#2 part2

「はい、ではやってまいりましたブルペンラジオ。引き続き視聴者の方々から寄せられたお便りを呼んで行きましょう! 先ほどは芝崎さんに読んでもらったので、今度は僕が読んで行きましょうかね。なっにが出っるかな~♪ なっにが出るかな~♪ はいこれ! えーペンネーム、『ハラミ先生』さんから。この前の『とりから』君といいみんなお肉が好きなのかな? みんなお肉大好きだろうけどちゃんと野菜も食べましょうね、あと大きくなりたいなら米食え米。実はうちの実家米農家なんで、がんがん消費して日本の農業を守っていきましょう。はいそんな事はどうでもいいんですよ。送ってくれたんだからありがたく読みましょうね芝崎さん」


 


 


 


「え、何?」


 


 


 


「どうやら芝崎さんは耳に水でも入ってるようですね。ほっといて質問に入りましょう。『黒鵜座選手、芝崎選手、こんにちは』、はいどうもこんにちはー、ほら芝崎さんも手振って」


 


 


 


「そういうのはお前に任せる」


 


 


 


「ええい、ごちゃごちゃうるさいわ! これもファンサービスなんだよ!」


 


 


 


 黒鵜座の言葉に少し不満そうな表情を見せるも、ファンサービスという言葉に反応したのかため息をついてカメラに向けて手を振り始める。


 


 


 


「ファンサービスって言っとけばほとんど何でもする当たり芝崎さんって思いの外チョロいっすね。まぁいいや、続き話します。『僕は野球は未経験ですが、野球ゲームが好きな高校生です』、はーなるほど僕も好きですよ野球ゲーム。特に選手のデータを見てこの能力は違うだろっていちゃもんを付けるあたりが特に」


 


 


 


「性格悪いな」


 


 


 


 黒鵜座が眉をひそめる。アンタもアンタでかなりの天然でしょうが。そういう人の方がよっぽど扱い難しいんだぞ、現に今僕はアンタの扱いに苦労しているんだし。


 


 


 


「まぁよく周りからはそう言われますが。野球選手は素行で問題さえ起こさなければ別に性格なんて多少悪かろうがどうだっていいわけですよ」


 


 


 


「お前そんなんだから女性人気ないんだぞ」


 


 


 


 せっかくいい事を言ったのに水を差すんじゃない。というか既婚者は黙ってやがれ。黒鵜座、性格が悪いというか子供よりである。


 


 


 


「うるさいなぁちょっと声がいいからって調子乗んなよ! ……ごほん、失礼しました。続きですね。『その中でも特に好きなのが今はやりの野球ソシャゲのプロ野球スターズというゲームで、よく他のユーザーと対戦をするのですが、黒鵜座選手の能力が弱すぎます! 黒鵜座選手からも何とか言ってやってください! 後、芝崎選手は強いのでよく使っています! これからも頑張ってください!』だそうです。良かったっすね芝崎さん、ついで程度ですけど」


 


 


 


「……そもそもプロ野球スターズってなんだ?」


 


 


 


 純粋な疑問―――。芝崎怜司、33歳、既婚、これまで野球一筋でやってきた男。彼が若いころにはソシャゲはあったかもしれないがスマホなんてものはまだ黎明期である。ゆえにゲーマーでない以上知らなくても当然といえば当然の話ではあるのだが。


 


 


 


「あー、そこからっすか。面倒くさ……いえ、何も言ってないですよ。ほんとほんと。だからその疑いと軽蔑に満ちた視線を送るのやめてもらっていいっすか」


 


 


 


 説明しよう! プロ野球スターズとは! 今野球のソシャゲの中で最も売れているゲームと言われている(他に競合するゲームがほとんどない)! 実在の選手達をガチャで手に入れ、自分だけのオールスターを作り上げようというゲームである(ここまでゲーム説明文)! イベントなども様々行っており、そのフォームの再現度の高さから選手達からの人気も高い。さらに前述の通り他のユーザーともリアルタイムで対戦が出来るなどファンを楽しませる要素も多い。


 


 


 


「……まぁ大体そんなとこです。分かりましたか?」


 


 


 


「そんな事より普通に野球した方が楽しくないか……?」


 


 


 


「ちょっと身もふたもない事言うのやめてもらえます? これ一応ゲームの親会社色んなチームのスポンサーやってるんすよ。それ言っちゃうと球団から怒られちゃうかもしれないんで」


 


 


 


「……野球ゲーム、楽しい」


 


 


 


「それもう言わされている感半端ないんですけど、かえって逆効果なんですけど。あーもういいや、こんなオールドタイプのおっさんは置いといて答えましょう。実は僕もですね、軽ーくなんですけどこのゲームやってるんですよ」


 


 


 


 今はスマホ鞄にあるんで見せられないっすけど、と黒鵜座が付け足す。


 


 


 


「まぁあのゲームに関しては言いたいことも色々ありますけど。ゲームだから仕方ないとはいえ普通の配球が通用しないんすよね。さんざんインコース意識させても外角のボールに踏み込んでくるんですから」


 


 


 


「なるほど、全員が好打者になると。それは厄介だな」


 


 


 


「まぁそんなところです。つってもウチのチームの選手は弱いもんですよ。長距離砲が外国人くらいしかいないものだから、ホームランが大正義なこのゲームにおいてはよほどファンじゃない限り打者が使われる事は無いですね残念なことに。唯一選手が足の速さとパンチ力から使われることが多いらしいですけど」


 


 


 


「それで手紙で言われていたお前の能力が低いというのは」


 


 


 


「あー、このゲームのウリはやっぱりプレイヤー同士の対戦なんですけど、僕そのモードで全く使われないんですよね。本人の僕ですら使わないレベルなんで相当ですね。何でかって言うと球種が少ないんすよ。えー確かストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップ。このゲームでのチェンジアップは変化量関係なくすごい弱いんであんまりというかかなり弱いですね。まぁさらに言うならスライダーもカーブもそんなに使わないけど、っとそんな事言ってたらまた能力下げられちゃいますね。せめてストレートが上方向に変化するように設定してくんないかなー、みんな僕のストレートは『浮いて見える』って言うくらいだし」


 


 


 


「よく分からんな」


 


 


 


「ま、所詮ゲームはゲームですよ。それで芝崎さんが強いって言われるのはツーシームを投げられるからですね。あのゲーム速いボールが強くて、それが変化するとなればなおさら強いんですよ。芝崎さんよくツーシーム投げてますよね」


 


 


 


「そうだな、結構よく投げる」


 


 


 


「つまりはそういう事ですよ。あーあ、僕もめちゃくちゃ強化入らないかなー! ……あ、そろそろCM入るそうです。それでは皆さん、チャンネルはそのままで!」

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