第303話 閑話 リナと呼ばれて
〜(間話) リナ視点 〜
私は元、日本人のユリナ。
今はリリアーナ姫の体の中に入ってしまったので、リナと呼ばれてライリーのお城でセレスティアナお嬢様の従者として働いている。
セレスティアナお嬢様は最近エテルニテで移民の為の建物の建設だか再建だかに協力中。
故に、私はその作業をする人達の為に、厨房の料理人の方達とお料理を作っている。
ちなみに竜騎士の方も訓練地の下見に来られているから、本当に大人数が食べると想定して、大鍋料理だ。
今日は前日に牛すじを茹でて冷蔵保存、下準備をしていた牛スジカレー!
スパイスの香りが食欲をそそる。
調味料はワミード産。
味見をしてみたら、ちゃんと美味しい。
お米もいっぱい炊いておくし、ナンのような物も作る。
お好きな方でどうぞ方式だ。
出来上がったら、転移陣を使って鍋を持って移動する。
とはいえ、重いし、転移陣を使う時は騎士様が付き添ってくれる。
「美味しそうなカレーの香りがしますね」
「そうです! カレーです。
今しがた完成しましたので、エテルニテの方に運びますね」
「私が運びます」
「すみません、レザーク卿、重いですよ」
「鍛えてますのでお気になさらず」
このお城、何故か、かっこいい人が多い。
イケメン多数!
イケメンと言えば、休憩時間などは、暇つぶしや気晴らしにどうぞと、お嬢様から乙女ゲームの出来る板状のクリスタルを一つ貰った。
スマホみたいに使える! 凄い。
作中のイケメンと恋が出来るゲームもとても面白いから、仕事終わりに少しずつ進めるのが最近の楽しみの一つ。
血眼になって地球からの転生者か自分のような魂だけでも転移した人がいないか探した甲斐もあった。
魔物の襲撃で王都は陥落したため、リリアーナの住んでいた城内もあちこちしっちゃかめっちゃかになってたけど、水場で井戸のポンプとかを見つけて、もしやと、思った。
次にもし私と同じ日本人がいるのならば、食にこだわりがあるだろうと、厨房の瓦礫を避けながら、挽き肉製造機やハンドミキサーのような物を見つけた。
それもわりと近年になって発売されたものだと言う。
全部お隣の国、グランジェルドのライリー辺境伯領から発売された物だと言う事が調べて分かった。
ここに行けば会えると確信した。
数年前までライリーは瘴気の影響で貧しくなっていた領地だと言う。
しかし、商品を作るのにも資金がいる。
故に、これを作れる人間がライリーにいるとするなら、平民よりはお金があるだろう領主一族と私は考えた。
瘴気を浄化したのは美しいライリーの令嬢だと言う事も聞いたし、令嬢が誕生して数年後に前世で見たのと似た便利商品が生まれて来ていた。
これはライリーの令嬢が考えた物でほぼ確定だろうと思った。
予想は的中して、セレスティアナお嬢様のお側に置いて貰えた。
優しい人で良かった!
何より日本を知ってる人が側にいて心強い!
私がリリアーナ姫の体に残る記憶から、しばらく就寝中に悪夢を見ては飛び起きる生活をしていたら、寝不足の目をした私を見たお嬢様は、可愛いらしい猫ちゃんのアスランを貸してくださった。
ふわふわの長毛種の可愛い猫は、なんと霊獣で、サイズを自由自在に変えられる。
大きなセントバーナード並みのサイズになってくれた猫ちゃんは私と一緒に寝てくれた。
あまり小さいと寝返りで潰すのが怖いから、大きくなってくれて良かった。
アスランと寝ている時は怖い夢も見なくて済んだ。
「皆様! お食事ですよ──っ!」
「「はーい!!」」
私は現場の人達に声をかけたら、元気の良いお返事が返って来た。
「お、今日はレザーク卿がリナさんの付き添いか」
「はい、エナンド卿。皆様もお疲れ様です、お食事をどうぞ!」
レザーク卿のお知り合いの騎士様が声をかけて来た。
「リナ嬢はお嬢様とギルバート様にカレーを届けてくれ。
騎士達には私が」
「はい」
嬢は付けなくてもいいのだけど、今は忙しいので、ま、いいかと、流しておく。
そして竜騎士達、次に平民の移民達に食事が配膳される。
移民の分は移民の女性陣が配ってくれる。
「お嬢様、ギルバート様、お待たせしました」
私は設置されたテーブルセットの上に食事を並べた。
「美味しそうだわ、ありがとうリナ」
「カレーの香りはいつも食欲をそそるな」
ギルバート様はセレスティアナ様のお隣の席だ。
「リナも一緒に食べましょう」
「従者ですが、良いのですか?」
「城外だし、気にしないで良いわ」
私はお言葉に甘えて同席させていただいた。
おかわり用に持って来たカレーをいただけるそうだ。
「この地は暖かいですね、ライリーは真冬の気候ですのに」
私はセレスティアナ様の反対側の席に座って話しかけた。
天気とか気候の話は無難なはず。
「そうなの、こちらは雪の降る中、無理矢理に建設などせずに済むから助かるわ」
「そちらの部屋は、毛布とかは足りているか?」
ギルバート様が気を使って聞いてくださった。
流石セレスティアナ様の婚約者! お優しい!
「え? あ、私の部屋ですか、大丈夫です、暖かい毛布も、モフモフもいます」
「もふもふ?」
「セレスティアナ様が夜寝る時にアスランを貸してくださって」
「ああ、なるほどな」
するとギルバート様はなんだかとても優しげに微笑まれた。
この方も猫好きなのか、それか猫ちゃんに関する何かいい思い出でもあるのかも?
「美味しい。やはりリナはカフェで働いていただけあって、料理が上手ね」
「え!? ありがとうございます! でも材料が色々揃っていたおかげですよ」
超、美少女のご主人様に褒められた──っ!!
頬が自然と緩んでしまう。
──怖い事もあったけど……今は優しい人達に囲まれて、なんとか生きて行けそう。
神様、セレスティアナ様と会わせて下さってありがとうございました!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます