第8話 女王蜂様 いよいよ稼ぎだす

 こうなるともうガッコも授業どころではない騒ぎで、ガッコ中から先生、生徒が校庭にわらわら集まってきている。

 

 何事かと見れば、校庭で「のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックス」の生ライブ。


 「まいまい」「あかあお」のツートップに、脇を固める「なゆたん」。


 こうなるともう止まらないよね。一番、止めなきゃならない校長先生が「なゆたん」なんだから。


 え? 教頭先生? 教頭先生なら生ライブ、最前列のかぶりつきで声援送ってるよ。


 もう、老若男女問わず、生ライブに大興奮。


「むっふっふっ~、頃合いだわね~」

 ほくそ笑む蜂野先生。


 傍で見てると、本気で「悪の女幹部」感バリバリですよ。ドロンジョ様ですか? 貴方は?


「そぉーれっ!」

 蜂野先生が魔法のバトンならぬ針をクルリと振れば……


 かぶりつきで見ていた老若男女はたちまち「のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックス」の残り四十三人に早変わり。


「更にっ」

 蜂野先生は脇で腕を組んで見ていた男子生徒二人に向かって、魔法の針を一振り。


湯千葉ゆちばく~ん。動画アップは君にお・ま・か・せ♡」


 感激の涙を流す湯千葉君。

「蜂野先生。大抜擢にこの『湯千葉出空造ゆちばでくうぞう』感謝感激雨あられであります。必ずや視聴者数銀河一を勝ち取って見せますっ!」


「期待してるわよ~ん。むふふ。これで、広告料ガッポリ」


 うわあ、すっごい悪い笑顔だよ。蜂野先生。


「そして、泣元なきもとく~ん。君は今更言わなくても、やること分かってるもんね~?」


「『泣元・トング・やすし』とお呼び下さい。マネジメントはお任せを。この『のぼり坂くだり坂ま坂46フォーティシックス』のパクリじゃない、『蜂幡三年坂はちまんさんねんざか46フォーティシックス』を銀河一の売れっ子女性アイドルグループにしてご覧にいれましょう」


「むっふっふっ~、これでまたガッポリッ~。もう、ちまちまハチミツ集めて生活なんて、やってられないわ~」


 満面の悪い笑みを浮かべる蜂野先生の前にその姿を現したのは、ゆるさでは定評のあるハチコーにあって、その怖さが際立つ「三女傑」、西桐先生・富士先生・天王先生だっ!


「新任の蜂野先生。これはどういうことですの?」

「貴方のような若い先生が生徒と仲良くなりたくて、イベントを企画することはよくあることです。しかし、これはやり過ぎでは?」

「学校も楽しい方がいい。それはわかります。しかし、学校はあくまで勉学の場。ライブステージではありません」



  

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