本郷-11

 14、5人で構成された集団。ワクチンや獣人に対する暴言が書かれたタオル、プラカードを掲げている。

 共通しているのは全員黒いとんがり帽子を被り、色とりどりのローブを羽織っている点だ。


 赤志は顔を引きつらせながら口を開く。


「あれは、新手のコスプレ集団か? 目に悪いな」

「ハロウィンって今月だっけ?」


 赤志の脇からひょこっと顔を出したジニアは集団に目を向ける。


「「グリモワール」。2年前から存在している反ワクチン団体です。新しいワクチンが出てから、活動が活発化しております」


 本郷が2人に説明した。


『我々の支部近くにワクチン接種会場を作るなー!!』

『不当な占拠反対ー!!』


 集団の声がますます大きくなる。赤志は片目だけ吊り上げて本郷を睨む。


「嘘吐け。あんな面白集団知らねぇぞ」

「ニュースでもたまに取り上げられてます」

「マジか。見逃してたのかな。で、あの見るからに頭の悪そうな団体どうすんの」

「お菓子でもあげれば喜んでくれるかな?」


 未だにハロウィンと勘違いしているジニアに、本郷はクスッと笑ってしまう。


「あれはこちらで適当にあしら、じゃなかった。対応しておきます」


 飯島はそう言うと、頭を下げた。


「事件の解決、本当に感謝します。赤志さんたちが普段通りの生活を送れるよう、こちらで対応します。お帰りいただいて結構です。本郷も今日は帰れ」

「承知いたしました」

「おっけー! んじゃあ帰るわ」

「あ、あの」


 ジニアが飯島に駆け寄る。


「ん? どうしたのかな?」

「あの、本当にごめんなさい」


 頭を下げた。


「私が悪いんです。アカシーサム、いや……赤志、さんや、本郷さんが、大変な目に遭うようなら、私を異世界に」

「おいおい待て待て。やめてくれ。子供に頭下げられるのは辛い」


 飯島が膝を折った。


「顔を上げて。大丈夫。あの魔法はを止めようと使っただけ。でしょう? ジニアさん。キミに責任はあれど、しっかりと罪を償った」

「でもそれはアカシーサムが頑張ってくれただけで」

「一緒に現場に来て対応してくれました。それで充分です」


 優しい目をする飯島に、ジニアは一度口を閉じ。


「ありがとうございます」


 ゆっくりと頭を下げた。


「しっかりした子だな」


 少し離れた場所にいた本郷は、赤志に言った。


「だろ。まぁ、異世界に帰った方がジニアのためかもな」


 赤志は欠伸をした。時間帯は深夜だった。


「赤志さん」

「んあ?」

「終わってから言うのもなんですが、この依頼。あなたはもっと苦言を呈してもよかったと思います」

「別にいいよ。俺のバカな行いを償えたし事件も解決して人助けもできたしね」


 そう言って踵を返す。


「待ってください」

「まだ? なんだよ」

「連絡先を交換しませんか。「シシガミユウキ」のことを聞きたいでしょう」


 欠伸を噛み殺した赤志は口角を上げる。


「いいよ。あんたはとやらと違って、話ができそうだし」

「ありがとうございます。もし「シシガミユウキ」を見つけたらひとりで会わず、絶対に連絡してください」

「こっちの台詞だ。抜け駆けすんなよ」


 赤志はLienリアンを起動し連絡先を交換する。3人しかいない友人が、4人になった。


「じゃ、帰るわ」

「送っていきましょうか?」

「いい。できるだけ歩いて帰りたいんだ」


 赤志の傍らにジニアが近寄った。ジャケットの裾を掴み、赤志を見上げる。


「ジニアと一緒にな」

「そうですか。では、お疲れ様でした。赤志さん。ジニアさん」

「本郷さん」


 ジニアが思案顔で本郷を見上げる。


「はい」

「ひとつ、聞いてもいい?」

「どうぞ?」

「身長何センチあるの?」

「……200センチジャストです」

「うわぁ。アカシーサムでも大きい」

「デカすぎだろ。体重は?」

「118キロですね」

「怪獣みたい」


 本郷はとうとう噴き出した。


「なぁあんた本当は機械人間とかじゃないの? ほら。未来からきた殺戮マシーンみたいな」

「本当? 目からビーム出たりするの?」


 肩を竦める。話をしているとこの2人が、ただの一般人にしか思えなかった。

 くだらない話をしながら3人はその場を後にした。

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