貴族!王族!どったばた!
「あなた、そろそろ覚悟をお決めになっては?」
綺麗に着飾った貴族の女性は男に声を掛ける。
「セルイヤ・・・。」
「あなたいまだにドリケリー子爵達を動かしているのでしょう?」
「・・・。」
「私は王妃に付きます。」
「なっ!?」
「シンクもですわよ。」
「娘までもか。」
「えぇ、今ジブラロールに居る貴族令嬢、いえ、他国にも渡りますわ、王妃の一声で動きますわよ。」
「・・・。」
「一つお教えしておきます、ディスカ子爵家、コーブル伯爵家も取り込まれますわよ。」
「・・・。」
インゴール侯爵、王都で二番目に大きな派閥当主であるルビノブ・インゴールは頷く。
「仕方あるまいな。」
「えぇ、娘の事も考えるのであればそれが正解ですわよ。」
セルイヤはそう言うとニッコリ微笑み部屋を出る、ルビノブ・インゴール侯爵は項垂れたまま考える、そして暫く考えると立ち上がり執事を呼んだ。
「ダイス!」
「はっ。」
「オーレン公爵の元へ先触れを出せ、今から行く。」
「了解致しました。」
ダイスと呼ばれた執事は直ぐに部屋を出る。
「時代が変わるな。」
ポツリと呟くルビノブは溜息を吐く、しかし顔には笑みがこぼれていた。
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「メグ、状況はどうなっておる?」
「貴族夫人、令嬢共に受け入れておりますわよ。」
「ふむ。」
「気になる事が?」
「タイキ殿と話をしておったのだが、一つの派閥で固めてしまうと問題もあるとな。」
「・・・そうね。」
「分かってやっておるのか?」
「勿論よ。」
「まぁタイキ殿やイサム殿は王政だから有りだろうとも言っておった。」
「問題が有ればまた考えれば良いのよ。」
「儂の時代に荒波を立ておってからに。」
「息子に継がせる前に整理しておけばゆっくり隠居出来るでしょう?」
「・・・そうじゃな、まだ見ぬ娘の為にも頑張るしかないのぅ。」
エイダンは少し大きくなってきたマルグリットのお腹を見ながら呟く。
「考えるのが辛くなったら娘の名前でも考えてなさいな。」
「うむ、だいぶ絞ったのじゃが、まだ候補が多すぎてのぅ。」
話が逸れ、エイダンの顔に笑みが戻る。
「そうそう、この子の旦那様にといくつか手紙が届いてたわよ。」
「なんじゃと?何処のどいつだ。」
「教えたらあなた乗り込むつもりでしょ。」
「当たり前じゃ!取り潰してやる!」
「バカ言わないの、王家の娘は生まれる前から婚約者が居てもおかしく無いのよ?」
「だーめーじゃ!嫁にはやらん!」
「まったく、それでは私は戻りますわね。」
クスクスと笑いながらマルグリットは立ち上がる、そしてエイダンに挨拶をすると部屋を出て行った。
「ルーカス。」
「マルグリット王妃殿下に教えない様に言われております。」
「貴様、誰の味方じゃ!」
「私は中立です。」
「チッ。」
エイダンは舌打ちをし机にある書類を手に取り仕事に戻った。
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「お父様、お呼びですか?」
「フランシス、すまんな急に呼んで。」
「いえ、如何なさいましたか?」
「うむ、かなり状況が動いておってな。」
オーレン公爵当主、セベラム・オーレン公爵が答える、するともう一人部屋に入って来る者が居た。
「お待たせしたかしら。」
「ベニファ、フランシスもそこに座ってくれ。」
セベラムが言うと、2人は目を合わせ微笑む、そしてソファーに座るとセベラムが話し始める。
「・・・知っておるとは思うが、敵対派閥の者がこぞって挨拶に来ておる。」
「フフフ、娘と妻には百戦錬磨の当主でも勝てないようですね。」
「学園でも貴族令嬢は血眼ですもの。」
事情を知る2人は笑みを浮かべる。
「裏で動く者も居るだろう、これからお前達に危険があるかもしれん。」
「そうですわねぇ。」
セベラムの言葉に軽く答える妻ベニファ、フランシスもすまし顔でお茶を口に付ける。
