第301話 ダンジョン
大事なミッションが有るわ。
それはダンジョン行きを認めて貰う事!
「神様がせっかく宝の地図を下さったのですから、行かないのはむしろ失礼でしょう?」
ギルバートは痛い所を突かれたという顔をした。
ごめんね。
「く……せ、先発隊に調査させて、危険な魔物が出ないようなら……」
「私より先に別の部隊が入るんですか……」
ちょっと悔しい。
「そこは安全の為に仕方ないだろう!?」
「分かりました、心配性ですね。
勇者並の実力のギルバートがついててくれたら大丈夫だと思うのですけどね。
何もミスリルやオリハルコンの見つかるS級ダンジョンに行くわけじゃないので」
「未知のダンジョンは十分に警戒して行かないといけない。
ましてや嫁入り前の大事な体だ。……両親への説得は自分でするのだぞ?」
「……はい、分かりました!」
そんな訳で両親に渋い顔されながらも、神様のくれた地図だし!
調査隊が先行してくれるから! 問題無かったらいいでしょう!?
とかなんとか言って説得して許可をもぎ取った。
そして私が行く時はSランク冒険者アシェルさんも同行してくれる事に。
やったね。
*
そうそう、御宝クジは夜になって一位の大当たりの人が出て来たらしい。
子沢山の奥様が当選して助かると言っていたらしい。
おめでとう!!
* *
数日後。
「先発の調査隊の報告によれば、スライムやあまり大きくないトカゲ系の、低級の魔物しか居なかった
との事だ。仕方がないので行くのを許可する」
許可がでた!
「ありがとうございます!!」
* *
ダンジョン前に到着!!
今回はお父様のグリフォンのシュバルツとお母様の飛び兎のクロエとウィルの翼猫のブルーも借りて飛んで来た。
アシェルさんはシュバルツを借りた。
ラナンの空飛ぶ船には私の護衛騎士のエナンドが二人乗りで、リーゼは私とアスランに二人乗り。
他もほとんどがワイバーンなどに二人乗りで兎のクロエだけはセスさんが一人で乗ってる。
パーティーは竜騎士と新米竜騎士になった護衛騎士達とエルフ!
リナは戦闘員じゃないから、城に置いて来た。
「ここがガラスの有るダンジョンね、はてさて……」
我々は洞窟型ダンジョンの奥へと進んだ。
岩の隙間からビードロみたいな形のガラスが……生えてる。
『色んな色のガラスが有るよ、取る時は破片に気をつけて布で包んで根本を硬い物で叩くといい。手袋はちゃんとして怪我に気をつけて』
「セレスティアナは怪我をしないように下がっていろ。
後方から欲しい色のガラスを言えば良い。
カーティス卿、念の為、風スキルで結界を張ってセレスティアナを守ってくれ」
「はい、風の盾でお嬢様をお守りします」
カーティス卿は私の護衛騎士で風スキル持ちだ。
ギルバートは私の護衛騎士全員分のスキルを把握しているのかな?
「で、何色のガラスが欲しいのだ?」
「とりあえず無色透明多めで全種類!」
「了解!」
ドシュ!!
ザシュ!!
「あ、その辺にいたトカゲを倒したよ」
「アシェルさん、ありがとう」
『そこにいるスライム越しにガラスを殴っても良いよ、ガラスの飛び散り防止になるから』
ガッ!!
騎士がリナルドに言われるまま、スライム越しに剣の鞘ごとガラスに貼り付いてるスライムを殴った。
スライムは核を壊さないと死なない。
スライムは壊れた箇所のガラスの破片を吸収し、さっと、移動した。
破片だけ食べたの?
残った部分の落ちる寸前のガラスの先の方を、違う騎士がキャッチした。
「なるほど、スライム便利ですね」
なんかスライムがサンドバッグみたいだけど痛覚は無いのかな?
殴られた後は身の危険を感じたのか、破片だけ食べて移動してるけど。
バキャン!!
騎士がスライムを掴んでめぼしいガラスに押し当てて殴ってる。
わ、ワイルド……。
「ぬ、布袋もあります〜〜」
私は大きい麻袋をインベントリから沢山出して騎士達に配った。
スライム越しに殴る人と布袋越しに殴る人、それぞれだった。
性格の違いだろうね。
「あ! 紫イモリだ!」
「取れ! 薬の素材だ!」
「おう!」
「イモリ……あれ、魔女とかが大鍋にくべる素材みたい……」
我々は特にたいした危険も無く、ガラスの塊を採取出来た。
ガラスの生えるなんとも不思議なダンジョンだった。
お次は重曹ダンジョン!!
