エピソード3:ホブ・ゴブリンと借金取りと

 それからゴブリンの二匹組と三匹組を倒したところで、レベルが上がった。レベル2の脇に(+1)という表示が出てきた。


――これって、ステータスのどれかに割り振れるってこと?


<そうだ。生命力に割り振ればHPが10増える。知性ならMPが10増える。力強さはそのまま筋力だな。素早さもそのままだが、君の場合はスケッチする速度も上がるだろう。器用さはスケッチして実体化する時の再現度だが、現状のままでも問題は無いだろう>


――ホブ・ゴブリンやオークを素早くスケッチするのなら、素早さを上げておくべきね。上げておいたわ。


<最悪の場合、逃げ足にも活きるからな。無駄にはならない>


――そういうことが起こらないよう願いたいものね


<全くだ>


 そんな脳内会話をしていると、偵察で先行させていたウサ助が戻ってきた。お目当てのホブ・ゴブリンを見つけてくれたらしい。

 ウサ助とゴブ助だけ連れて、茂みに隠れつつ近づいていく。都合良く、腰を下ろして休憩しているところだった。何かゴブリン語で話しながら、ホブ・ゴブリンが「おい、お前、なんか一発芸やれ!」とか無茶ぶりして、「えー、またっすか!?もうネタ切れすよ!」とか言って殴られつつ変顔したりみたいな?

 コミュニケーションがゴブリン同士の間では取れるみたいだし、知性めいたものもあるのだろう。しかしそこら辺を斟酌する余裕は私には無い。さっさとスケッチブックと鉛筆を取り出して、ホブ・ゴブリンをスケッチしていった。

 体の大きさは、普通のゴブリンの1.5倍、大人の人間男性くらいはあって、筋肉の厚みは普通の男性よりはだいぶたくましい感じだ。普通のゴブリンなら、3体から5体でかからないと相手にならないだろう。


 さて、座ってる姿はスケッチ出来たので、後は立ち姿だ。少し離れたところにウサ助をうろちょろさせて、ゴブリン達に気付かせた。そこから適度な速度で逃げさせてゴブ助が待ち伏せポイントから飛び出し、持たせておいた槍で一突きすると、ウサ助を追ってきてたゴブリン二匹の片方を倒せた。

 そこでさらにもう一匹に手傷を負わせたら、グラハムさん達が待ってるところに向けて後退していく。もちろん、ホブ・ゴブリンとゴブリン二匹も怒り心頭って感じでゴブ助達を追っていった。

 私はスケッチブックにその姿を描きながら、後ろからこっそりと追っていった。


 ゴブ助が少し開けた場所に駆け込むと、通りすがりの手負いのゴブリンの顔にグラハムさんが盾を叩きつけて転倒させた。ゴブ助が胸に槍を突き込んで、とどめを刺した。

 ホブ・ゴブリンは怒り狂ってグラハムさん達に突進していく。グラハムさんは後退しつつ盾を構え、ゴブ助はその背後で槍を構えた。

 ホブ・ゴブリンは手にした大きな棍棒(ただの頑丈そうな木の枝)をグラハムさんの盾に叩きつけるも、グラハムさんはしっかりと防いで揺るがなかった。何発殴りつけられても危なげなかったけれど、残りのゴブリンの片方が死角となる右手側から回り込み、もう一匹はゴブ助の方に向かった。


 グラハムさんはゴブリンからの攻撃を防いだけど、そこにホブ・ゴブリンが大きく振りかぶった棍棒が振り下ろされてきた。

 グラハムさんがその場から飛び退いてかわすと、棍棒が強かに地面に打ち付けられて、動きが一瞬そこで止まった。

 ホブ・ゴブリンはぎろりとグラハムさんをにらみつけたのだけど、その頭上から、「ファイア!」というオールジーさんの声とともに火の玉が飛んできてホブ・ゴブリンの頭に直撃した。

