ポエムな日記(Aパート)
※はじめに
この日記を書いた者は男である。
この日記は男が起こした事件の重要資料である。
この日記の存在が新たな事件を引き起こすことになる。
【3月4日】
ぼくはキセキを起こした。
誰にも起こすことができないキセキを。
キセキは気分屋で、思い通りにはならない。
ときにこんな奴に何が出来るか、と苛立つ。
だからこそ、キセキには価値があるのだ。
ぼくはキセキを抱きしめる。
つよく、つよく抱きしめる。
キセキはぼくの腕の中。
キセキはぼくを守ってくれる。
いつも、いつまでも。
【4月25日】
シアワセはとてもキラキラしている。
ぼくはこんなに美しいものをほかに知らない。
みんなもシアワセを狙っている気がした。
誰かにシアワセが取られたら大変だ。
シアワセがどうしても欲しい。
だから、ぼくはシアワセも抱きしめた。
つよく、つよく抱きしめた。
シアワセはぼくの腕の中。
シアワセはぼくを包んでくれる。
いつも、いつまでも。
【6月4日】
ショシンを忘れてはならない。
初々しくも恐れを知らない勇敢さ。
ぼくはショシンを大切にしている。
キセキやシアワセと同じように。
ショシンこそがぼくを救う鍵かもしれない。
ぼくはショシンも力いっぱい抱きしめた。
つよく、つよく抱きしめた。
ショシンはぼくの腕の中。
ショシンはぼくの心の支え。
いつも、いつまでも。
【7月4日】
ユメだ。
やっぱりユメだ。
ぼくが生きていくために必要なのはユメ。
ほかの何よりも大事にしなくちゃならない。
ユメを大切に。ユメのために生きていく。
ぼくはユメを両腕でぎゅっと抱きしめた。
つよく、つよく抱きしめた。
ユメはぼくの腕の中。
ユメはぼくと共にある。
いつも、いつまでも。
【7月24日】
ぼくはトキメキに憧れていた。
トキメキは人生を豊かにしてくれる。
ぼくの心はもう囚われている。
トキメキがぼくの心を掴んで離さない。
ぼくもトキメキを離さない。
ぼくはトキメキを全身で抱きしめた。
つよく、つよく抱きしめた。
トキメキはぼくの腕の中。
トキメキはぼくと共にある。
いつも、いつまでも。
【8月3日】
だめだ。もうだめだ。
ぼくはテンシに助けを求めた。
テンシはぼくをなぐさめてくれる。
もっと早くテンシと出会えていれば。
ぼくはもっとマシな人生を歩めていたのかも。
ぼくはテンシを力の限り抱きしめた。
つよく、つよく抱きしめた。
テンシはぼくの腕の中。
テンシはぼくを導いてくれるハズだった。
いつも、いつまでも。
【8月5日】
ぼくは大好きなケーキを食べた。
ぼくにはもう時間がない。
ずっと大切に取っておいた、大事な大事なケーキの残りだ。
ケーキもぼくに食べられて嬉しそうだ。
いつからだろう。
キセキが起きなくなったのは。
いつからだろう。
シアワセを掴めなくなったのは。
いつからだろう。
ショシンを忘れてしまったのは。
いつからだろう。
ユメを持てなくなったのは。
いつからだろう。
トキメキを失ってしまったのは。
いつからだろう。
テンシが導いてくれなくなったのは。
いつだっただろう。
ケーキを切り分けて冷蔵庫に入れたのは。
ぼくにはもう時間がない。
【Aパート 了】
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