正直、このお話が書店にならんでいたら間違いなく私は購入していたレベルのお話になります。「素晴らしい」の一言以外は浮かんでこない「それくらいの」レベルの物語です。
主人公の高校生がある「とある少女」を助ける事からこの物語は動き始めます。主人公は少女を通して「世界」をどんどん広げていきますが、でもそこは「男と女」、そういう「恋心」が芽生えてもおかしくないわけで、、、とここら辺までは「よくある話」なのです。
しかし、ヒロインはとても変わった「願望」を持っていまして、それがこの物語の「キーセンテンス」になってきます。物語が進むと彼女は失踪してしまうのですが、ちゃんと主人公に色々なメッセージを残していきます。そして、そのメッセージに込められた真意とは?
と、ミステリー的な要素もあって、その伏線の回収も完璧に近いです。この読み終わった後の読了感、皆様と一緒に共有したい。心からそう思える作品になります。是非!読んでみてください。
昨日に似た日が、今日も明日も始まってしまう。変わり映えのしない日々に、響はある少女と出会う。それは、駅のホームで電車を待っている時に、起こった出来事だった。
謎の多い少女——。冬村海月と大橋響のひと夏の恋物語と、それを支える仲間達(静香と拓馬)の友情の物語。
プロローグにて、驚きの展開が始まって行くが、実は過去を振り返るような作風で物語は動いていく——。
「私はくらげになりたい……」と言った海月。そして彼女の本心は? 彼女は自分の望む、くらげになれたのだろうか?……。
誰にも話せない海月の置かれた立場。読む事に苦しさが伝わってきます。
抗える事の出来ない苦しみと葛藤。絶望の中で見たものは一握りの希望だった。
揺れる淡い恋心と現実の厳しさ。喪失感から前を向く救いの手は来るのだろうか。
切なくも儚く、それでいて透明感のある美しく洗礼された文章は、読者を物語に一気に引き込んでいきます。背景描写も心理描写も素晴らしく、まるで映像を観ているかのようです。
どうしても救われない運命に抗いながらも、救いを求める彼等の思いは、読む者を捉えて離さないでしょう。
泣きたい夜に、読みたいこの物語——。読めば必ず、心が震えます。
一人の少女が電車に飛び込む。その腕を、掴む。少女は涙を浮かべてお礼を告げた。
彼女が知る由もない、ある言葉を口にして。
この、駅のホームで始まる少年の日常と少女の非日常の邂逅――を目にした時、私は思わずパタリとページを閉じました。「じっくりと読もう」
例えば店先で覗いたページをすぐさま閉じて、家に持ち帰るように。
そうして彼らと同じように、かけがえのない一夏の時間を味わうようにゆっくりと読み進めました。
プロローグから予感する儚さ。挿し込まれる日記に秘められた心中。
少年・響と二人の学友と、少女・海月。この四人が紡いだ一夏は、幸せで、だからこそ切ない、人生の瞬きでした。――決して忘れることのできない。
海月はその名と同じように「くらげになりたい」と口にします。それが一体何を意味するのか……冒頭に口にするある言葉と共に不可思議で、謎めいたその意味は、この物語のテーマとなって解き明かされていきます。
情景・心情の描写は上手だとか丁寧だとか技巧的なそれ以上に、とても美しい。情景と心情を一つに表す絵画を見るような、一つに言い表せない感情が浮かびます。
この少年少女達の一夏を、プロローグのその先を、ぜひ見届けて頂きたいです。
冒頭を読めば、これから語られる物語が切ないものであることを想像できるでしょう。これは、くらげになりたいと願う少女と、彼女と友達になった少年少女たちの、切なくも瑞々しさが感じられる物語です。
情景描写が丁寧で、自身がその場で彼らと共にいるような感覚を味わえました。自然と光景が目に浮かぶのです。その世界が立てた音ひとつで、自分の中にある懐かしい頃に引き戻される感覚は、とても面白いものでした。
響が駅のホームで出逢う少女、海月。そんな彼女と友情を育んでいく響たち。
四人組の彼らが体験したかけがえのない時間を共有できたことは、とても感慨深いものでした。
彼らは純粋で、柔軟性があって、透明なキラキラしたものを持っている気がして、眩しい。特に恋をしている子って、切なくて可愛くて堪りませんね。
少女が選んだ選択、彼女を思う少年たちが抱く想い。
ひと夏の中で最大限に輝いた彼らの軌跡は、きっと私たちが前を向く道標の一つとなるでしょう。
主人公の男子高校生は、ある日の駅で、自殺しようとしていた美少女を助ける。彼女は、クラゲになりたいという一風変わった願望の持ち主だった。しかし、主人公を通して少女は二人のかけがいのない友人を得る。そして、やがて彼女には主人公に対する淡い恋心が芽生える。彼女は、好きな人を作るつもりはなかったのに、主人公に恋をしたのだ。
四人は高齢女性の犬に縁あって、女性の家に入り浸っていた。しかし彼女と話した女性は、主人公にその犬を譲りたいと言い残して、亡くなってしまう。それは彼女がひた隠しにしてきた現実離れした能力と関係があった。
そして、彼女は突如失踪した。日付を間違えた手紙を残して。彼女を探す主人公たちは、時折送られてくる詩的なメッセージから彼女の行先を探す。
そんな主人公たちを待ち受けていたのは——。
クラゲはほとんどが水分で出来ているため、死ぬと消えてしまうという。そんなクラゲに憧れた彼女の決断と、想いに、切なさが込み上げてくる一作です。
是非、御一読下さい。
くらげのように、ふわふわとした読後感だと思いました。
絶望や、やるせなさもある。
それなのに、高校生4人の日々はきらきらと輝いて眩しい。それだけでなく、4人が常に美しい風景、色彩の中にいるのがとても印象的でした。それぐらい情景描写がとても素敵なのです。
基本的には響の視点で描かれていくのですが、途中で誰かの日記が挟み込まれ物語を読む手が止まらなくなります。読者を引き込む構成も素晴らしいです。
この取り止めのない感情、何かに似ているな……と考えていたらそれが「人生」なのだと気がついたのは随分後になってからでした。
この物語には人生の喜びも悲しみもドキドキも……全てが詰まっている。そんな気がします。
儚げな少女、海月の「私、くらげになりたいから」とはどういう意味なのか。そして彼女の抱える秘密とは?
是非あなたの目で淡く美しい景色と共に4人の青春、いや、人生を見届けてください。
将来の夢というものを見つけられず、日々を憂鬱に過ごしていた高校生の響は、駅のホームで電車に飛び込もうとしていた少女を思わず助けた。
初対面のはずの彼女はなぜか響を見て涙をこぼし、不思議な言葉を呟いて、微笑んだのだった――。
出会いのワンシーンがとても丁寧に美しく描かれていて、運命的な始まりを予感させます。物語の軸になるのは主人公の響と、重い秘密を抱えて生きる海月、響の友人である拓馬と静香。高校生らしくきらきら輝く四人の夏休みに、美しくも切ない叙情をのせて、物語は描かれてゆきます。
淡い水彩画、あるいはパステル調に描かれたアニメーション映画、そんな印象を受ける繊細な描写が随所に散りばめられており、スルスルと読み進めてしまう魅力ある作品です。
物語を通して描かれる『救い』のありかたと、それを象徴づける『くらげ』。
彼女らの選んだ道は賛否両論あるかもしれませんが、若い感性の願う救いとして理解できるようにも思うのです。ラストの手記によって、また少年少女が経た日々によって、救いのかたちが人それぞれであると痛感させられるからかもしれません。
思いきって手を差し伸べることにより、色づく未来もあるのかもしれないと、私はそんなことを思いました。
完結作品ですので、ぜひご一読ください。
眩しくなるほど甘酸っぱい青春小説です。
海月という重い荷を背負う女の子に、彼女を取り巻く魅力的な登場人物たちと、その眩しくなるほどの人間関係。
表現される心理描写は独特かつ繊細で、瞬く間に物語の中へと引き込まれてしまいました。
そして場面ごとに描かれる風景描写はどれも丁寧で、至る所で青春を想起させられます。
おばあちゃんの家や岬など、脳に刻まれるほど印象的です(笑)
くらげの生態説明から始まるプロローグ、物語は、散らかることなく綺麗にまとめられ、どうにも考えさせられる結末へと至り……。
万人が納得できる終わりではないと思うが、だからこそいつまでも余韻が残り続けます。
ぜひともおすすめしたい、素敵な小説です。