 ホブ・ゴブリンは燃えた頭を抱えながら、頭上の枝の上にいるオールジーさんを見つけて棍棒を投げつけようとした、のだけど、私が実体化したホブ・ゴブリンのホブ助が棍棒を横に振り抜いて、燃える頭を半回転させて、地面に大の字になって倒れる方が早かった。


 ボスだったホブ・ゴブリンがホブ助に倒され、残りのゴブリンは逃げようとしたけど、グラハムさんに絡んでたゴブリンは後ろからウサ助に太股を角で突かれたところを、グラハムさんに盾の縁で首の骨を折られて倒された。残り一匹は背中から胸をゴブ助に槍で突かれて倒されていた。

 この戦闘だけで、経験値は13も増えて、レベルも3に上がった。ゴブ一匹で2ずつで8に、ホブ・ゴブリン一匹で5で13だろう。美味しい。


「まさか、これだけの相手を倒せるとは」

「大勝利じゃない!」

 木の幹に抱きついてずりずりと降りてきたオールジーさんはグラハムさんを労ってから、私に抱きついてきた。

「すごい、すごいわ、アヤ!あなた最高よ!この眼鏡のおかげで、今まで狙ったところに飛ばせなかった魔法がどんぴしゃりで命中したわ!」

「あー、それは、お役に立てたようで何よりです」

「もう、この眼鏡無しでの戦闘なんて考えられないわ!」

「これからもお互い助け合えるのなら、私にとっても何よりですが」

「もちろんよ。ねぇっ、グラハム、そうでしょ?!」

「ええ、そうですね。アヤさん、このホブ・ゴブリン、完全に制御されてるんですよね?」

「いきなり暴れ出さないかとかっていう心配をされてるなら、これまでのウサ助とかゴブ助と同様、心配無いですよ。ね、ホブ助?」


 ホブ助はしっかりうなずいてくれたのだけど、グラハムさんは苦笑いしていた。

 私は空を見上げて、まだ午後も半分近く残っているのを確かめてから二人に言った。


「まだまだ陽が落ちるまで時間あるでしょうから、稼ぎましょう。敵の数が多い場合は、さっきみたく待ち伏せする感じで」

「ええ!」

「はい・・・」


 討伐証明の耳とか魔石を取り出した後は、これまで以上にさくさくと狩りが進んだ。最後は、ホブ・ゴブリンが二匹に、魔法を使うゴブリン・メイジに、ゴブリンが五匹という集団を相手に、撤退戦をしかけて雑魚ゴブリンの数を減らしつつ、相手の隊列が伸びてホブ・ゴブリン達がゴブリン・メイジの側から離れていったところで、最後尾のメイジの背後からホブ助を実体化。一撃で頭を胴体の中に陥没させて沈めた。

 挟撃されたと気付いたホブ・ゴブリンが手下三匹と引き返してきたけど、実体化させたゴブリン・メイジ、メイ助の魔法の援護射撃を受けたホブ助がホブ・ゴブリンを圧倒。残り三匹のゴブリンはウサ助が足下を攪乱しゴブ助が手傷を与えていく事で、損害無く倒し切れた。


 グラハムさん達はロープをかけた太めの高い木の上から、オールジーさんが魔法攻撃で打ち下ろし、すでにゴブリン二匹を倒して、残ったホブ・ゴブリンもあちこちに火傷を負っていた。これもさっくりとホブ助達に倒してもらった時には、私のレベルは5に上がり、だいぶ陽も落ちてきてたので、ほくほくの収穫と共に急いで街へと駆け戻った。


 受付カウンターでは3人で戦利品を出した。私が登録した時のおばさんがいたのでそこで。

「これを、あなた達が?」

 という疑う台詞は、私ではなく、私の前に並んでいたグラハムさんとオールジーさんに向けられたものだった。

「ああ。今日私達のパーティーに加わってくれたアヤのお陰で」

「詳細は、聞かないでね」

「ゴブリン一匹を狩るのにも苦労してたあなた達がねぇ・・・。それだけ後ろの子がすごかったって事なんでしょうけど」

「運が良かったなと思います」

「初日からこれだけ無茶をするって事は、それだけの何かがあったんだろうけど。ええと、ホーン・ラビットが5匹、ゴブリンの耳が59個、ホブ・ゴブリンの耳が5個、ゴブリン・メイジの右手が1個。