「お嬢様、今から洞窟内のコウモリを出すので、大声を上げます」
「あ、はい、どうぞ」
私はギルバートの後ろにさっと隠れた。
「おおおおおおおっ!!」
騎士の大声の後に、黒いコウモリの群れがわーっと出て来た!
キモイ!
「きゃ──っ!! コウモリめっちゃ多い!」
私はギルバートの背に隠れ、彼のマントを掴みつつ、思わず声を上げた。
「そんなんでよくダンジョンに行きたいとか言ったな、其方」
「うう、ちょっと驚いただけですし!」
私は思わず強がった。
ここの洞窟もやはり、コウモリの他は小さいトカゲ系やスライムしか居なかったので、危険は無かった。
「洞窟の奥、抜けた先に……畑のような開けた場所があるわね」
『地面にヤシの実みたいなのがあるだろう? その実を割ると重曹パウダーが出て来る』
地面にはスイカの葉っぱみたいな葉が茂り、スイカの代わりに何故かヤシの実に似た実が実っている。
「え!? 岩とかから重曹を取る訳じゃないの?」
『岩とも石とも言ってないよ』
「わあ、便利! 大変便利! 持ち運びも!」
「ふむ、殻が少し硬いくらいだね」
アシェルさんが殻にナイフを入れて割って見せてくれた。
「わあ、本当に白いパウダーが入ってる!」
「リナルド、これって口に入れて大丈夫な重曹? お掃除用にしか使えないとかじゃないよね?」
『大丈夫だよ、胃薬にもなるくらいだし。コップにジュースでも入れて、そのパウダー混ぜ入れてみなよ』
言われたように、インベントリから出し、テーブルとコップを用意した。
「美味しそう、シュワシュワしてる」
「まず、一応私が毒……いえ、味見をします」
エイデンさんがリナルドの大丈夫発言にちょい配慮したのか、毒見を味見と言い換えて飲んだ。
「炭酸の美味しい葡萄ジュースです」
やったー!
「私も飲みます!」
皆で美味しい葡萄の炭酸ジュースを飲んだ。
*
ダンジョンツアーの後は、バナナの木の場所とバニラの木の場所で歌を歌った。
スライムやトカゲ退治の戦闘に加わっていないので、魔力は余ってる。
すると本当に生えた! バナナの木と、バニラの木が!
まだ実は実っていないけど!!
まあ、それはいずれ!!
「キュイイイイイイイイ────ッ!!」
メイジーが急に一際高い声で鳴いた。
ん!?
遠くから、海を越えてワイバーンの群れが飛んで来た。
この、エテルニテの地に。
「まさか、ワイバーン達がもう移住に!?」
ギルバートが驚いた顔をして言った。
私もびっくり。
どうやってこの地を知ったのだろうか?
不思議ね。
「まだ冬ですが、来てしまいましたねえ……試しに、お花をインベントリから出してみましょ」
私はにやりと笑って言った。
「ぬ……まさか」
「はい! まだ自分の騎竜がいないギルバート様の騎士の方!
綺麗なお花ですよ!
お気に入りのワイバーンがいたら自分の騎竜になってくれるように頼んでみましょう!」
竜と竜騎士のお見合いイベントが突如発生!
「「ありがとうございます!」」
ギルバートの騎士達は素直だった。
「よーし、どの子にしようかな」
「君に決めた! ……どうか俺の竜になってくれ!」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願い申し上げる」
「良ければ、私の竜になってくれないか?」
「この花を受け取ってくれ……食べた!!」
秘密の花園の花の効果は高く、ギルバートの精鋭の騎士は皆、無事に竜を得た。
「ん、大きくて白いワイバーンがまた来た」
そのメイジーより大きく白いワイバーンは、アシェルさんの側に優雅に降りたった。
「もしかして、君はその背に私を乗せてくれる?」
アシェルさんもインベントリからお花を出した。
竜は頷き、お花を食べた。
承諾した!
アシェルさんは竜の背に乗り、周囲を飛び回り、しばらくして降りて来た。
「なんかごめん、竜騎士の試験も受けてないのに、乗れてしまった」
「エ、エルフは人間の法に縛られてないから、良いのでは?」
と、ギルバートも、ややひきつり気味の笑顔で言った。
後はカツオ……お魚か。
これは漁師に頼めばいいかな?
もうこの近くの海域を荒らしていたシーサーペントは倒したし!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます