主人公の男子高校生は、ある日の駅で、自殺しようとしていた美少女を助ける。彼女は、クラゲになりたいという一風変わった願望の持ち主だった。しかし、主人公を通して少女は二人のかけがいのない友人を得る。そして、やがて彼女には主人公に対する淡い恋心が芽生える。彼女は、好きな人を作るつもりはなかったのに、主人公に恋をしたのだ。
四人は高齢女性の犬に縁あって、女性の家に入り浸っていた。しかし彼女と話した女性は、主人公にその犬を譲りたいと言い残して、亡くなってしまう。それは彼女がひた隠しにしてきた現実離れした能力と関係があった。
そして、彼女は突如失踪した。日付を間違えた手紙を残して。彼女を探す主人公たちは、時折送られてくる詩的なメッセージから彼女の行先を探す。
そんな主人公たちを待ち受けていたのは——。
クラゲはほとんどが水分で出来ているため、死ぬと消えてしまうという。そんなクラゲに憧れた彼女の決断と、想いに、切なさが込み上げてくる一作です。
是非、御一読下さい。
正直、このお話が書店にならんでいたら間違いなく私は購入していたレベルのお話になります。「素晴らしい」の一言以外は浮かんでこない「それくらいの」レベルの物語です。
主人公の高校生がある「とある少女」を助ける事からこの物語は動き始めます。主人公は少女を通して「世界」をどんどん広げていきますが、でもそこは「男と女」、そういう「恋心」が芽生えてもおかしくないわけで、、、とここら辺までは「よくある話」なのです。
しかし、ヒロインはとても変わった「願望」を持っていまして、それがこの物語の「キーセンテンス」になってきます。物語が進むと彼女は失踪してしまうのですが、ちゃんと主人公に色々なメッセージを残していきます。そして、そのメッセージに込められた真意とは?
と、ミステリー的な要素もあって、その伏線の回収も完璧に近いです。この読み終わった後の読了感、皆様と一緒に共有したい。心からそう思える作品になります。是非!読んでみてください。
昨日に似た日が、今日も明日も始まってしまう。変わり映えのしない日々に、響はある少女と出会う。それは、駅のホームで電車を待っている時に、起こった出来事だった。
謎の多い少女——。冬村海月と大橋響のひと夏の恋物語と、それを支える仲間達(静香と拓馬)の友情の物語。
プロローグにて、驚きの展開が始まって行くが、実は過去を振り返るような作風で物語は動いていく——。
「私はくらげになりたい……」と言った海月。そして彼女の本心は? 彼女は自分の望む、くらげになれたのだろうか?……。
誰にも話せない海月の置かれた立場。読む事に苦しさが伝わってきます。
抗える事の出来ない苦しみと葛藤。絶望の中で見たものは一握りの希望だった。
揺れる淡い恋心と現実の厳しさ。喪失感から前を向く救いの手は来るのだろうか。
切なくも儚く、それでいて透明感のある美しく洗礼された文章は、読者を物語に一気に引き込んでいきます。背景描写も心理描写も素晴らしく、まるで映像を観ているかのようです。
どうしても救われない運命に抗いながらも、救いを求める彼等の思いは、読む者を捉えて離さないでしょう。
泣きたい夜に、読みたいこの物語——。読めば必ず、心が震えます。
高校生の響はある日、線路に飛び込もうとする一人の少女を救います。
「私はくらげになりたいから」
そう語る少女は何か秘密を抱えている様子です。少女と響、友人たちのひと夏の物語は、どのような結末を迎えるのでしょうか。
月並みな表現ですが、本当に美しい物語です。
色や形が鮮明に浮かぶような日常の風景や、主人公響や友人たちの心の揺れ動きが、上質で美しい筆致で描かれます。
この作品を読んでいて、映画のワンシーンのような映像が脳裏に浮かんだのは、私だけではないはずです!
また、数々の伏線が自然な流れで回収されて、徐々に真実が明らかになる展開に、ページを捲る手が止まらなくなりました。
少女の行動の理由が一つ一つ判明するにつれ、胸を打たれ、彼女のことがどんどん好きになっていきます。
物語の最後に彼らが選び取る結末には、涙が止まりません。
ゆっくり時間がある際に、どっぷり浸りつつ一気読みしたくなる作品です。
老若男女問わず、多くの方々におすすめです!
眩しくなるほど甘酸っぱい青春小説です。
海月という重い荷を背負う女の子に、彼女を取り巻く魅力的な登場人物たちと、その眩しくなるほどの人間関係。
表現される心理描写は独特かつ繊細で、瞬く間に物語の中へと引き込まれてしまいました。
そして場面ごとに描かれる風景描写はどれも丁寧で、至る所で青春を想起させられます。
おばあちゃんの家や岬など、脳に刻まれるほど印象的です(笑)
くらげの生態説明から始まるプロローグ、物語は、散らかることなく綺麗にまとめられ、どうにも考えさせられる結末へと至り……。
万人が納得できる終わりではないと思うが、だからこそいつまでも余韻が残り続けます。
ぜひともおすすめしたい、素敵な小説です。
将来の夢というものを見つけられず、日々を憂鬱に過ごしていた高校生の響は、駅のホームで電車に飛び込もうとしていた少女を思わず助けた。
初対面のはずの彼女はなぜか響を見て涙をこぼし、不思議な言葉を呟いて、微笑んだのだった――。
出会いのワンシーンがとても丁寧に美しく描かれていて、運命的な始まりを予感させます。物語の軸になるのは主人公の響と、重い秘密を抱えて生きる海月、響の友人である拓馬と静香。高校生らしくきらきら輝く四人の夏休みに、美しくも切ない叙情をのせて、物語は描かれてゆきます。
淡い水彩画、あるいはパステル調に描かれたアニメーション映画、そんな印象を受ける繊細な描写が随所に散りばめられており、スルスルと読み進めてしまう魅力ある作品です。
物語を通して描かれる『救い』のありかたと、それを象徴づける『くらげ』。
彼女らの選んだ道は賛否両論あるかもしれませんが、若い感性の願う救いとして理解できるようにも思うのです。ラストの手記によって、また少年少女が経た日々によって、救いのかたちが人それぞれであると痛感させられるからかもしれません。
思いきって手を差し伸べることにより、色づく未来もあるのかもしれないと、私はそんなことを思いました。
完結作品ですので、ぜひご一読ください。
目標もなく、ただ日々を過ごしている響とミステリアスな少女との出会い。
4人で育んでいく友情と恋心。悲しい出来事。少女の不思議な力。
たった、ひと夏の出来事なのです。
しかし、なんて濃くて大切な日々だったのだろうと思います。
物語は、読みやすくも美しい文章で綴られています。
4人が過ごすおばあさんの家や海や空の光景が鮮やかに脳内へと広がり、物語を彩っていきます。
読み進めていくうちに、様々な感情と出会うことになります。彼等と一緒に悩んでしまうこともあります。
それでも最後には、もう一度最初から読み返したくなってしまう。
落ち着いた空間で、ゆっくりと味わってほしい。そんな物語です。