 それぞれ銅貨5枚、銀貨1枚、5枚、7枚の報酬だから、ええと」

「銀貨2.5枚と59枚、25枚と7枚、全部合わせて、93.5枚、かな」

「カナ、暗算もすごいのね」

「あはは。こっちでも確認するから待っててね。魔石はどうするの?」

「手元に残しておこうかと」

「そう、そしたら3人とも、冒険者カードも預かるわ」


 狩りの間に、ディルジアに魔石の魔力バッテリー的な使い道があると聞いて、少なくともこの三日間の魔石は全部渡してもらう事にしたのだ。


「カナはすごいわね。初日でいきなりランクアップ確実よ」

「お二人のお陰です。一人なら絶対に無理でした」

「手助けが本当に必要だったのは、最初だけだっただろう。半ばからは」

「いいえ。お二人がいてこそです。明日からもよろしくお願いしますね」

「こちらこそ!」

「ああ・・・」


 さっきのおばさんが、お金と冒険者タグをトレイに乗せて戻ってきた。

「お待たせ。金貨9枚に銀貨3枚、銅貨5枚よ。グラハムとオールジーはストーンからカッパーに、アヤはウッドからストーンにそれぞれ昇格。アヤはほとんど銅になるだけのポイントは貯まってるんだけど、一日に二つ階級上げるのはいろんな制限があってね」

「かまいません」

「それで、申し訳無いのだけど、一応の不正してないかの確認の為に、魔石をこのトレイにあけてもらってもいい?」

「どうぞ」

 私がざららっと皮袋に入れてた魔石をあけると、そのうちのいくつかの大きめな物をおばさんは確認して言った。

「うん。全部討伐証明の物と揃ってるわね。戻してもらって結構よ」

 私はまたトレイから皮袋に魔石を戻し、茶色から灰色になったタグを首にかけ、報酬のお金はグラハムさんからいったん私に渡されそうになったところで、横合いから邪魔が入った。


「おいおい、グラハム、景気良さそうじゃねぇか?そいつは利子としてもらっておこうか」

 いかにも荒くれ者といった感じのがたいの良い酒臭い男がグラハムさんの手首を掴んでぎりぎりと力をこめていた。

「レイグ!支払いの期日まではまだ四日以上ある!」

「さんを付けろよ、片手落ちの騎士さんよぉ!」

「あなた達!ギルドの中でのもめ事は禁止だと何度言えばわかるの!?」

「アマンダは引っ込んでろよ。そこの落ちぶれお嬢様が俺の仲間をその魔法で誤射した時の治療費がかさんでてな。俺らへの借金って扱いになってんだよ」

「借金は金貨十枚という約束でしたわ。それを十日以内で返せば利子もつかないと」

「それは治療費だろ。えーと、なんつったかな」

「お詫びの気持ちを込めた慰謝料と、十日間働けなかった事への補償費なんかを込み込みにして、ひっくるめて金貨三十枚でさぁ、兄貴!」

「おお、お前は物覚えだけはいいなギュルエ!てわけで、この金と、残り二十枚きっちり払ってもらおうじゃねぇか。払えねぇなら、お嬢様の体で取り立てさせてもらうぜ!」


 げへへへ、と、ヤクザとその手下のちんぴらABCという感じで、いつの間にか囲まれていた。にしても、ギルドのカウンターの目の前だ。

 私はいろいろ確認する為、まずは尋ねてみた。

「借金の証文はあるんですか?」

「もちろんあるぜぇ?てお前は誰だ?ていうかお前がこいつらを手助けして稼いだっていうんなら」

「あなた達にはとりあえず関係の無い話です。先に証文を見せて下さい」

「ちっ。おいっ、ギュルエ!」

「はいはい、こちらになりますよっ、と」


 ネズミの様な小ずるそうな外見の男が渡してきた証文には、確かに、『冒険者ボーロンにオールジーがその魔法で負わせたケガの治療費等として、金貨十枚を支払う。十日以内に支払えば利子は発生しない』と書かれていて、ボーロンとレイグ、グラハムとオールジーの署名もあった。

