第21話幼馴染の女の子花蓮と日吉はざまぁされる

クラスの奴らは阿鼻叫喚と化してたが、視線を移すと、座り込んで涙を流すかつての彼女……幼馴染の花蓮の姿が目に入った。


「い、樹、わ、私、本当はあなたが無実だってわかっていたの! でも、あんな空気だったから!」


「陽葵ちゃんは信じてくれた。お前は10年も拘ってきた幼馴染が無実だと知っていて、突き放したのか?」


「ち、違う!! だって、あんな状態じゃ、仕方がないじゃない!!」


「何言ってんだ? それにお前、俺を振って、綱島先輩に……綱島先輩?」


俺は一瞬、幼馴染が俺を振って、新しく付き合い始めた彼氏の名前を思い出した。


「綱島ばい。先輩!! あん綱島!!」


俺はなるほどと得心が言った。


今更俺に心を戻すなんて花蓮らしくない。俺の幼馴染は性格が悪い上、かなり馬鹿だ。


綱島という奴に騙されて、今更俺に心が戻ったという訳か……。


こいつらしい、昔から小狡い女だった。


そこも含めて好きだったけど、よく考えたら、今となっては負担としか思えない。


それに、俺はもう陽葵ちゃんに惹かれている。


花蓮とヨリを戻す気なんて毛頭ない。絶対に、ね。


「花蓮、どんな理由がろうと、お前は俺を振ったんだろ? 今更ヨリを戻せるなんて思わないでくれ。それに、みんなに俺が振られて泣いているところを撮影して、学校中の奴にばら撒いたんだろ? そんな目に会って、今更許せるか?」


「そ、そんな、あれは綱島先輩が……」


「なら、綱島先輩に添い遂げろよ、好きなんだろ? 俺よりも?」


「ち、違う、ただ、私、綱島先輩に言い寄られていい気になっちゃって!!」


理由にならんだろう……。


そんなことを言っている間に日吉の両親が来た。そう言えば川崎の姿が見えない。


既に逮捕されてるのか?……でもどうやって莉子ちゃんは学校を黙らせる気だろう?


「凛ッ!? あなたなんてことを!」


「凛? 嘘だよな? お前が補導されるようなことしたって?」


「ち、違ッ!」


「どこが違うと? 昨日あんたが自分の口から洗いざらい全部吐いたやなかと?」


「そ、そんな、佑人が大丈夫って言うから……」


日吉は泣き崩れて行った。ご両親はオロオロして事態が呑み込めない。


「陽葵様に感謝するんですね。日吉先輩」


「お、お前は三浦莉子!」


「そんなに睨まないでくれます。あたし達はあなたも救ってことにもなるのだから」


いつの間にか莉子ちゃんが陽葵ちゃんのそばに来ていた。


「綱島はあなたの他にも3人程関係を結んでいた。そのうち一人は捨てられて川崎のおもちゃになっていましたよ。あなたもそのうち飽きられて川崎の慰みものになっていたかもです」


「嘘よぉー! 嘘、そんな、佑人が?」


「詳しい話は警察がしてくれると思います。あなたは加害者半分、被害者半分だから綱島や川崎よりは処分は軽いと思います」


処分が軽い……と言っても果たしてまともな人生を歩めるレベルとは思えないが……。


阿鼻叫喚のクラスメイトや泣き崩れる幼馴染の花蓮や日吉をほおっておいて、俺達は莉子ちゃんに聞いた。昨日「全て任せて下さい」とは言われたけど何があったのかさっぱりわからない。


「莉子ちゃん、本当にこれで大丈夫なのか? ちびはるちゃん先生は大丈夫なの?」


「安心してください。校長にももうじき天罰が下ります。あの男は綱島に……女子生徒をあてがわれて……綱島は元彼女を脅して校長の相手をさせて、その上証拠の写真を撮って校長を脅していたんです。もう、教育委員会に陽葵様のお父様から連絡が入っています」


川崎のおもちゃになっていたという女の子……無性に腹が立つ、どこまでも卑怯な奴だ。


「綱島や川崎はどうなるんだ? これだけのことやったら?」


「綱島と川崎の少年院送りは間違いないです。それに一生を棒にふったと思います。これだけのことをやったら……それより……陽葵さまぁ~! ご褒美のギュッをください! ガシッ!」


「い、いや、莉子ちゃん怖いから! そげん強う抱きつきなしゃんな!!」


「ああ、この子犬のような感触と返しぃ!」


いや、まとわりつく子犬的存在はどちらかと言うと莉子ちゃんの方だよな?

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