「何処で何があるか分からぬ、護衛を増やす、外に出る時は必ず連れて行くように。」
「分かりました。」
「はい。」
素直に返事を返す2人。
「お前達落ち着きすぎだろう。」
「まぁ、そうですわねぇ。」
「不安はありませんから。」
「フランシス、その自信は何処から出ておるのだ?」
「私、女神様の加護を頂いておりますので。」
「は?」
「チハル王女殿下の秘密を知る1人としての特権ですわ。」
「な・・・?」
「チハル様のお友達として女神アイトネ様から頂いております。」
口をポカンと開けたまま固まるセベラム。
「その加護とはどういった・・・。」
「さぁ?」
「分からないのか?」
「はい、ただ危険な事が起きればお相手の方が・・・。」
「・・・ふむ、そうか、分かった、しかし気を付ける様に。」
「「はい。」」
セベラムが言うとベニファとフランシスは返事をし部屋を出て行った、入れ替わりに執事が部屋に入る。
「旦那様、インゴール侯爵の使いが来ております。」
「用は?」
執事は手紙を渡す、セベラムはナイフで封を開けると手紙を読む。
「・・・はぁぁぁ、インゴールか、あそこも終わりか。」
大きく溜息を吐くとセベラムは立ち上がる、そして執事に指示をしセベラムも部屋を出て行った。
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「こんちゃー!アリンさん!」
「いらっしゃいヨリさん。」
学校から帰って来た頼子はアリンハンドの部屋に突撃する。
「元気ですねぇ。」
「ふっふー!あ!ドーナッツ食べる!?」
「いただきます、お茶準備しますね。」
アリンハンドは侍女に声を掛けお茶の準備をさせる。
「ふんふ~ん♪」
皿を影から取り出しドーナッツを並べる頼子、アリンハンドは思わず笑みを浮かべる。
「ヨリさん。」
「なーにー?」
「ヨリさん今巷で何と言われてるか知ってます?」
「は?千春王女殿下の友達?」
「いえ、美の聖女だそうです。」
「・・・・・・ハァア!??!??」
「あははは、そう言う反応になりますよねぇ。」
「なんで私が聖女なのよ!」
「ヨリさんだけじゃ無いんですよコレが。」
「へ?」
「チハルさんは言わずもがな、れっきとした聖女なのですが、食の聖女と言われてます。」
「あー分かるわぁ。」
思い当たる節しか無く、頼子は笑いながら侍女からお茶を受け取る。
「あとはミオさん。」
「へ?ミオも?」
「はい、戦聖女だそうです。」
「どういう意味?」
「よくエーデル団長と居るでしょう?」
「らしいね~。」
「兵士達の中でミオさんふぁんくらぶと言う物があるらしく。」
「ぶふぅっ!!!!!!」
盛大にお茶を拭きだす頼子。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ごめんなさい!」
頼子は影からタオルを取り出しテーブルを拭く。
「で!?ファンクラブがどうしたの!?」
「ミオさんが兵士を応援すると兵士達の士気が爆上がりだそうで・・・。」
「なにやってんのミオちゃん。」
「それで周りから付いた二つ名が戦聖女だそうです。」
「本人知ってんのかなぁ。」
「多分知らないんじゃないですかね、あとはレナさん。」
「レナもぉ!?」
「はい、精霊聖女と。」
「うん、そのまんまだね、実際ドワーフ国で聖女扱いされてたもん。」
「らしいですねー、上位地の精霊を祀ってますから、あとは風や水、炎の上位精霊ですからね。」
「木もだね。」
「はい、その上位精霊を祀る種族って結構いるんですよ、主に妖精族なんですが。」
「あ~・・・。」
「それでジブラロールに居る妖精族からそう言われてます。」
「まぁ・・・うん、皆やらかしてっからなぁ。」
そう呟きドーナッツに齧り付く頼子、青空や大愛、そして日葵にも二つ名がある事は後日知る事になる。
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