「お二人とも、この内容で覚えてる内容と相違ありませんか?」

 グラハムとオールジーの二人ともさっと簡潔な内容に目を通してうなずいた。

「ちなみに、証文の写しはもらって無いのですか?」

「・・・いいえ」


 もう先が読めてしまった。ギュルエという男が証文を裏返すと、その隅にはもう一文が小さな字で書き添えられていた。

『なお、精神的苦痛に対する慰謝料や、冒険者として活動できなかった間の補償に関しては、別途請求される』


 めちゃくちゃ古典的な手段だけど、写しをもらってなかった時点で、これが後から書き加えられたものかどうかは水掛け論になってしまう。

 心底驚いて抗議してるグラハムさんとオールジーさんはいったん無視して、アマンダさんに質問した。

「治療費の金貨十枚というのは、妥当な額でしょうか?」

「火の魔法で傷を負ったって事は火傷でしょうね。ダメージそのものは治癒魔法で治せたとしても、火傷の跡とか古傷のひきつりのようなものは中々治せなかったりもするわ。だから、一概に安いとも適切とも高すぎるとも言えないわね」

「精神的苦痛に対する慰謝料なんてのも言い値でしょうしね」

「そうね」

「後は、このボーロンという冒険者が一日金貨一枚も稼げるような人だったんでしょうか?」

「そこのレイグはアイアン級でそのパーティーの一人のカッパー級ね。パーティー全体としては、活動すれば一人一日金貨一枚稼いでいてもおかしくはないでしょうけど、これまでの実績からすれば」

「余計な事は言うんじゃねえぞ、アマンダ」

「余計な事じゃなくて必要な事でしょう。一日働いたら二三日は休むのがあなた達なんだから、十日の内三日働いたとして金貨三枚が妥当なところね」

「いやいや、その理屈は通りませんよ、アマンダさん」

 ギュルエが反論した。

「どうして?」

「奴はうちのパーティーの潤滑剤。攻めも守りも出来る遊撃だったんです。これからオークの群を刈り込もうって時に、普段より安定を求める為に、お二人だけだと苦労してるこちらの方々をパーティーに入れて差し上げたら、不幸な事故が起こってしまった。

 俺らだって、あれが故意だなんて言ってませんよ。でもね、普段より少ない人数でオークの群に挑むなんて無謀でしょう?うちらなら、一日でオークの二、三頭は狩れておかしくない。それが例えば十日の間に三日だったとして十頭だ。常設依頼なら金貨二十枚、群の討伐の方なら金貨三十枚。

 それが治療費とひっくるめて金貨三十枚っていうなら、むしろ良心的じゃねぇすかねぇ?」


 まったく、小賢しい。アマンダさんも、グラハムさんもオールジーさんも悔しそうに震えながらも何も言い返せないでいた。

 仕方ない。


「グラハムさん。あなたとオールジーさんは、今日の午後はお二人に銀貨二枚ずつの契約で雇った。間違いありませんね?」

「あ、ああ。間違い無い」

「そして明日から二日間は、お二人に銀貨五枚ずつで雇いました。そうですね、オールジーさん?」

「はい、そうですわ!」

「そういう事ですので、そのお金はいったん全部私に渡して下さい」


 グラハムさんは手首をレイグに握られたままだったけど、手のひらを開いて私に渡してくれたので、私はそこから銀貨を二枚ずつ取って二人のポケットに押し込んだ。

「いまさらごねても言い逃れされるでしょうから、上限を決めて下さい。期日ぎりぎりの十日目までかかったら金貨三十枚を上限として支払う、ときっちりこの証文の裏にでも書いて下さい。ちゃんと払いますから」

