封印されし遺跡の1番奥~!

「やべ~・・・。」

 千春達は轟々と炎の中を歩いていた。


「これロイロ達の結界無かったら丸焦げだね。」

「うむぅ、この魔力は何処から補充されておるんじゃろうなぁ。」

「電池みたいに溜めてるんじゃない?」

 狭くはない炎の廊下を歩く千春、暫く歩くと炎が途切れ次の部屋に入る。


「狭いね、ルプ何か居る?」

「生物は居ないな。」

「流石におらんやろー、何年前から封印されてたか分からんばってんが。」

「生き物の気配はしませんね、ロイロさんどうですか?」

「魔力の溜りも無いのぅ。」

 ロイロは部屋の中に入り歩き始めると不意に手を上げる。


バシュッ!


「次は物理の罠か、まぁたいしたことは無いのぅ。」

 手には金属の矢を掴んでいた。


「たいしたことあるよ!」

「ウチらじゃ死んじゃう!」

「こわぁ!これ結界で守れるの!?」

「今くらいの矢なら問題無いな。」

 ルプは再度結界を張るとコンも上から結界を張る。


「わっちは地面這っていくけん大丈夫ばーい。」

 にょろにょろと地面を滑るように進むビェリー。


「弓矢だけかな。」

「さぁ?ロイロ達に先行ってもらって解除してもらお。」

 頼子が言うと千春はロイロを見ながら話す、ロイロは頷き部屋の中央まで行くと一斉に矢が飛び出す。


「うわぁぁぁ!!!」

「ロイロちゃん!」

「ロイロちゃんヤバい!」

 千春達が驚く中ロイロは全ての矢を叩き落し平然と歩く。


「嘘でしょ?」

「ロイロちゃんすげぇ~。」

 声が聞こえたのかロイロはドヤ顔で千春達を見ると壁際まで移動する。


「装填音は聞こえぬのぅ、もう終わりか?」

「終わりみたいだな。」

 ルプも後ろから悠々と歩いて行く、しかし矢は飛んでこなかった。


「さて、扉が二つ、罠じゃろなぁ。」

「どっちだ?」

「チハル、どっちに行きたい?」

「んー・・・右!」

「それじゃ左じゃな。」

「なーんーでーよー!」

 ロイロはケラケラ笑いながら左の扉を開ける、後ろではエンハルトとアリンハンドがクスクス笑っていた。


「前も同じような事あったよねー。」

「あーあの別の遺跡ねー。」

「トラブルほいほいのチハルが選んだ方は後だよね~。」

「いきゃわかるべさー。」

 JK達も当たり前の様に左の扉に向かう。


「・・・げせぬ。」

「チハル、行くぞ。」

「ぶー。」

 エンハルトは千春の頭をポンポンとたたき進む、その後ろからはエーデル達もゾロゾロと付いて来る。


「自分達は何もする事無いですね。」

 ホーキンは苦笑いで言うとエーデルも苦笑いで頷く。


「このメンバーだとしょうがない、盾にすらなる暇がないからな。」

 エーデルは大人しく後ろからついて行った。



--------------------



「はい!何も無ーい!」

「部屋はいくつかあったね。」

「何も無かったけどね。」

「テールカちゃんバレアタスの遺跡っぽいけどどうなの?」

「間違いなくバレアタスの時代ね、途中に文字が有ったもの。」

「なんて書かれてたの?」

「ココは魔術研究の棟って事だけね、他の物は腐れ落ちてたわ。」

「やっぱり2万年くらい前なの?」

「どうかしら、もっと昔かもしれないし、私が眠りについた後かもしれないわ。」

「そっかぁ、バレアタスが滅んだ原因がココにあったりして~♪」

 千春はケラケラと笑って言うが、テールカは思案顔になる。


「そうかもしれないわね。」

「へ?」

「この遺跡って祭壇でもあるのよ。」

「神様の?」

「えぇ、勿論女神アイトネ様では無いわよ?」

「あ、違う神様なんだ。」

「今だから分かるけれど、居ない神様を祀ってたのよ。」

「どんな神様?」

「・・・邪神よ。」

「えぇぇ、邪神信仰なの!?」

「そういう物も居たわ、あの時代に生きた種族は私達キュプロークス以外にも居たもの、色々な神を祀っていたわ。」

 行き止まりになった道を戻り罠の部屋まで来ると、右の扉を開くロイロ。


「ほう?」

 扉を開けるとロイロは声を上げる。


「アリンよ、これは当たりじゃぞ。」

 扉を開けたロイロは体を動かし中を見せる。


「本ですか!」

「他にも色々有るようじゃな。」

「保存の魔法ね。」

 テールカは部屋に入り辺りを見回す。


「ふむ、罠もあるのぅ。」

 ロイロは部屋を見渡すと壁を見る。


「コン、あの魔法陣壊せるか?」

「あれですね、一応この部屋の物は回収した方が良いですよね?」

「そうじゃな、ビェリー。」

「まかせりー全部落とすばい。」

 ビェリーは足元からにょろりと顔を出すと部屋の物が全て影に落ちすべてが消えた。


「それではみなさん部屋から出て下さーい。」

「はーい。」

「コンちゃんよろ~。」

「任せたぞ。」

 皆が外に出るとコンは術を展開し、結界に光の弾を当てる。


パキン!


