はドラゴンの卵に転生して入ったからのぅ、レフトと同じ感覚じゃぞ?」

「そう言う物なの?」

「魂の価値観は種族に寄って違うからのぅ。」

 問題無いというレフトとロイロ、そして話をしていると異形が唸り始める。


「あなたたち・・・にげt『マナを食わせろぉぉ!』」

「うわぁ!ビックリしたぁ!」

「ちょ!何!?」

「暴れちゃダメだよ!」

 青空、大愛、日葵が異形に言うと異形は鎖を引っ張る。


「これ暴れてる方の魂も精神体なの?」

 千春はモートに問いかけると頷く。


「この2つの魂は他の世界から召喚された精神体だな。」

「へ?人じゃないの?」

「違うな、千春が分かりやすい様に言えば、1つは天使、もう1つは悪魔だ。」

「おぉぉぉ・・・ぉぉ!?」

「天使と悪魔とか居るんだ。」

「思っているような天界や魔界とは違うぞ?ちゃんとした種族だ、悪魔の方は気性が荒いがな。」

「なんで召喚したんだろ・・・。」

 千春の呟きにアイトネが答える。


『今魂の記憶を読んだわ、この子達は邪神の失敗作よ。』

「・・・そんな。」

『本物の邪神はその後本当に召喚されて私が消し飛ばしたわ、ついでにバレアタスも消したけれど。』

「そう言えば、バレアタスを滅亡させたのってアイトネだったね、忘れてた。」

 千春とアイトネの会話を聞いていたテールカは異形を見る。


「酷い・・・。」

『えぇ、この子達は被害者なのよ。』

「天使さんは・・・まぁアレだけど悪魔さんはどうするの?」

『チハルはどうしたいの?』

「・・・。」

『本当、チハルは優しいわね、悪魔よ?』

「だって・・・無理やり召喚されてこんな体に合成されて、何年もこんな所に閉じ込められてるんだよ?」

 千春は鎖でつながれながらも暴れる異形を見る、するとモートが異形に近づく。


「落ち着け。」

 モートは異形の前に行くと、異形の者は動きを止める。


「魂が壊れかけているな。」

 そう言うと異形の顔に手を添える、すると異形は座り込んだ。


『ここは・・・俺は・・・あぁ・・・あの者達に。』

「あぁ、お前ともう1人の魂を救いたいと言う者が居る、どうしたい?」

 モートはそう言うと千春を見る。


『叶うのであればお願いしたい、しかし俺はあの者達を皆殺しにした・・・。』

「お前達の魂は既に罪を償い壊れかけていた。」

『・・・お前はどうしたい。』

 悪魔は下を向いたまま呟くと同じ口から声が出る。


「万年あなたと一緒に居たのよ、あなたを止める事が出来なかった私も同罪。」

『そうか。』

 異形はそう呟くと少女を見る。


「『お願いします』」

 2人の声が同時に発せられ、千春はニッコリ微笑む。


「よっしゃ!連れて帰ろう!」

「そうなると思ったよ。」

 後ろで成り行きを見ていたエンハルトは溜息を吐く。


「しかし卵はレフトの一つだけじゃないのか?」

「ミリカも先日産みました、大丈夫で御座います。」

 エンハルトの言葉にレフトが答える。


『決まりね♪』

「一件落着~♪」

「でもお宝無かったね。」

「え?ミスリルが山の様に手に入ったじゃん。」

「あれだけでも物凄いお宝だよね。」

「アリンさんもお宝ゲットしたもんね~♪」

「はい!早く戻って研究しましょう!」

 頼子の言葉へ元気に返すアリンハンド、皆は思わず笑う。


「宝ならその奥の扉に有るはずです。」

『どれだけの時間が経ったか知らないが、腐っては無いだろう。』

「マジで!?」

「どれ!どの扉!?」

「ちょ!マジすか!」

「ねぇ、その前に天使と悪魔さんの鎖どうにかしない?可哀そうじゃん。」

「ロイローこれ引きちぎれない?」

「無理じゃ。」

「え?なんで?」

「これもミスリルじゃからな。」

「ちょー!バレバレ王国どんだけミスリル使ってんのよ!」

「バレアタスなー。」

 スタスタと横を歩くテールカは、部屋の隅にある腰ほどの高さの石碑を見る。


「外しても暴れないわよね?」

「勿論『勿論だ』」

「外すわよー。」

 石碑に魔力を通すテールカ、すると鎖は異形から外れる。


「ありがとう。」

 異形は立ち上がろうとする、しかし。


ドサッ


「ちょ!大丈夫!?」

「まぁ万単位で動いて無ければそうなるじゃろうなぁ。」

「回復するね!」

 千春は近くに近寄り回復魔法を掛ける。


「あなた・・・怖く無いの?」

「ん!もっと怖い人いっぱい居るから♪」

「・・・。」

 千春が回復魔法を掛けると異形はなんとか立ち上がる。


「歩ける?」

 異形はエーデルよりも大きく、3mはあろうかと言う高さになる。


『あぁなんとか歩けそうだ、宝物庫と言うよりも俺が殺したヤツ等の倉庫だが案内しよう。』

 よろよろと歩く異形、その後ろからゾロゾロと皆は付いて行く。


「アイトネ、モートさんありがとう。」

『私はモート呼んだだけ、それにモートの仕事は今からよ?』

「あ、そうだった、モートさんよろしくお願いします!」

「ははは、魂を移し変えるだけだ。」

「お礼は何が良いです?」

『今日の晩御飯で良いわよー♪』

「俺もそれで。」

「了解!腕によりをかけて作らせてもらいましょうかね!」

 かわいらしい上腕二頭筋に力を入れる千春、プニプニだ。


『ここだ。』

「ひゃっほー!」

「おたからー!」

「なになにー!?」

 異形は扉を開く、鍵も掛かっていないのか簡単に開く扉そして。


「金銀財・・・えぇ~。」

「思ったより質素だね。」

「金属だけ残ってる感じ?」

「あ、これミスリルだよね。」

「うん、鉄はサビサビーもう原型とどめて無いね。」

 思ったよりも小さな部屋には崩れ落ちた箱から見える宝石や金属、そして掛けられた武器があった。


「ま、無いよりマシか!」

「そだね!貰って良いんだよね!?」

「悪魔さんが良いって言うから良いんじゃん?」

 JK達はポイポイと頼子の影に放り込む、アリンハンドも気になる物が色々有ったようでニッコニコだった。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る