「お前、新人のくせにふかしてんじゃねぇぞ?」

「あら、登録したての新人が、ゴブリン一匹ですらろくに倒せなかった二人を連れてただけで、今日の午後だけで金貨十枚近く稼ぎましたが何か?」

「う・・・」

「あなたが登録した時には、出来たんですか?」

「い、いや、そんなの、普通は出来っこ無ぇんだよ!」

「でも、私には、いえ、私達には出来たんですよ。

 それはさておき、十日間までなら最大で金貨三十枚なんですから、一日当たりなら金貨三枚です。つまり、九日目までなら二十七枚、八日目までなら二十四枚、七日目までなら二十一枚に減りますよね?」

 私はレイグではなくギュルエの方に言った。

「あ、ああ。もし出来ればの話だが」

「明日か、遅くても明後日くらいにはお支払い出来ると思いますよ。じゃあ、ちゃんとした証文を作りましょうか」

 私は背負い袋の中に手を突っ込んでスケッチブックを出し、ページを一枚破いて取り出して、アマンダさんに証文の内容を写し取ってもらい、支払い上限額と、いつまでに払えばいくらというのも表にして書き込んでもらった。

 双方が内容を確認して、私がスケッチブックの紙の方を、相手は元々の方のに書き加えられた方を手元に留め、明日以降、いつでもお金が出来た時に冒険者ギルドのカウンターに支払い金額を預けておき、レイグ本人なら引き取れるように手続きしてもらった。正式な依頼を出そうと思ったけど、乗りかかった船という事でアマンダさんが処理してくれた。


「子分に渡したけど、ボスは受け取ってないとかで二重払いさせられるとか、あり得ないしね。ボスに渡しても同じ事言われたかもだけど」

「あのなぁ、俺達でも一応は犯罪者じゃなくて冒険者なんだよ。そこまであこぎじゃねぇ」

「借金十枚って言っておいて三十枚ふんだくろうとする奴らがあこぎじゃないとか言われても到底信じられないけどね。

 ええと、アマンダさん、この街で一番信頼が置けて、融通が効く武器防具屋さん紹介してもらえませんか?この時間でまだ開いてたりすると最高なんですけど?」


 そして私は、教えてもらった場所へとグラハムさん達に案内してもらいながら向かった。

「アヤ、先ほどはすまなかった。そして助けてくれてありがとう」

「いいえ、どういたしまして。困った時はお互い様って事で」

「私達だけでは、一日に金貨どころか銀貨数枚稼げるかどうかという窮地だった。ほとんど宿代や食費などで消えてしまっていて、なけなしの蓄えも底をついてしまって・・・」

「えーと、そしたら、今私が泊まってる宿屋に越してきて、ルームシェアしませんか?お二人がそういう関係で、どうしても二人で部屋を使いたいという時には食堂ででも時間をつぶしたりしてますから」

「でも、その分部屋代の負担は増えるのでは?」

「多少増えたところで、今日の感じだと十分賄えますって。私には、お金で購えないメリットが生じますしね。宿代の金額にもよりますけど、とりあえず当面、借金無くなるまでの間は、部屋代と食費、私が持ちますよ」

「そんな、至れり尽くせりでは申し訳ないです」

「いえ、私にも打算があって提案してる事ですから気にしないで下さい。それで、お二人はそういう関係なんですか?」

「いえ、違います」

 グラハムさんがきっぱりと断言し、オールジーさんは微妙な表情でうなずいた。そうなんだけど、でも迷い無く断言はして欲しくなかったみたいな。

「お二人が主従の関係にあるのは伝わってきましたし、それ以上については追々お話されたくなったら聞きますよ」

「はい。それで、なぜこの時間から武器屋へ?」

「明日からオーク狩りを始めますが、このままだとグラハムさんが本当に役立たずのままになってしまうので、攻撃手段を少しでも持って頂きたいな、と」

「投げナイフなどを考えた事もありましたが、盾と持ち替えてというのがどうしても難しくて。ましてや、オークに通用する何かというと、何かあるのですか?」

「無いのなら、作ってもらうしかないかなと。それを相談しに行くんですよ」


 そうしてたどり着いたのが、武器屋「青竜の牙」だった。

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