 軽い音を立て一瞬部屋を明るくさせる。


「終わりましたー。」

「うむ、次に行くか。」

「ロイローここの罠なんだったのー?」

 千春はロイロに問いかける。


「発動してないからのぅ、わからん。」

「僕も分からないですねー、多分この部屋全てが消滅する系だと思いますけど~。」

「・・・こわっ!」

「なにその危ない魔法陣!」

「テールカちゃん!バレアタスの時の魔法ってそんな危ない魔法あったの!?」

「有ったわよ?戦争も多かったから破壊系の魔法は研究されてたわ。」

「あっぶねぇ時代だなぁ。」

「そりゃ滅ぶわ。」

「えぇ、滅びの未来しか残ってなかったわ。」

 少し悲し気に呟くテールカ、その横ではニコニコのアリンハンドがビェリーから本を受け取っていた。


「これは凄いですね、この魔法陣は何でしょうか。」

「研究が進みますね。」

「他にも同じ様な本なのでしょうか。」

 アリンハンドと魔導士達は興奮気味に本を囲みのぞき込む。


「アリンさん、次行くよー?」

「はい!ヨリさん!さ!行きましょう!」

 ウキウキのアリンハンドを見てテールカも笑みが戻る。


「あれって危ない本じゃないよね?」

「えぇ、ちらっと見たけれど、しょうもない魔法陣だったわ。」

「なんて書いてたの?」

「探し物が見つかる魔法陣。」

「なにそれ便利じゃん。」

「大事な物を探すならね♪」

 落ち込んだ空気を払拭するようにはしゃぐアリンハンドを見ながら皆は次へ進む、長い廊下が続き同じような部屋が続く、何度かの罠をコンが壊し瀟洒な扉の前に辿り着いた。


「おー、なんかありそう~。」

「結界じゃなぁ。」

「ココもー?」

「うむ、扉に封印が掛けてある。」

「どんな?」

「さぁ?コンどうじゃ?」

「異常に強固な封印ですねぇ。」

「壊せそうか?」

「それは大丈夫です、壊します?」

「うむ。」

 コンは皆を後ろに下がらせると、光の弾を当てる、するとバキバキと音を立てながら封印が解かれていく。


「おわりましたー!」

「おっつー!」

「コンちゃん大活躍だねぇ~。」

 美桜がコンを抱きかかえナデナデしながら褒める、コンは気持ちよさそうに目を細める。


「・・・んぐぃぃい!」

「手伝う・・・んぐぅぅぅぅ!!!」

 千春が扉に手を掛け押すが開かない、頼子も一緒に押すがビクともしない。


「チハル、押してもダメなら。」

「ひいてみろ~。」

 青空と大愛に言われ2人は両開きの扉を片方ずつ手に取り引く。


「んぐぃぃぃぃぃぃ!!!」

「ぬんがぁぁ!!!!」

「ダメじゃーん!」

「引いてもだめだー!」

「私がやってみましょう。」

「手伝います。」

 エーデルとホーキンが変わり、押したり引いたりしてみるがビクともしない。


「鍵掛かってんじゃない?」

 麗奈は扉を見るが鍵穴の様な物も見えない。


「どうしよ。」

「儂がやってみようかの。」

 ロイロが扉を掴む、そして同じ様にやるがビクともしなかった。


「儂がやって動かぬのなら無理じゃな。」

「この扉何で出来てんの?」

「鉄では無いのぅ。」

「んじゃミスリル?」

「どうじゃろうな。」

 千春は扉に手を当て鑑定する。


「・・・鑑定!・・・はい!ミスリルの扉でーす!持って帰りたいな!」

「千春、アレやる?」

「ココごっそり持ってく?」

「扉がダメならアレでしょ。」

「おっけー♪」

 千春は手を前に出し水を作り出すと、頼子はその中に細かい土を混ぜて行く。


「久しぶりのー!」

「ウォーターカッター!」

 2人は楽し気に叫ぶと千春は扉の周りの壁にウォーターカッターを当て切り刻む。


「どうかな!」

「ビェリーここの壁影に落とせる?」

「やってみるばーい。」

 ビェリーは扉の周りを全て影に落とすと、ぽっかりと壁に穴が開く。


「力技だなぁ。」

「またミスリルゲットかー。」

「イロハロボの改造捗るね~♪」

「ウチも何か作ろ~っと。」

「何つくるの?」

「爆炎系得意だから手からバーン!って出る奴とか?」

 ケラケラと話しているとロイロは壁の穴をのぞき込む。


「魔力が動いておるな。」

「何か居るぞ。」

「あれです!人が倒れています!」

「鎖につながれとるばい。」

「人かしら?」

「人とは違う気ニャ、魔物でも無いニャ。」

 ペット達はゾロゾロと中に入る。


「えぇぇ、警戒して入りなよー。」

「普通に入ってくね。」

「何?誰が居るの?」

 JK達も後ろからついて行く、そして鎖につながれた異形を見つめた。






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