りおんフレンド-003
「それで、その右腕どう使うつもりなんだ? まさかずっとそのままって訳にもいかないだろうし、かといって何にも使えないなら斬り落とすしかないと思うんだけど」
「ああ、それなんだけどな、俺とじいさんはこれを触媒に出来ないかって考えている。どうだ? 甘楽」
「触媒って……つまり、第四の破滅を召喚するって言いたいのか? ああ、だから俺なのね……」
召喚とは、ざっくりと言ってしまえば空間転移の魔法魔術である。仕組みとしては、学園から第七秘匿機関本部に飛ばしてくれるアレと大体同じと言って良いだろう。
原作にはない癖に技術自体は広く知られてるのは何なんだろうな……。
まあ、校長クラスでもないと使えないからほとんどどうでも良かったのだが、第三の破滅を触媒に第四の破滅を召喚するとなれば、そうも言っていられない。
触媒とは、自身とは無関係な物だったり生物を、強制的に呼び出す時に使う代物だ。
竜の鱗があればどっかの竜を引っ張り出すし、上級魔獣の血を使えば同じ血が流れてる手ごろな上級魔獣が呼び起こされる。
とはいえそこに、契約等や上下関係というものは一切存在しない。
文字通り、その場に召喚するだけである。言い換えれば、空間転移させるだけな訳だからな。当然だ。
で、今回は『第三の破滅』という超級の触媒と、俺の魔導を用いた召喚によって、第四の破滅を無理矢理引きずり出したい、という訳だ。
七つの破滅は既存の魔法魔術や呪術に当てはまらないが、魔導に関してはそうじゃないっぽいからな……。
「出来そうか?」
「出来ると思うけど、幾つか問題があるな」
細々と数えればそれこそキリがないほどにはあるのだが、その辺は周りが解決してくれるだろう。
だから、要点だけを告げる。
「一つ目、第四の破滅の憑依先がない。生半可なものじゃ多分憑依させられないし、それは自動的に召喚の失敗を意味する」
「大丈夫だ、そこは既に目星をつけている」
「二つ目、準備は万端にしても普通に失敗する可能性がある。そうなったら多分俺は死ぬし、二度と誰も召喚出来なくなってしまう」
「し、死ぬのか……?」
「当たり前だろ、ただでさえ魔導はハイリスクな代物なんだぞ……」
魔導で召喚するということは、イコールで俺が一人で七つの破滅と精神的な接触を行うということと同義だ。
イメージとしては触媒がナビで、俺はそれを元に運転するドライバーってところか。で、車が魔導。
車に召喚する対象を紐づけして帰ってくる感じだ。
だから、失敗をするなら紐づけするタイミングであり、そこで失敗するなら逆に俺が破滅に持っていかれることを意味する。だから死ぬ、精神的な意味合いにはなるが。
「植物状態になるんじゃないかな、まあそうなったら解剖やら何やらして役立てて欲しいところだ」
「自分の生死にかかわってくるってのに、随分ドライなんだな。甘楽は」
「や、そりゃ生きていたいとは思うけど、どうしようもない時ってあるだろ?」
とか何とか言っているのを聞かれたら、それこそ月ヶ瀬先輩に監禁されそうなものだな……と身を震わせた。
大前提なので特に語ることはないが、俺は死にたい訳じゃないし、むしろ生きたいと思っている方ではあるんだけどな。
「で、三つ目。単純に第四の破滅に勝てない可能性がある。第二の破滅ですら俺は真っ当に死にかけたし、第三の破滅についてだって──」
「──直接戦闘をした訳じゃないからな、戦闘力が測れないってか」
「そういうこと。ぶっちゃけ俺は一対一で勝てる気はしない……」
「なぁに、俺がいるさ。俺たちは主人公だろ? そんな俺と、甘楽が組めば勝てるだろ」
「何なのその謎の自信は……」
いや、確かにリオンの実力が相当上なのはもう、先程ので充分に分かったのだが。
リオンの俺に対する信頼は何なんだろうな。
それに主人公というのなら、それは立華くん(ちゃん)なわけだし……。
不安は拭えない──多分、どれだけ戦力を集めても拭えないんだろうな、と思った。
分からないという事実がもう怖い。誰だって、そういうものだ。
「でも、この問題点と釣り合うくらいにはメリットもあると思ってる」
事実、こちらで場所を決められ、タイミングも定められ、戦力も十全に備えることが出来るのは、これ以上ないメリットだ。
俺としてはやらない手が無いと言って良いほどには。
中々無いどころか、これをやらなかったら、こんな好条件で戦えることなんてまず無いだろう。
「だからまあ、校長の説得は俺がやるよ」
「? いや、そこに話はもう通してある」
「は?」
「だからこれは、甘楽に対するただの事前確認だ。そっちの校長が、本人が了承しないのならばこの話はなしって言うからさ」
「は???」
「つまり、決行日はすぐそこってことだ。具体的に言うなら二日後だな」
「修学旅行最終日じゃねぇかそれは……!!」
「ハハッ、悪いねぇ」
帰るまでが修学旅行って言葉を知らねぇのかよ! 俺にもまったり最後まで楽しませろよ! 帰りの飛空戦艦内で思い出を語らったりさせろ!
クソッ、ここまで全部大人共の掌の上だったのかと思うと猛烈に反発したくなってきた。
「わざと植物状態になって滅茶苦茶に曇らせてやろうか……?」
「それはマジでやめろ」
マジのガチな顔で言うリオンだった。
ご、ごめんってばよ……。
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